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教育期間

新学期前の休暇

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エドワードがもうすぐアルバート兄様の通う貴族学院へと入学する。ケビン先生に習った貴族のしきたりによると、10歳の社交界デビューの半年後に貴族学院の新学期が始まるみたいだ。

ただその直前に、学年が変わる在校生も一ヶ月半ほどの長期休暇があるので、その間に領地へ出掛けたり、旅行へ行ったり、友人達と会ったりと楽しい時間を過ごすらしい。


ケビン先生曰くは、僕の存在については公に出来ないので、いっそヴィレスク侯爵領へと出かけてしまった方が良いのではないかと侯爵に提案したらしい。

ケルビーノ領とヴィレスク領は、王都を挟んで反対方向なので確かにここ、王都で潜伏しているよりは自由に出歩けるかもしれない。僕は、ここヴィレスク侯爵家の王都の屋敷が広大すぎて気づいていなかったけれど、そう言えば一歩もこの敷地から出ていなかった。


出られるとなると、俄然ベーリン街のロッキン達の様子が気になったけれど、べーリン街は王都の中でもケルビーノ伯爵家に近い街なので顔を出すわけにはいけなかった。

僕は机に突っ伏して頬を、ひんやりする机に乗せて呟いた。

「海とか、山とか、王都とは全然違う場所へ行きたいな…。」


すると側で一緒に学院入学準備の予習をしていたエドワードが、顔を上げて言った。

「行くはずだぞ?兄上は学院、僕はデビューがあったから、今まで領地には戻れなかったけどね。母上と弟のイリスが待っているから絶対行かなくちゃ。

領地には色々な動物も居るし、海は無いけど山とか、綺麗な小川とか結構冒険できるし、星を眺めながら眠るのも素敵だ。今まで父上は外交で領地へ行ってもトンボ帰りだったけど、帰国したってことは一緒に、結構長く行けるんじゃ無いかな。

兄上もきっと一緒に行けるさ。」


僕は部屋に飾ってある侯爵家一家の肖像画を見上げた。確かにアルバート兄様達から弟の存在は聞いていたけど、この綺麗な侯爵夫人と小ちゃい侯爵夫人似の5歳ぐらいの男の子が領地にいるんだ。

僕はにっこりと微笑んでエドワードに言った。

「エドワードも楽しみだろう?だって侯爵夫人に会えるんだから。」

僕がそう言うと、エドワードは顔を赤らめてそっぽを向くと別にとか言っていたけれど、よく考えたらエドワードはまだ10歳の男の子なんだ。まだ母親が恋しい年頃だよね。


僕はもう一度家族の肖像画を見上げて、少し胸が痛いのはサミュエルの寂しさなのかなと思ったんだ。
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