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・屋敷編
Thuー01
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いつの間にか、太陽が出ている。
そんなだらしのない生活が、完全に身に沁みついてしまいそうで、嫌になる。
「おはよー」
頭の上から、間の抜けた少年の声がした。
「おにーさん、大丈夫? 声やばくない?」
おはようと挨拶を返したはずが、掠れた声しかでなくて、少年が心配そうに小首をかしげてこちらをみおろした。
「いや、平気」
全然、声が出ていないが。
「昨日は大変だったんだねぇ。繁盛することはいいことだ」
のほほんと、そう言い返されて、青年は苦い顔になった。
確かに、売り上げをとにかくとってこないと、あの藤滝のことだ。自分を奈落の底にまで落として、ひとりで悦に入るにちがいない。それでも、あんな鬼畜でも、自分の言ったことはきちんと通す男だから、売り上げさえきちんとあげれば、あの男は言ったことをたがえたりはしないだろう。
そうは思う。思うのだが。
「最近、おにぃさん、はりきってばかりだけど、大丈夫?」
「はりきらないと大丈夫じゃないからな」
「あ、声は枯れても、口は減らないんだね」
芹那も、言わなくていいことを口にする。どうせ、ここでの朝はそんな朝だ。たいしたことはない。
昨夜、結局、何がどうなったのか、頭がぼんやりとしていて、青年は、はっきりと思い出すことができないでいた。
あの客――そしてあの客の連れを取ったところまでは覚えているのだが、その後、激しく責め立てられて、気が付いたら意識を飛ばしていた。そのくらい、花料をむさぼれたのか、まだわからないが、これでとりあえず、上乗せできる金になった。
「おい、あのクソ犬はいるか!?」
バタバタと廊下から騒がしく使用人が顔を出した。
「は? 屋敷で犬でも飼ってんのか?」
犬、と聞いて、青年はあの可愛い哺乳類の姿を想像したが、犬はただのあだ名だった。
「あ、いた!」
黒服が青年を指さして叫んだ。
「は?」
ずしずしと使用人が青年の近くまで来る。
「さあ、来い。ちょっとどういうことかきちんと説明していただかないとな」
「は? え? ちょ……? なんだよ、朝っぱらから!」
もう既に昼なのだが、今起きたばかりなのだ。まとわりつてくる使用人を振り払って青年は叫んだ。
「いいから来い! 一大事だ!」
「は?」
「お前、一体、昨晩でいくら稼いだんだよ!」
「は?」
訳もわからず、その黒服に青年はなぜか屋敷のエントランスまで連れ出された。
----
いつもお読みいただきありがとうございます。
ここから少し話の流れが変わっていく予定なので、どうなるかわかりませんが(なにぶん、見切り発車で書いているので)書き続けようと思います。更新頻度は急に落ちたり復活したりと定期的には書けないこと深々と頭さげさせてくださいませ。いつも変な頻度で申し訳ないです。(それなのに、ついてきてくれてありあがとうです)
それから、一時的なものかもしれませんが、いつの間にか、お気に入り数が550になっていました。見てくださるかたもいらっしゃることが嬉しく思います。
あいかわらずグダグダとダラダラと続きますが、屋敷編も終盤(そろそろ決着つけて終わらせるぞ!の気合で進みます)。藤滝にはヒヤッとしていただかないと! 少々アレな展開になると思うので、まずいと思ったらお戻りくださいませ。
お口に合う、もしくはまずいけどいけると思われるかたはどうぞこれからもよろしくお願いいたします。
(などと申したすぐあとですが、明日は執筆をおやすみいたします。ここ最近毎日かけているので調子をこきました。てへぺろ……なんちゃって。)
そんなだらしのない生活が、完全に身に沁みついてしまいそうで、嫌になる。
「おはよー」
頭の上から、間の抜けた少年の声がした。
「おにーさん、大丈夫? 声やばくない?」
おはようと挨拶を返したはずが、掠れた声しかでなくて、少年が心配そうに小首をかしげてこちらをみおろした。
「いや、平気」
全然、声が出ていないが。
「昨日は大変だったんだねぇ。繁盛することはいいことだ」
のほほんと、そう言い返されて、青年は苦い顔になった。
確かに、売り上げをとにかくとってこないと、あの藤滝のことだ。自分を奈落の底にまで落として、ひとりで悦に入るにちがいない。それでも、あんな鬼畜でも、自分の言ったことはきちんと通す男だから、売り上げさえきちんとあげれば、あの男は言ったことをたがえたりはしないだろう。
そうは思う。思うのだが。
「最近、おにぃさん、はりきってばかりだけど、大丈夫?」
「はりきらないと大丈夫じゃないからな」
「あ、声は枯れても、口は減らないんだね」
芹那も、言わなくていいことを口にする。どうせ、ここでの朝はそんな朝だ。たいしたことはない。
昨夜、結局、何がどうなったのか、頭がぼんやりとしていて、青年は、はっきりと思い出すことができないでいた。
あの客――そしてあの客の連れを取ったところまでは覚えているのだが、その後、激しく責め立てられて、気が付いたら意識を飛ばしていた。そのくらい、花料をむさぼれたのか、まだわからないが、これでとりあえず、上乗せできる金になった。
「おい、あのクソ犬はいるか!?」
バタバタと廊下から騒がしく使用人が顔を出した。
「は? 屋敷で犬でも飼ってんのか?」
犬、と聞いて、青年はあの可愛い哺乳類の姿を想像したが、犬はただのあだ名だった。
「あ、いた!」
黒服が青年を指さして叫んだ。
「は?」
ずしずしと使用人が青年の近くまで来る。
「さあ、来い。ちょっとどういうことかきちんと説明していただかないとな」
「は? え? ちょ……? なんだよ、朝っぱらから!」
もう既に昼なのだが、今起きたばかりなのだ。まとわりつてくる使用人を振り払って青年は叫んだ。
「いいから来い! 一大事だ!」
「は?」
「お前、一体、昨晩でいくら稼いだんだよ!」
「は?」
訳もわからず、その黒服に青年はなぜか屋敷のエントランスまで連れ出された。
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いつもお読みいただきありがとうございます。
ここから少し話の流れが変わっていく予定なので、どうなるかわかりませんが(なにぶん、見切り発車で書いているので)書き続けようと思います。更新頻度は急に落ちたり復活したりと定期的には書けないこと深々と頭さげさせてくださいませ。いつも変な頻度で申し訳ないです。(それなのに、ついてきてくれてありあがとうです)
それから、一時的なものかもしれませんが、いつの間にか、お気に入り数が550になっていました。見てくださるかたもいらっしゃることが嬉しく思います。
あいかわらずグダグダとダラダラと続きますが、屋敷編も終盤(そろそろ決着つけて終わらせるぞ!の気合で進みます)。藤滝にはヒヤッとしていただかないと! 少々アレな展開になると思うので、まずいと思ったらお戻りくださいませ。
お口に合う、もしくはまずいけどいけると思われるかたはどうぞこれからもよろしくお願いいたします。
(などと申したすぐあとですが、明日は執筆をおやすみいたします。ここ最近毎日かけているので調子をこきました。てへぺろ……なんちゃって。)
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