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やっと休める…… 2話
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「どうしました?」
「……クロエ、貴女の歩む道は、本当に侍女で良いの?」
わたくしの――カミラの侍女になってくれると、クロエは言った。それは医者の道を閉じることに繋がるのではないかと……そう思って、彼女に問いかける。
クロエは一瞬きょとんとした表情を浮かべて、それから「なにを言い出すかと思えば……」とおかしそうに肩を震わせた。……笑い事ではないのでは……?
「この国に残ったとしても、私の医者としての道は閉ざされるでしょう。私のことを良く思っていない人が多いですからね。それなら、カミラさまと新しい道を歩いてみたい。リンブルグという、未知の土地を!」
心底楽しそうに言い切ったクロエの勢いに、飲み込まれそうになった。
カップを置いて、彼女の手をぎゅっと握る。
そして、心からの「ありがとう」を言葉にした。
「あ、そろそろ溜まったかしら。クロエ、バスタオルとバスローブの準備をお願いしても良いかしら?」
「もちろんですよ」
クロエは「きっとここら辺……」と小声でつぶやきながら、バスタオルとバスローブを探し当て、しっかりとその手に持つ。
わたくしは浴室に向かい、お湯が溜まったのを確認してから、お湯を止める。ふと、視界に入浴剤が入った。
せっかくだから使ってみましょう、と入れてみる。
あ、お湯が白くなった。
保湿効果がありそうな入浴剤ね。甘いミルクの香りが鼻腔をくすぐる。
ゆっくり浸かると疲れが取れそう……
……デートは楽しかったけれど、お父さまたちとの会話は疲れたわ。
ベネット公爵家の人たちにとって、わたくしって本当に存在価値なさそうよね……
まぁ、そんなことは考えるのをやめましょう。
「今日はわたくしがクロエにやるわね」
クロエが浴室まで来てバスタオルとバスローブを置くのを見て、声をかける。
「え?」
「ほら、脱いで脱いで」
「カミラさま!?」
慌てたようなクロエの声。わたくしは気にもせずに彼女の衣服を脱がし始めた。
クロエが着ている服って、脱がしやすくて良いわね。着るのも楽そう。
リンブルグの服装ってどんな感じなのかしら?
着るのも脱ぐのも楽な服だと良いなとぼんやり考える。……そして、クロエはナイスバディだった。羨ましいくらいに。
「な、なんですか、その目は!」
「なにを食べたらこんなに大きくなるのかしら……」
「目が怖いですよ、カミラさま!」
あら、失礼、と言葉を紡ぐと、クロエは「カミラさまも脱いでください!」とわたくしの服を脱がしにかかった。
でも、その手が止まり困惑したように「え、これどうなっているんですか!?」とパニックを起こした。……これでも簡単な服を着てきたのよ。
マーセルの服って、自分でも着られるようなデザインが多くて助かったわ。
「貴族の令嬢が着る服って、脱がせるの大変ですね……」
「着せるのも大変そうだったわよ」
公爵邸にいた頃を思い出して、くすりと笑う。
わたくしの着替えに、かなりの時間をかけていたもの。
もちろん、着替えだけが理由ではないけれど。
髪型やメイクなんかも時間をかけていたからね。その日の天気ややるべきことによって違うのよ。
だからこそ、学園の制服はとても楽に感じるのだけど……
……マーセルも結構なナイスバディね。
じっとこちらを見つめるクロエの視線の先に気付いて、わたくしは両肩を上げた。
「……クロエ、貴女の歩む道は、本当に侍女で良いの?」
わたくしの――カミラの侍女になってくれると、クロエは言った。それは医者の道を閉じることに繋がるのではないかと……そう思って、彼女に問いかける。
クロエは一瞬きょとんとした表情を浮かべて、それから「なにを言い出すかと思えば……」とおかしそうに肩を震わせた。……笑い事ではないのでは……?
「この国に残ったとしても、私の医者としての道は閉ざされるでしょう。私のことを良く思っていない人が多いですからね。それなら、カミラさまと新しい道を歩いてみたい。リンブルグという、未知の土地を!」
心底楽しそうに言い切ったクロエの勢いに、飲み込まれそうになった。
カップを置いて、彼女の手をぎゅっと握る。
そして、心からの「ありがとう」を言葉にした。
「あ、そろそろ溜まったかしら。クロエ、バスタオルとバスローブの準備をお願いしても良いかしら?」
「もちろんですよ」
クロエは「きっとここら辺……」と小声でつぶやきながら、バスタオルとバスローブを探し当て、しっかりとその手に持つ。
わたくしは浴室に向かい、お湯が溜まったのを確認してから、お湯を止める。ふと、視界に入浴剤が入った。
せっかくだから使ってみましょう、と入れてみる。
あ、お湯が白くなった。
保湿効果がありそうな入浴剤ね。甘いミルクの香りが鼻腔をくすぐる。
ゆっくり浸かると疲れが取れそう……
……デートは楽しかったけれど、お父さまたちとの会話は疲れたわ。
ベネット公爵家の人たちにとって、わたくしって本当に存在価値なさそうよね……
まぁ、そんなことは考えるのをやめましょう。
「今日はわたくしがクロエにやるわね」
クロエが浴室まで来てバスタオルとバスローブを置くのを見て、声をかける。
「え?」
「ほら、脱いで脱いで」
「カミラさま!?」
慌てたようなクロエの声。わたくしは気にもせずに彼女の衣服を脱がし始めた。
クロエが着ている服って、脱がしやすくて良いわね。着るのも楽そう。
リンブルグの服装ってどんな感じなのかしら?
着るのも脱ぐのも楽な服だと良いなとぼんやり考える。……そして、クロエはナイスバディだった。羨ましいくらいに。
「な、なんですか、その目は!」
「なにを食べたらこんなに大きくなるのかしら……」
「目が怖いですよ、カミラさま!」
あら、失礼、と言葉を紡ぐと、クロエは「カミラさまも脱いでください!」とわたくしの服を脱がしにかかった。
でも、その手が止まり困惑したように「え、これどうなっているんですか!?」とパニックを起こした。……これでも簡単な服を着てきたのよ。
マーセルの服って、自分でも着られるようなデザインが多くて助かったわ。
「貴族の令嬢が着る服って、脱がせるの大変ですね……」
「着せるのも大変そうだったわよ」
公爵邸にいた頃を思い出して、くすりと笑う。
わたくしの着替えに、かなりの時間をかけていたもの。
もちろん、着替えだけが理由ではないけれど。
髪型やメイクなんかも時間をかけていたからね。その日の天気ややるべきことによって違うのよ。
だからこそ、学園の制服はとても楽に感じるのだけど……
……マーセルも結構なナイスバディね。
じっとこちらを見つめるクロエの視線の先に気付いて、わたくしは両肩を上げた。
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