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本編

幸せ

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2人で笑い合っていると、向かいあって座っている団長もニコニコしていた。
自分の足元には小さくなった熊と虎もいる。
昨日、森で目覚めた時には考えられない程の幸せな空間だと思う。

「ファル君は何か好きな食べ物はあるかい?」

この2日で口に入れた事があるのは、草と木の実。
団長にもらったジュースとハチミツ。
神が作りし飴と、お昼にもらったスープとこのクッキーだけだ。
どれが好きかと聞かれれば、もちろん飴一択だが、好きな食べ物と聞かれるとわからない。
この他の食べ物を覚えていないからだ。

「わかんにゃい。でも、にゃんでも、たべるよ」

そう、好き嫌いなど言ってはいけないのだ。

「……そうか。これから好きな物を見つけようね」
「ルシーは甘い物が好きそうだね。飴もクッキーもニコニコして食べてたし。僕は甘いのちょっと苦手だったけど、ルシーと一緒に食べるのは好きだよ」

ギル兄様、誤解です。
甘味が好きな訳では無いのです。
ニコニコしていたのはギル兄様にもらったからです。
ギル兄様から頂けるなら、あの苦い草でも笑顔で食べ切る自信があります。

それからすぐにルイは戻ってきたのだが、両手に荷物を抱えてきた。

「ファルは人気だな。コレは全部ファルにって獣達が取ってきたらしいぞ」

箱には草や木の実、花はもちろんだがキラキラ光る石や何かの骨が入っていた。
使い道はわからないが折角の好意なので受け取っておこう。
ただ、草や木の実はどうやら食べ物らしいので団長に渡しておく。

「だんちょ、これ、あげゆ。あさ、ぼくが、たべちゃたのと、いっちょ」
「ありがとうね。こんなにたくさん貰ってもいいの?」

たぶん自分が持っているよりも有効活用出来るだろう。
それに、この荷物を運ぶ手段がないのでなるべく減らしたいのだ。
折角貰ったものを置いていく事は出来ない。

花は綺麗に輪っかにまとまっていたので頭に乗せておく。
残りは光る石と、何かの骨だ。
そういえば、窓を壊していた事を思い出した。
この石で帳消しにならないだろうか。
光っているので、インテリアくらいにはなるだろう。

「だんちょ、これで、まど、なおゆ?」
「ファル君、コレはとても良い物だからずっとファル君が持ってなきゃダメだよ。そうだ、ちょっと待ってて」

団長は石を小さな巾着袋に入れてくれた。
それを紐で結び、首から下げてくれる。
おお、ありがたい。
コレで残りは骨だけなので、お屋敷に連れて行ってもらう間くらい手に持っていられるだろう。

ちょっと野性味が溢れるが仕方ない。

「ルシー、ソラがその骨で良い物作るからちょっと借りたいって言ってるよ」
「どじょ!」

願ってもない事です。
返却はいつでも大丈夫ですから、ゆっくり借りておいて下さい。

「ふふ。そのお花はかぶっていようか。可愛いからルシーにピッタリだよ」

自分に花が似合うとは思えないが、ギル兄様がそう仰るなら異存はないです。

枯れるまで毎日被っています。
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