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Ⅱ.新生活・自立と成長と初恋
105. みんなの詩桜里
しおりを挟む「大神官が君を放り出したのは、君に価値を見出せなかったからだ」
間違いないね。ドルトスさんも頷き、リリティスさんに抱き寄せられた私の頭を叩くように力強く撫でる。
「また子ども扱い……」
「秋までは、大人じゃないだろ」
にっこり笑って、私の髪がくしゃくしゃになるほど掻き回し撫でてくれた。お父さんに可愛がられたらこんな感じだったのかしら。
「仮に、君の精霊の加護に気がついていたとする。手を尽くして呼び寄せた『聖女』が理由はともかく君を嫌ったとして、癇癪起こそうが聖女の役目をボイコットしようが、精霊の愛し子を手放すなどあり得ない」
「精霊の、愛し子って?」
「君のように、精霊に愛されて、共に過ごし、無償で手を貸してもらえる、特別な存在を言う」
「カインハウザー様も?」
「……どうかな。確かに、一般の人に比べて異常に好かれるが、君程ではないがね。魔力も低いし」
肩をすくめるカインハウザー様。でも、私の精霊の量を誤魔化すために側に置くほど、カインハウザー様の側にもいつも精霊がたくさん居る。
きっと、カインハウザー様も、そうだと思う。
「わたしのは、親譲りのただの体質だよ」
それを愛し子って言うんじゃないの? 今の説明だと……
そんな私の考えは、顔に出ていたのだろう、ドルトスさんもみんなも、それとなく頷く。
「話を戻そうか。聖女に機嫌よく仕事をしてもらうためには、君を放逐しなくてはならない。だが、肝心の聖女よりも精霊に好かれている君を手放すなどあり得ない。
言っただろう? 精霊に好かれる体質の者が生まれたら、家族と言わず一族、集落すべてで隠匿すると。発覚すれば、ほぼ間違いなく神殿か国の学舎に連れ去られ、精霊術士にされて、国か大貴族かに囲われて自由なく生きると」
そう言えば、出会った頃に、そんな事、精霊に好かれる人は隠されるって聞いたような。
だから、カインハウザー様の寝室で寝起きして、いつも傍にいたんだっけ。
「だから、断言できる。君の可能性に気づいていれば、聖女に悟られることなく君を別の場所で囲い、精霊と対話できる術者として育てられ、自由は奪われる。
あれらは、君の可能性に気づけなかった。たとえ能力探査水晶球に精霊が干渉したとしても、君のまわりにいる精霊にも気づけなかった。こんなにも、たくさんいるのにも拘わらず、だ。
だから、聖女が、君の精霊が行った光の槍を解呪しても、君の気配には気づかない。神官達はね」
美弥子が、私の気配を、霊気や魔力の質を覚えていたら解らないと言う。
「それ、は、大丈夫かと。私は、カインハウザー様に妖精達を視る方法を教えて貰うまで、魔力を使った事などありませんでしたから。そして、あの場では、まだ美弥子もさくらさんも、どんな能力を持っているのか解らない、誰も魔法も魔術も知らない状態でした」
「なるほど。なら、光の槍に含まれる君の魔力は大丈夫だろう。だが、直感的に君を嫌ったという聖女は、君の気配や霊力、存在値を、知らず感知して相性が悪かった、と言うのなら、聖女は君の気配は気づいたかもしれない」
「嬢ちゃんの嫌いな奴、黒蟲がいたら、ゾワッとして、妖精が外に放り出すか精霊が退治するか、完全にいなくなるまでいや~な感じは続くだろう?」
その、いや~な感じを、霊気や気配で、本能的に感知している可能性はあるのだという。
「彼女がどのくらい優秀な術者かにもよるが、魔力感知になれていなければ、なんか嫌な感じかする、憶えがあるような、早くここから立ち去りたい、くらいで気づいてない可能性もあるから、とにかく、ハッキリしない事を不安に思う必要はないよ」
美弥子が気づいてなんらかの行動に出るか、彼女に聞いた大神官達が何か手を打ってくるか、それらしい動きがあれば、改めて対策を講じようと言ってくれた。
「それからで大丈夫でしょうか?」
「あれらが君に気づいたなら、恐らく精霊達が報せてくれるだろう。君をあそこに置いておきたくなくて、能力判定に干渉したのだから」
「お! 俺らが、フィオちゃんを守ります」
切り株を倒す勢いでロイスさんが立ち上がる。
「神殿の奴らがなんか言ってきても、街には入れませんよ」
「実際に街に押し入って本人を見つけなきゃ、どうこう言ってきても、関係ないですよ」
「まあ、俺らが、嬢ちゃんになにかしようとする奴らはみぃんなやっつけてやるから、心配すんな」
「ええっ、大神殿に楯突いて大丈夫なんですか?」
「元々、この街は、大神殿とは仲が良くないんだ、今更だね」
初めて会った時から、そんな事は言っていた気はする。
大神殿の信者や僧侶、縁のある商人は立ち入らないとか、大神殿のスパイは街中で排斥するとか……
北門の近くにある教会も、山頂の大神殿とは奉じる神が違う。
大神殿は生死と安寧の男神クロノ。
教会は、すべての神々の頂点、管理神アルファ。
後から聞いた話だけど、街や村にある小さな教会はどこも、すべての神に祈ることが出来るし、ご本尊様は、管理神アルファなのだとか。そして、どこの宗派にも肩入れをしない、平等な立場なのだという。
「まあ、そう言う事だから、君は今まで通り、ここで、みんなの詩桜里でいていいんだよ」
みんなの気持ちがとても嬉しく、頼もしかった。
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−−−−−−
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短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
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