74 / 195
本編
転移陣
しおりを挟む
「さあ、帰ろうね」
団長に促されて向かったのは、隊舎にある大きな一室だった。
床にファンタジックな模様が描かれているのがオシャレである。
部屋には自分とギル兄様、団長にルイ、それから熊、虎、鳥が全員大集合だ。
何故だ。
帰るのではなかったのか?
外に行かずわざわざ部屋を移動して獣達まで集める意味がわからない。
「ルシーはもしかして転移陣を知らないかな?」
自分があまりにもボーっと床を眺めていた所為か、ギル兄様が教えてくれた。
どうやらこの辺境領では転移陣なる物が至る所に設置されているらしい。
誰でも使用できる物から、特定の人しか動かす事が出来ない物まで色々あるそうだ。
団長は領主なのでお屋敷にも転移陣が設置されているが、普通は公共の施設に設置してある物を使い、緊急用に家に数枚、使い捨てタイプの簡易転移陣を用意している者が多いとの事。
設置タイプには石が嵌め込まれていて、そこに魔力を流しながら行き先を口にすれば到着するらしい。
因みに使い捨てタイプは行き先を記入する必要があると丁寧に教えてもらったが、はたして自分には魔力があるのだろうか。
今はギル兄様に抱っこしてもらっているが、いつか1人で使う時に発動しなかったら恥ずかしい。
意気揚々と行き先を叫んだのに、ポツンと取り残されたら辛すぎる。
「ぼく、ちゅかえる?」
「魔力の測定は5歳からだから今はまだ無理だね。ファル君がもう少し大きくなったら調べてみようね」
魔力が少なくて長距離の転移が出来ない人もいるらしいが、全く無い人はいないというので一安心だ。
実は魔法を見た時から自分も使ってみたいと思っていたんだ。
団長のように治癒魔法が使えたら、ギル兄様が怪我をした時に助ける事が出来るし、氷や炎が出せるのならギル兄様のピンチに颯爽と現れて敵を攻撃する。
カッコいい自分を想像してニヤけてしまった。
「ルシーは表情がクルクルして可愛いね」
今はまだ小さいので可愛いと言われてしまうが、身体を鍛えてムキムキになれば、ギル兄様もきっとカッコいいと褒めてくれる筈だ。
「ぼく、ムキムキなりゅ。がんばる」
「あはは。ムキムキのルシーも可愛いだろうね」
何故だ。
ムキムキは可愛くは無いと思う。
ムキムキで可愛いのならムッキムキを目指すしかないが、どれだけ時間がかかるのだろうか。
今日からまずは腹筋を鍛える事にしよう。
有事の際は獣も一緒に転移陣を使用して移動するが、通常は獣は各々で目的地へ向かうらしい。
走っていくのだろうか。
熊や虎は毎日、お屋敷から騎士団の隊舎まで移動している筈だ。
あんな巨大な獣が街中を走っていたら問題にならないのだろうか。
自分が目撃したら間違いなく腰を抜かすと思う。
それだけ獣が街に浸透しているのか、それともまさか転移陣なしで瞬間移動でもするのか。
なんとなくだが、熊や虎なら出来そうな気がする。
今度、ギル兄様か団長に聞いてみよう。
団長に促されて向かったのは、隊舎にある大きな一室だった。
床にファンタジックな模様が描かれているのがオシャレである。
部屋には自分とギル兄様、団長にルイ、それから熊、虎、鳥が全員大集合だ。
何故だ。
帰るのではなかったのか?
