【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花

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お土産屋。 2話

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 こくりとうなずいて、選んだぬいぐるみを持ち、会計に向かう。

 サメのぬいぐるみを、プレゼントっぽくラッピングをしてもらった。

 明日、これを見たときのマティス殿下の反応がどんなものなか……少し楽しみね。

 ラッピングされたぬいぐるみを袋に入れてもらった。そして、レグルスさまたちのところに戻ると、彼らは三人顔を見合わせて、なにかを悩んでいるように難しい表情を浮かべていた。

 なにを考えているのかしら……?

「どうしましたの?」
「あ……いえ。今回はあまり見て回れなかったので、また今度来たいねって話を……」

 クロエがそう教えてくれた。

 そのわりには、クロエの頬が赤くなっているような……?

 あ、もしかして、ブレンさまに二人で行こうと誘われたのかもしれない。

 ちらりとブレンさまを見ると、にこにこと笑っていた。楽しそうね、彼。

「……あの、まだ時間はありまして?」
「え? ああ、もちろん。門限まであるからね」
「……でしたら、お願いしたいことがあるのですが……」

 三人の顔を見渡して、真剣な表情でぬいぐるみの入った袋を抱きしめる。

 そして、周りの人に聞こえないように、小さな声でお願いをした――……

◆◆◆

「マジですか」
「マジですわ」

 人気のない――演習場。

 周囲には魔法のバリアが張ってあるから、周りに被害が出ることはない。

「本気で言っているんだよな……?」
「医者のクロエもいますし、今のわたくしがどの程度の魔法が使えるのか……見守ってくれませんか?」

 クロエが心配そうにわたくしを見ている。

 マーセルの身体でも、魔法が使えるのはわかるのだけど……、どの程度まで使えるのかは、まだ試していないの。

 わたくしは、レグルスさまたちに立ち会ってもらうことを希望した。

 この演習場はあまり人がこないことで有名な場所だから……

 幽霊が出るとか、おどろおどろしい音が聞こえるとか、そんな噂のある場所。

 まぁ、おそらくその幽霊の正体、わたくしなのよね。

 放課後、帰る前に授業の復習するために寄っていたの。

「魔力が切れそうになったら、すぐにやめること」
「はい。――では、いきます!」

 わたくしは普段と同じように、攻撃魔法を演習場の的にはなつ。

 火の魔法、水の魔法、風の魔法、土の魔法を試していく。

 属性魔法はもとから使えていた。

 攻撃魔法を的に当てていく。動かない的だから、狙いやすい。

 ……マーセルはなぜ、魔法を使えなくなったのだろう?

「カミラさまの魔法の属性は、それだけですか?」
「え? ええ……」

 四属性は、わりと誰でも使える属性だ。

 ブレンさまが探るようにわたくしをじっと見つめて、「おかしいなぁ」とつぶやく。

 レグルスさまがそれに気付いて、わたくしたちを交互に見た。

「なにがおかしいんだ?」
「僕かられば、カミラさまの魂に宿っている属性が、まだあるように見えるんですよね。もしかしたら、隠されているのかも?」

 じーっと見つめられて、わたくしも見つめ返す。

 レグルスさまがなにかを考えるように、顎に指をかけてゆるりと息を吐く。

「……もしかして、それがきみの公爵令嬢になった理由だった……?」

 レグルスさまがそう仮説を立てて、わたくしたちは言葉をんだ。
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