【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花

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仮説。 2話

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「わかりました」
「マーセル嬢の魔法が使えないことについても、わかるかもな」
「……だと、良いのですけれど……」

 マーセルは今、おそらく必死になって勉強をしている。

 昨日のディナーで、マーセルがいなかったのは……あの部屋に閉じ込められているからだろう。

 わたくしはあの部屋に閉じ込められたくなくて、必死で勉強をしていたのよねぇ……

 そう考えると、なんだかいろいろ複雑な気分だわ。

 彼女が魔術師学科で、どれだけの成績を残せるのかは謎だけど……

「マーセルが魔法を使えなくなったのって、いつからなのかしら?」
「それまで普通に使えていたのに、急に使えなくなったら悪意ある誰かが……ってことも考えられますよね」
「あの、そのことについて、私……一つ、心当たりがあります」

 クロエがおずおずと手を上げた。

 どういうこと? と視線で問うわたくしに、彼女はゆっくりと言葉を紡ぐ。

「入学後すぐに、花祭りがありましたよね。そして、五人の花姫の一人がマーセルさまでした」

 ああ、確かにあったわね、花祭り。

 いろいろな花を咲かせて、その花を愛でる祭り。

 ただ、花を咲かせる魔法は難しいから、適任者がいなければならなかった。

 今年は五人も花を咲かせる人たちがいたのよね。

 ……その花姫の一人が、マーセルだった……?

 わたくしは花祭りに参加していなかったから、知らなかったわ……

 裏方で参加はしていたけれど、お母さまに『お前が表に出るのはもう少しあとよ』と言われていたから。

「それじゃあ、そこで魔法が封じられた……?」
「かもしれません。ですが、そんなこと可能なのでしょうか?」
「禁術の一つでしょうねぇ」

 謎は深まるばかり、ね。

 すべて憶測だもの。……だけど、一人で悶々としているよりはずっと良い。

 マーセルには、わたくしのように話せる人がいないと思うから、そこは素直に憐れだと思う。

「……彼女もまた、被害者なのかもしれないのね……」
「カミラさま……それは、同情ですか?」

 クロエに問われて、こくりとうなずいた。

 だって、わたくしがマーセルの立場だったなら、どうなっていたかわからない。

 本当の家族に、愛されて育ち……マティス殿下に憧れを抱いていたかもしれないもの。

 今、マーセルの味方はこの学園に一人もいないと考えると、やはり不憫ふびんだと思ってしまう。

「わたくしがこうやって穏やかに過ごせるのは、クロエたちがいるからよ。……でも、あの子にはそんな人たちがいないでしょう……?」

 マーセルの本当の家族であるベネット公爵たちが、『カミラ』とどんなふうに接しているのか……ずっとあの家で育っていたわたくしにはわかる。

「ブレンさま、明日……よろしくお願いいたします。マーセルの魂になにが起こっているのか、わたくしも知りたいと考えています」

 わたくしがこんなことを頼む資格なんて、ないのかもしれないけれど……

 そう、願わずにはいられなかった。
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