外に行かずわざわざ部屋を移動して獣達まで集める意味がわからない。
「ルシーはもしかして転移陣を知らないかな?」
自分があまりにもボーっと床を眺めていた所為か、ギル兄様が教えてくれた。
どうやらこの辺境領では転移陣なる物が至る所に設置されているらしい。
誰でも使用できる物から、特定の人しか動かす事が出来ない物まで色々あるそうだ。
団長は領主なのでお屋敷にも転移陣が設置されているが、普通は公共の施設に設置してある物を使い、緊急用に家に数枚、使い捨てタイプの簡易転移陣を用意している者が多いとの事。
設置タイプには石が嵌め込まれていて、そこに魔力を流しながら行き先を口にすれば到着するらしい。
因みに使い捨てタイプは行き先を記入する必要があると丁寧に教えてもらったが、はたして自分には魔力があるのだろうか。
今はギル兄様に抱っこしてもらっているが、いつか1人で使う時に発動しなかったら恥ずかしい。
意気揚々と行き先を叫んだのに、ポツンと取り残されたら辛すぎる。
「ぼく、ちゅかえる?」
「魔力の測定は5歳からだから今はまだ無理だね。ファル君がもう少し大きくなったら調べてみようね」
魔力が少なくて長距離の転移が出来ない人もいるらしいが、全く無い人はいないというので一安心だ。
実は魔法を見た時から自分も使ってみたいと思っていたんだ。
団長のように治癒魔法が使えたら、ギル兄様が怪我をした時に助ける事が出来るし、氷や炎が出せるのならギル兄様のピンチに颯爽と現れて敵を攻撃する。
カッコいい自分を想像してニヤけてしまった。
「ルシーは表情がクルクルして可愛いね」
今はまだ小さいので可愛いと言われてしまうが、身体を鍛えてムキムキになれば、ギル兄様もきっとカッコいいと褒めてくれる筈だ。
「ぼく、ムキムキなりゅ。がんばる」
「あはは。ムキムキのルシーも可愛いだろうね」
何故だ。
ムキムキは可愛くは無いと思う。
ムキムキで可愛いのならムッキムキを目指すしかないが、どれだけ時間がかかるのだろうか。
今日からまずは腹筋を鍛える事にしよう。
有事の際は獣も一緒に転移陣を使用して移動するが、通常は獣は各々で目的地へ向かうらしい。
走っていくのだろうか。
熊や虎は毎日、お屋敷から騎士団の隊舎まで移動している筈だ。
あんな巨大な獣が街中を走っていたら問題にならないのだろうか。
自分が目撃したら間違いなく腰を抜かすと思う。
それだけ獣が街に浸透しているのか、それともまさか転移陣なしで瞬間移動でもするのか。
なんとなくだが、熊や虎なら出来そうな気がする。
今度、ギル兄様か団長に聞いてみよう。
85
お気に入りに追加
3,375
あなたにおすすめの小説
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
帝国の皇太子に目を付けられた貧国おバカ王子の末路
珈琲きの子
BL
天使と謳われる貧国の王子ラベライト。中身はただのおっぱい好きなおバカな転生者だった。
しかし皆を虜にするような愛らしい外見から帝国の皇太子に目を付けられ、政略結婚により帝国の皇太子妃に迎え入れられる。
おバカなラベライトはそんなことも露知らず、世界最先端の技術を持つ帝国に住めることを喜ぶのだが……
マッチョ皇太子×外見天使なおバカ王子のアホエロ物語。
※半分無理矢理の快楽堕ちです。
食事届いたけど配達員のほうを食べました
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
なぜ自転車に乗る人はピチピチのエロい服を着ているのか?
そう思っていたところに、食事を届けにきたデリバリー配達員の男子大学生がピチピチのサイクルウェアを着ていた。イケメンな上に筋肉質でエロかったので、追加料金を払って、メシではなく彼を食べることにした。
俺の伴侶はどこにいる〜ゼロから始める領地改革 家臣なしとか意味分からん〜
琴音
BL
俺はなんでも適当にこなせる器用貧乏なために、逆に何にも打ち込めず二十歳になった。成人後五年、その間に番も見つけられずとうとう父上静かにぶちギレ。ならばと城にいても楽しくないし?番はほっとくと適当にの未来しかない。そんな時に勝手に見合いをぶち込まれ、逃げた。が、間抜けな俺は騎獣から落ちたようで自分から城に帰還状態。
ならば兄弟は優秀、俺次男!未開の地と化した領地を復活させてみようじゃないか!やる気になったはいいが………
ゆるゆる〜の未来の大陸南の猫族の小国のお話です。全く別の話でエリオスが領地開発に奮闘します。世界も先に進み状況の変化も。番も探しつつ……
世界はドナシアン王国建国より百年以上過ぎ、大陸はイアサント王国がまったりと支配する世界になっている。どの国もこの大陸の気質に合った獣人らしい生き方が出来る優しい世界で北から南の行き来も楽に出来る。農民すら才覚さえあれば商人にもなれるのだ。
気候は温暖で最南以外は砂漠もなく、過ごしやすく農家には適している。そして、この百年で獣人でも魅力を持つようになる。エリオス世代は魔力があるのが当たり前に過ごしている。
そんな世界に住むエリオスはどうやって領地を自分好みに開拓出来るのか。
※この物語だけで楽しめるようになっています。よろしくお願いします。
隠しキャラに転生したけど監禁なんて聞いてない!
かとらり。
BL
ある日不幸な事故に遭い、目が覚めたら姉にやらされていた乙女ゲームの隠しキャラのユキになっていた。
ユキは本編ゲームの主人公アザゼアのストーリーのクリアまで隠されるキャラ。
ということで、ユキは義兄に監禁され物理的に隠されていた。
監禁から解放されても、ゲームではユキは心中や凌辱、再監禁、共依存など、バッドエンドばかりが待っているキャラ…
それを知らないユキは無事にトゥルーエンドに行き着けるのか!?
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる