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本編

幻覚症状

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「シェフ!!ベクスト!!」

固まっていたセイバースさんは何故か大声でシェフとベクストを呼んでいる。
自分を凝視しているが、一定の距離を保とうと思っているのかこちらが近づくと同じだけ後ろに下がってしまう。
何故だ。
セイバースさんは、確かコロポックルではなく座敷童子派だった気はするが、ツノがお気に召さないのだろうか。

「あにょ…?」

だが、表情はまだ満面の笑みのままだ。
謎すぎて、ちょっと怖い。
混乱していると、呼ばれた2人が勢いよく走ってきた。

「何があった!?」
「ぼっちゃまに何かあったんですか!?」

いや、昼寝から目覚めただけで何も無いです。
シェフは魔力で動くハンドミキサーを、まるでチェーンソーの様にウィンウィンと鳴らしているし、ベクストに至ってはあの呪いの花人形を腰に抱きつかせている。
自分よりも2人に何があったのか聞きたいところだ。

「私は幻覚が見えているのかもしれません」

セイバースさんが視線を自分に向けたまま2人に話しかけているが、もし自分の事を言っているのであれば、幻覚ではなく本物のです。

「何を…えっ!?」
「ダメです。自分は泣きすぎて目が正常に機能してないみたいです」

やはりツノは大人には不人気なのだろうか。
お爺さまに会う前に確認しておいてよかったかもしれない。

「やはり、そうですか…。私の願望が見せる幻…。それならば、今!目に焼き付けておく必要がありますね」
「瞬きしている場合じゃないな」
「お二人にも見えているんですか!?」

3人が揃って凝視してくる。
シェフは本当に瞬きをしていない気がするのだが、目が乾燥して痛くなりそうで心配だ。

「3人とも、何を言っているの?大丈夫?」

ギル兄様が呆れた様に問いかけているが、3人には全く気にした様子がない。
3人揃ったからか、ちょっとずつ距離を詰めてくるのが面白い。
さっきまでは後退していたのに、ジリジリ近づいてくる。

「ギルバート様が、ファルぼっちゃまにそっくりな森の妖精さんをお抱きになっておられる。あぁ、この場に本物のぼっちゃまがいらっしゃったら、どれほどよかったでしょうか」

本物と言われても、自分の偽物には会った事はないのでそんな存在はいないのでは無いだろうか。
ドッペルゲンガーとかだったら怖すぎる。
だが、それよりも問題なのは森の妖精さん発言だ。
ギル兄様に抱っこされているのは間違いなく自分なのだが、森の妖精とはどういう意味だろう。
まさか、羽でも見えているのか。
心配をかけすぎてしまった為、本当に幻覚が見えているらしい。

どうしよう。
自分の所為だ。
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