【完結】トレード‼︎ 〜婚約者の恋人と入れ替わった令嬢の決断〜

秋月一花

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授業には問題なくついていけそう。 1話

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 その後、数々の授業を受けたけれど問題なかったわ。召使の授業って思っていたよりも楽しかったわ。魔術師の授業よりは専門的なこともないしね。

 掃除やお茶のれ方、主人の着替えやお風呂の準備、すべてわたくしの侍女がやっていることを真似したら、なかなかの高評価を得られた。

「マーセル、それだけの実力を、今まで隠していたんですか?」

 敬語だけど、棘のある言葉をクラスメイトに投げられた。しん、と静まり返った教室の中で、彼女の声はよく響き渡り、他の人たちもこちらを注目している。

「魔法も使えないフリをして……楽しかったですか? わたくしたちがあなたを見下しているのを知って、反抗しようと?」
「……それは、貴女あなたたちに黙っていじめられていなさい、と言うことでしょうか? 貴女、本当に我が国の貴族ですの?」

 呆れたように彼女を見れば、カッと顔を紅潮させて手を上げる。それを止めたのは、一人の少女だった。厳しい表情で彼女を見ている。……止めたのは、わたくしのためではなさそうね。

「見苦しい真似はおやめになって。今日のマーセルが本当に実力を隠していたのかどうか、あとでわかることですわ」

 ……マーセルとのトレード期間が終わったらどうなるのかしらね?

 そのうち自分の身体に戻るとは思うのだけど……なかなか快適だから、わたくしはこのままでも構わないわ。マティス殿下の存在を除けば。

 すべての授業を終えてわたくしが放課後、図書室に向かおうとすると声をかけられた。

 ――マティス殿下に。

 みんなの視線が痛いわ。彼は王族だから注目を集めることに慣れているのよね。わたくしも公爵家の令嬢だから、見られることには慣れている。慣れてはいるの……でも、こういうのってあまり好きではないわ。

「マーセル、今日の放課後は……」
「申し訳ありません、マティス殿下。わたくし、図書室に行こうと思いますの。授業の復習をしたくて……」

 心底申し訳なさそうに眉を下げて微笑んでみせると、彼は残念そうにしゅんとして「そうか……」とつぶやいた。

 ぺこりと頭を下げてから、足早に図書室に向かう。

 ふぅ。周りはわたくしがマティス殿下の誘いを断ったからざわついていた。きっと、『マーセル』がマティス殿下の誘いを断ることはなかったんでしょうね。

 図書室に入り、今日の授業の復習をした。必要そうな資料を集めて予習もする。マーセルは魔法が使えなかったのに、どうして彼女の身体に入ったわたくしは使えるのかしら? それについての資料も探してみたけれど、あまり参考になりそうな本はなかった。
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