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仮説。 1話
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「それは、……どういう意味、でしょう……?」
「その通りの意味さ。ブレン、魔法の属性は魂で決まるんだろ?」
ブレンさまはこくりとうなずき、わたくしに近付いて観察――というよりは、診察するように目元を細める。
クロエは、黙ってそれを見ていた。
「――はい。やっぱり、カミラさまの魂にはロックがかかっているように視えますね。それがどんな属性なのかはわかりません」
「ブレンさまは、魔術師学科のほうが向いていらっしゃるのでは……?」
「こっちの陛下に進言してくださーい」
……そうだった。わざと彼らを引き離したのは、この国の陛下だったわね。
わたくしがゆっくりと息を吐くと、ブレンさまはすっと的に向けて魔法を放つ。
炎の魔法だ。
見ただけわかる――これは、この国の者では発動させることができない、複雑な魔法だと。
「確かにこっちのほうが、楽なんですけどね」
「ちなみに俺はどっちかというと剣のほうが楽だなぁ。ブレンが魔法得意なのは、家族の影響だろ?」
「ご家族の?」
気になったのか、クロエが会話に混じる。
ブレンさまが放った魔法で、的が落ちた。手加減してあの威力なのか……それとも、全力なのか……涼しい顔をしているのを見て、全力ではなさそうだと感じた。
「僕の母って占い師なんですよねー」
「占いと魔法に関係があるのですか?」
「僕の目は母譲り。人が得意とする魔法の属性が視えます。……もっと言えば、魂の色やいろんなものが視えます」
そういえば、確かに『魂の色』のことを話していたわね。
わたくしの魂は真っ白で、クロエの魂の色は青い炎と……、ブレンさまが口にしていたことを思い出す。
「ただ、そういうのってやっぱり視られたくない人が多いので、あまり占い師ってことは伝えていないみたいなんです。だから、カミラさまが『魂占い』って言ったとき、ドキッとしました。嫌だったかなぁって」
大きな身体を小さくして肩をすくめるブレンさまに、わたくしとクロエはぶんぶんと首を横に振った。
魔術師の家系であるブレンさまに、占い師のお母さまもいたとは……
レグルスさまはブレンさま肩に手を置いて、今度は自分が魔法を使ってみせた。
――とてもきれいな、青の炎。
「レグルスさまは、青い炎しかだせませんよねー」
「加減が面倒……」
「あはは!」
なにがおかしいのかわからないけれど、彼らには彼らのなにかがあるのでしょう。
クロエがなにかを考えるように唇に指を当てて、ぶつぶつとつぶやいているのに気付き、声をかけようとしたら、彼女が顔を上げた。
「ブレンさま!」
「はい?」
「カミラさまとマーセルさまを同時に視れば、なにかわかるかもしれないと話していましたよね。それは、いつでも可能ですか?」
「え、はい。視るだけなら、いつでも」
「それなら、明日の放課後……お願いできませんか?」
どうやってマーセルを連れてくるつもりなのかしら?
「どうか、お願いします」
ブレンさまに頭を下げるクロエ。彼はそれを見て、困ったようにレグルスさまを見る。
レグルスさまが小さくうなずくのを見てから、口を開いた。
「その通りの意味さ。ブレン、魔法の属性は魂で決まるんだろ?」
ブレンさまはこくりとうなずき、わたくしに近付いて観察――というよりは、診察するように目元を細める。
クロエは、黙ってそれを見ていた。
「――はい。やっぱり、カミラさまの魂にはロックがかかっているように視えますね。それがどんな属性なのかはわかりません」
「ブレンさまは、魔術師学科のほうが向いていらっしゃるのでは……?」
「こっちの陛下に進言してくださーい」
……そうだった。わざと彼らを引き離したのは、この国の陛下だったわね。
わたくしがゆっくりと息を吐くと、ブレンさまはすっと的に向けて魔法を放つ。
炎の魔法だ。
見ただけわかる――これは、この国の者では発動させることができない、複雑な魔法だと。
「確かにこっちのほうが、楽なんですけどね」
「ちなみに俺はどっちかというと剣のほうが楽だなぁ。ブレンが魔法得意なのは、家族の影響だろ?」
「ご家族の?」
気になったのか、クロエが会話に混じる。
ブレンさまが放った魔法で、的が落ちた。手加減してあの威力なのか……それとも、全力なのか……涼しい顔をしているのを見て、全力ではなさそうだと感じた。
「僕の母って占い師なんですよねー」
「占いと魔法に関係があるのですか?」
「僕の目は母譲り。人が得意とする魔法の属性が視えます。……もっと言えば、魂の色やいろんなものが視えます」
そういえば、確かに『魂の色』のことを話していたわね。
わたくしの魂は真っ白で、クロエの魂の色は青い炎と……、ブレンさまが口にしていたことを思い出す。
「ただ、そういうのってやっぱり視られたくない人が多いので、あまり占い師ってことは伝えていないみたいなんです。だから、カミラさまが『魂占い』って言ったとき、ドキッとしました。嫌だったかなぁって」
大きな身体を小さくして肩をすくめるブレンさまに、わたくしとクロエはぶんぶんと首を横に振った。
魔術師の家系であるブレンさまに、占い師のお母さまもいたとは……
レグルスさまはブレンさま肩に手を置いて、今度は自分が魔法を使ってみせた。
――とてもきれいな、青の炎。
「レグルスさまは、青い炎しかだせませんよねー」
「加減が面倒……」
「あはは!」
なにがおかしいのかわからないけれど、彼らには彼らのなにかがあるのでしょう。
クロエがなにかを考えるように唇に指を当てて、ぶつぶつとつぶやいているのに気付き、声をかけようとしたら、彼女が顔を上げた。
「ブレンさま!」
「はい?」
「カミラさまとマーセルさまを同時に視れば、なにかわかるかもしれないと話していましたよね。それは、いつでも可能ですか?」
「え、はい。視るだけなら、いつでも」
「それなら、明日の放課後……お願いできませんか?」
どうやってマーセルを連れてくるつもりなのかしら?
「どうか、お願いします」
ブレンさまに頭を下げるクロエ。彼はそれを見て、困ったようにレグルスさまを見る。
レグルスさまが小さくうなずくのを見てから、口を開いた。
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