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貴族学院

エイデンsideアルの匂わせ

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「エイデン、色々言いたい事はあるけどこれだけは言っておく。…サミュエルを泣かせるな。」

いつになく真剣な表情で私にそう告げたのはアルだった。隣に座っていたマシューもキョトンとしている。私は眉を顰めてアルに一体何の事なのか尋ねた。

私をじっと見つめたアルは、一瞬苦し気な顔をして目を逸らして話し出した。


「私がサミュエルとお兄様契約出来れば良かったのかもしれないが、私たちは従兄弟同士だ。紛れもなくね。だから私はサミュエルにお前たちを早くから紹介したんだ。結局マシューがエドワードと契約したから、サミュエルは多分エイデンを選ぶ事になるだろう?

先週末、エドワードからお兄様契約の事を知って、サミュエルがかなり動揺していた様子だと私に話してくれた。私たちは小さな頃から貴族社会を見聞きしていて、無意識でも、意識的でもその手の事を受け入れる余地があったんだと思う。でもサミュエルは聡いけれど、その手の事や、貴族社会のあり様に慣れていない。

私やエドワードもあえて教えてこなかったのが、今になってサミュエルを困惑させている事に繋がってしまった。だから考え過ぎたサミュエルが、とんでもない事を言い出すんじゃないかって心配なんだよ。」


私はアルの心配ももっともだと思って、安心させる様に頷いて言った。

「アルの大事な従兄弟だ。…私はそれ以上の気持ちをサミュエルに感じているけどね。私の気持ちを知ったマシューが早くにお兄様候補から外れてくれたのには感謝している。
だから今更他の貴族令息にサミュエルのお兄様契約を譲る気は無いよ。…お前たちがどう考えているかは分からないが、私はサミュエルに本気なんだ。」


私は二人の顔が驚きで目を見開くのを、少し居心地悪く感じた。サミュエルにも伝えていないこの気持ちを親友二人に話してしまった事に少し照れもあったんだ。とは言え私はため息をついた。

「でも考えてもみてくれ。新学期でサミュエルは12歳。私は16歳。これは結構苦しい立場じゃないかな?私の忍耐を考えてくれ。」

すると二人は我慢できない様に笑い出して、マシューは言った。

「噂の深窓の令息サミュエルのお兄様になるんだ。それくらいの我慢はしょうがないんじゃないか?」

アルもまたニヤニヤして嬉し気に言った。

「そうだな。まぁお兄様契約は一年間だ。せいぜい今までの契約者に恨まれない様に気遣ってやれ。…頼むな、エイデン。」

そう言ったアルの顔はもう笑っていなかった。









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