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僕は貴族令息

お茶会

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「僕はほんの数ヶ月前まで、ベーリン街のサミュとしてこっそり街に紛れていたんです。僕は物心ついた頃から離れに閉じ込められていたので、全てが新鮮でした。男爵も僕が伏せってると思い込んでくれていたので出来たんですけどね?ふふ。

街の子供のリーダーが、不慣れな僕の事を放って置けなかったのか面倒を見てくれたので、困った事は何も無くって。今でも優しくしてくれたお店の人達や子供達の事を思い出すと、楽しかった事しか思い浮かばないんです。


…どちらかと言うと、貴族社会の方が僕には怖く感じます。きっと色々失敗しちゃうんじゃないかなって。

侯爵様には僕が正当なケルビーノ伯爵を継ぐものだと言われましたけど、一度は捨てようとしていたくらいですから、貴族の立場に元々執着は無いんです。もちろん僕のことを考えて下さっているのは重々承知していますけどね?」

アルバート兄様から今までの話を聞かせてくれと言われて、僕は街の子供時代の話をした。話をしていて思い出したのは、6歳からの僕は全然不幸ではなかったって事だ。そう思って微笑むと、エドワードが僕の頭を撫でて言った。


「サミュエルは、8歳で逞しく街中を走り回っていたんだろ?それって貴族の子供には無い行動力だよ。もちろん今だって、サミュエルが貴族の子供として何か足りないとは思った事ないけどね。

俺はサミュエルがそのまま街の子供にならなくて良かったと思ってる。サミュエルが来てから楽しいしね。」

アルバート兄様は微笑み合っている僕たちを優しく見つめて、興味深そうに尋ねた。


「そのベーリン街で、サミュエルの面倒を見てくれたリーダーってのはどんな人なんだい?」

兄様に聞かれて、僕はロッキンを思い浮かべた。

「ロッキンは丁度兄様と同じ歳で、琥珀色の目がキラキラしたとてもカッコいい青年でした。人望があって、僕が街に行くと手を繋いでくれて、ずっと側で面倒を見てくれたんです。

僕はロッキンの家の小売店のお手伝いもしたんですよ。お別れを言えなかったから、いつかまた会いに行きたいです。」


僕がそう言うと、何故か皆が顔を見合わせてうな頷き合っていた。やっぱりあまり街の子供生活について話すのは良くなかっただろうか。僕が心配になってエドワードを見上げると、エドワードは僕の手を握って微笑んで安心させてくれた。

黙って聞いていたエイデンが、僕の手紙を王都の店のショーウィンドウで見たと話してくれた。

「そうなんですか?Sシリーズになっていたなんて知らなかったです。エイデン様はご姉妹がいらっしゃるんですね。きっと随分賑やかなんでしょうね。でも実は僕、女の子は苦手なんです。


街でも、女の子に随分意地悪されて困ってしまって。ロッキンを独り占めしていたのが良くなかったのかもしれません。それに街の女の子は強いですけど、きっと貴族の御令嬢は優しくて可愛らしいんでしょう?」

そんな僕の言葉に皆が顔を見合わせて苦笑したのを見て、僕が色々察してそれ以上発言を控えたのは良い判断だったよね?









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