【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花

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クロエの部屋にて。 1話

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 その日は寮の門限前に帰り、そのまま明日の準備をする。

 クロエは、明日の放課後呼びにいくので教室で待っていてほしいと伝えて、わたくしの肩をぽんと叩いた。

 そして翌日――つまり、今日、これから――マーセルと会う。

 その前に、マティス殿下に昨日のお土産を渡した。

 中身を見てすごく複雑そうな表情を浮かべていたので、少しだけ胸がすっとしたわ。

 それでも大事そうに抱えて持っていったから、マーセルのことが本気で好きなのだとしみじみ感じた。

 思っただけで、他の感情が動かない。

 貴族の結婚って、大体が政略結婚で、恋愛はあとからついてくるものだと思っていたけれど……マティス殿下とマーセルのように想いあっている場合はどうなるのかしらね?

「さて、と……」

 今日も地味な嫌がらせはあったけれど、あまりにも地味すぎてまったくダメージにもならなかった。

 元々貴族が通う学園だから、そんなに目立った嫌がらせはないのかしら?

 ……いえ、マーセルが変わった、と思ったからこそ?

「か……マーセルさま、お待たせしました」

 放課後、すぐにクロエがわたくしを迎えにきた。早い。

 鞄を持って、彼女に近付く。

 クロエの部屋に向かう途中で、ブレンさまに会った。そして、そのまま彼も一緒に彼女の部屋に足を進める。

「男性がクロエの部屋に入っても、大丈夫?」
「大丈夫ですよ、教員の寮ですしね」

 それなりに人の出入りはあるみたいね。

 授業でわからないところがあれば、聞きに行く人もいるのかしら?

 そんな会話をわしつつ、彼女の部屋の前についた。

 クロエが開き、中に入るようにうながしたので、わたくしたちは中に足を踏み入れた。

 そこにはすでにカミラ……の姿をしたマーセルがいて、こちらに気付くとばっと頭を下げる。

「ごきげんよう、カミラさま」
「ごきげんよう、マーセル」

 わたくしに挨拶をしたマーセルは、後ろに控えていたブレンさまを見て、首をかしげた。

 ブレンさまはじっとマーセルを見て、それから「これは……」とつぶやく。

「……なにかわかりまして?」
雁字搦がんじがらめですねぇ」

 のほほんとした口調で言われて、わたくしとはマーセルと顔を見合わせて、ブレンさまを凝視する。ブレンさまはじーっとわたくしたちを見て、肩をすくめた。

「うん、やっぱり禁術の一つです。特に……マーセル嬢? の魂にかけられた鎖が強そうです。魔法が使えないのは、そのせいかも」
「! で、では、鎖がければ……!」
「それが、ですねぇ……。あまりにも雁字搦めに絡まっているので、くには時間がかかりそうです」

 ブレンさまの言葉に、大きく目を見開いた。だって、それは……時間をかければマーセルの鎖をけるということだから。
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