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・屋敷編
Wed-15
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「な……」
大きく見開かれた藤滝の瞳に、その男の姿が映り込んだ。
「ここは部外者は立ち入り禁止のはずだが?」
動揺を隠そうと、藤滝はあえてゆっくり発音した。だが、この男は全てを見通すように、態度を変えなかった。
「何言ってるんだ? そもそも俺がいなければお前はこんな小さな鳥籠さえつくれなかったじゃないか?」
小さな鳥籠?
藤滝は男のぶっきらぼうなものいいとその言葉に眉根をひそめた。確かに藤滝の経済圏は辺鄙で小さいものかもしれない。だが、どれだけの数字を動かしていると思っているのだろう。それに、藤滝がつくりあげたのは『屋敷』を中心とした絶対的なヒエラルキーのもと確率された秩序ある売春区域だ。ありとあらゆる抜け道を考えたどり着いた、藤滝の牙城である。
「おいおい、顔が引きつっているぞ。……美人が台無しだな」
「触るな」
藤滝に向けて男の手が伸びて来た。それを振り払うと、男はにんまりとした不気味な笑みを浮かべた。
「おっと、もしかして、おびえているのか?」
「まさか。誰が誰に?」
「お前が俺に、さ」
「寝言は寝てからにしろ」
「おっと、怖い怖い。昔から美しいものは怒ると怖いっていうもんな」
「は。何を言い出すやら」
「だって、そうだろう、美苑」
男は藤滝の右手首を掴み上げた。その腕力に、藤滝は顔をしかめた。
「だって、お前はもともと、俺らの玩具だったんだからな――」
大きく見開かれた藤滝の瞳に、その男の姿が映り込んだ。
「ここは部外者は立ち入り禁止のはずだが?」
動揺を隠そうと、藤滝はあえてゆっくり発音した。だが、この男は全てを見通すように、態度を変えなかった。
「何言ってるんだ? そもそも俺がいなければお前はこんな小さな鳥籠さえつくれなかったじゃないか?」
小さな鳥籠?
藤滝は男のぶっきらぼうなものいいとその言葉に眉根をひそめた。確かに藤滝の経済圏は辺鄙で小さいものかもしれない。だが、どれだけの数字を動かしていると思っているのだろう。それに、藤滝がつくりあげたのは『屋敷』を中心とした絶対的なヒエラルキーのもと確率された秩序ある売春区域だ。ありとあらゆる抜け道を考えたどり着いた、藤滝の牙城である。
「おいおい、顔が引きつっているぞ。……美人が台無しだな」
「触るな」
藤滝に向けて男の手が伸びて来た。それを振り払うと、男はにんまりとした不気味な笑みを浮かべた。
「おっと、もしかして、おびえているのか?」
「まさか。誰が誰に?」
「お前が俺に、さ」
「寝言は寝てからにしろ」
「おっと、怖い怖い。昔から美しいものは怒ると怖いっていうもんな」
「は。何を言い出すやら」
「だって、そうだろう、美苑」
男は藤滝の右手首を掴み上げた。その腕力に、藤滝は顔をしかめた。
「だって、お前はもともと、俺らの玩具だったんだからな――」
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