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クロエの部屋にて。 2話

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「……私、また魔法が使えるようになるんですか……?」
「ええ。もともと使えていた魔法は使えると思います。マーセル嬢の魔法の属性は四大属性みたいですね。まぁ、他の人も大体はそうなんでしょうけれど。そうなってくると、やはりカミラさまに隠された属性がきになりますねぇ」

 わたくしたちを交互に見ながら、考えるように腕を組み「うーん」と悩み始めるブレンさま。

 ――マーセルの魂にかけられた魔法をける人がいるって、心強いわ。

 ほっと息を吐くと、クロエがいつの間にかお茶をれてくれたみたいで、テーブルにお茶を置き、ソファに座る。お茶菓子にビスケットも用意してくれた。

「カミラさまの隠された属性とは……?」

 マーセルが気になったのか、声をかけてきた。わたくしはお茶を一口いただいてから、その質問に答える。

「わたくしにも、よくわからないのよ」

 だって今まで、四大属性しか使ったことがないのだもの。

 わたくしにあって、マーセルにない属性の正体がつかめれば、わたくしたちがなぜ交換されたのかも、わかるかもしれないわね……

「そういえば、貴女あなた、また閉じ込められた?」

 マーセルにたずねると、彼女はこくりとうなずいた。

 やはり、あの部屋に閉じ込められていたのね。

「授業はどう? ついていけそう?」
「……さっぱりです……」

 泣きそうな表情を浮かべて、うつむいてしまった。

 わたくしとしてはそれで良いのだけど。

 召使学科で習うのは、わたくしがすでに学習していたところが多いから、『マーセル』の成績はそれなりに上がるでしょう。

「……そのままで良いわ」
「え?」
「テストも、白紙で出しなさい。カミラの成績を底に落として構わないわ」

 わたくしの言葉に、三人が息をむ。

 ビスケットに手を伸ばして、口の中に入れて咀嚼して、飲み込んでからお茶を含んだ。

 口の中の水分を奪うビスケットだからこそ、次に飲むお茶が美味しく感じるのよね。

「あまり得策には思えませんけれど……?」
「追試はわたくしが受けるわ。だから、その前に身体を戻したいの。ブレンさま、ご協力をお願いします」

 すっと頭を下げると、マーセルも頭を下げた。わたくしにつられて、という感じだった。

「はぁ、まぁ、僕にできることでしたら……」
「では、まず半月でマーセルの魔法を使えるようにしていただきたいのですが」
「えっ!? わ、わりと性急ですね!?」
「ええ。パーティー前にはわたくしたちの身体、戻したいので。マーセル、貴女はどうして魔法が使えなくなったのか、心当たりはありまして?」

 ふるふると首を横に振るマーセルに、クロエが昨日話していたことを伝える。

 すると、彼女は「……あ」と、なにかを思い出したようにつぶやいた。
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