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本編

お昼寝はしなきゃダメらしい

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「おいちいねぇ」

シェフの料理は見た目にインパクトが行き過ぎるが、味もとても美味しいのだ。
自分の顎の力で肉が噛み切れるのはシェフの下拵えのおかげだろう。
ただ、とても可愛い仕様に出来上がるのでちょっと引いてしまうだけだ。
しかも自分の分だけなのがいただけない。
同じ味付けの同じメニューなのに、自分の分だけファンシーに盛り付けられてしまうから恥ずかしいのだ。

「ファルシュターはいつもこれを食べてるのか?」

お爺さまは昨日の夕食の時もとても驚いていた。
昨日の夕食はお爺さまの好物のステーキだったのだが、自分があまり肉が得意ではない事を知っているシェフが自分用にシチューを作ってくれていた。
しかもパンではなくライス付きだったのだが、ライスで作られた猫がシチューのお風呂に入っているような盛り付けで登場したのだ。
お爺さまがすごい表情で二度見していたのを自分は見逃さなかった。

「シェフはルシーには可愛くて栄養のある料理を食べさせようと毎回頑張っているんですよ」

その頑張りで確かに順調に肉がついてきているので無駄では無いのだろう。

お昼ごはんを食べ終えると、自分は安定の昼寝の時間だ。
ただ、今日はせっかくのピクニックなので本当なら起きていたい。

「にいしゃま、おひるね、しなきゃ、ダメ?」
「水遊びもしたから、ちょっとだけでもお昼寝しよう。1時間したら起こしてあげる」

ギル兄様にそう言われてしまったら、しない訳にはいかないだろう。
そのままゴロンと横になろうと思ったのだが、虎と兄犬に挟まれもふもふの中で眠る事になった。
最初は熊の上でラッコのように寝かされそうだったのだが、さすがに辞退した。
どことなく熊は残念そうだったが、その体勢で眠れるほど神経は図太く無いのだ。

「にいしゃま、おてて…」

いつも1人でお昼寝をする時はぬいぐるみの手を握って寝ているのだが、お気に入りのぬいぐるみは今日は持ってきていない。
熊や虎が小さくなってくれれば抱きついて寝ても良いのだが、大きいままでは何処にも手が回らないだろう。
夜はいつもギル兄様とくっついて寝ているので、今回もギル兄様に手をお借りしようと思う。
ギル兄様は全身からマイナスイオンでもでているのか、近くにいるだけで安眠効果はバッチリだ。
ただ偶にアドレナリンの分泌も促してくるので、興奮して目が冴えてしまう事があるのだが、それはバレないように必死に隠している。

露見して一緒に眠れなくなるのは絶対に避けたい。
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