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第13話 事件
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どのくらいまでなら助かるのか? どの程度なら致命傷なのか?
俺にもそこのラインは引けていない。
とにかく俺の自己修復機能は規格外だ。
時間さえあれば火傷の傷を癒し、切り傷なども完全に塞いでしまう。
しかし万能ではない。そう、今言った時間があればというのがネックなのだ。
時間があれば即死以外は何とかなりそうなものだが回復までには幾分時間がかかる。
重い傷なら半日は回復に費やさなければならない。
もちろん自分の回復が追いつかない場合は死に至っても不思議ではないだろう。
ある程度慣れたとはいえ痛みもある。その痛みで気を失うこともしばしばだ。
そんな修業の日々が過ぎる中、事件が起こった。
肉屋のブラウンが若い者を連れて狩りに出たまま戻らないという。
日が沈むまで待ったがやはり一向に戻ってくる気配がない。
「まさかオルフェとディーパまでもが帰らんとは。」
「しかしあいつらに何かあったとは考えられん。かなりの腕前だぞ。」
オルフェとディーパとは俺がこの村に初めて来たとき村人とは離れて俺のことを睨んでいた二人の事だ。
あれからも俺を見るたび睨んでくる二人だが、ブラウンと狩りに出かけまだ戻ってないという。
「こうしてても始まらん。捜索隊を結成するんだ。女子供は村周辺を、男たちは3~4人で隊を組んでブラウンたちがいつも回っている狩りルートを探索するんだ。」
もう日も沈みかけてる。
じき夜が来るだろう。
都会と違いこの村は夜になると漆黒の世界が広がる。
嫌な予感がする。不謹慎ながらそんな事ばかり考えていた。
「だめだだめだ!! お前は村の周辺を探索しろ。勝手は許さんぞ。」
ダレンが大きな声を出すのですぐに皆がその声の方を見た。
「なんでよお父さん! 少しでも数は多い方がいい。今は3人の命がかかってるのよ。」
ダレンの声をさらに大きな声でまくし立てているアンナがいた。
「ばかもん。それでまた2次災害、3次災害と被害が広がるんだ。ルールに従え。」
「そうやってすぐに女子供って言葉を使う。それにヨーハおばさんは捜索隊に加わってるじゃない!」
「あいつは別だ。男と変わらん。」
「ダレン。誰が男と変わらないんだって?」
横で話を聞いていたヨーハがピクピクと額に青筋を立てた笑顔でダレンに詰め寄る。
「むぅ、男と変わらないというのは女ではないという意味ではなくてだな......」
困惑した表情をするダレン。
あのなりで詰め寄られたら誰だってそうなるわな。
「別に話くらいは聞いておやりよ。」
ヨーハの言葉にダレンはジロリと「余計な事を。」というような目で答える。
「お願いお父さん。嫌な予感がするの。なんて言っていいかわからないけど......」
「おい! なんてこと言うんだアンナ! こんな時に。」
「ごめんなさい。そういう意味じゃないの。うまく言えないだけで......そんな気がするっていうか.....」
アンナの言葉に驚いた。
確かにこんな時に嫌な予感というのは言葉が悪い。
だけど言いたいことはわかる。
ブラウンたちに何かあったという嫌な予感じゃない。
何かが起こっているという嫌な予感だと思う。
俺も同じ感覚があるし。
「ダレン。一刻を争うのじゃろ。その娘はわしらが預かる。はよ村のもんを指揮しろ。」
横からピョコっと話の間を割って入ってきたバアさん。
しわがれた汚い声だが変な声だが、妙な緊張感がある。
「しかしマルス様。マルス様は捜索隊の中に入っています。そこにアンナを入れるというのは......」
「お前は娘に甘すぎるぞ。この娘は十分に役に立つ。役に立つなら役に立たせろ。」
「しかし......うぅぅぅぅ~。」
苦しみのうめき声を上げるダレン。
さらに追い打ちとババアは言葉を続ける。
「お前の娘への愛情はこの時代でいつかあの子を苦しめるぞ。自分の判断で生きれないことがこの世界ではいかに絶望的事かわからぬお前ではあるまい。」
厳しい一言にたまらずダレンは、
う~、わかりましたよ! 娘をお願いします! アンナ、マルス様の邪魔だけはするなよ!」
ダレンはそういうと足をドスドス鳴らしながらいかにも起こった素振りで村人の待つところへ行ってしまった。
こんな世界だから、みんなが言葉にしているがどんな世界なんだろう。
今回の事件を除けばとても平和な世界に感じるのだが。
ダレンが去った背中を目で追いかけた後、ヨーハは やれやれ とアンナに向き直り、
「こんな時にわがままとは感心しないね。でもアンナがそこまで言うんだ。何か訳があるんだろ?」
「わかりません......」
「わからないってあんた! 今がどれだけ大変な事態かわかってるのかい!?」
「わかっています。きっと何かが起こっています。確信がないから一緒に行きたいんです。この感覚覚えがあるんです。」
「なんだいそりゃ?」
「おい娘っ子。何か感じるのか?」
「マルス様、はい....でもここからだと薄くしか、」
「ほう、という事は、おい小僧。お主も感じてるんじゃろ?」
「へっ!?」
急に話を振るから変な声出ちゃった。
「うーん、まぁまぁかな。たぶんおんなじ感じ、あの山からだろ。」
「そうです! あの山から感じます!」
俺とアンナは連なる山でも最も高い山に視線を置く。
「おいおい、あの山は狩りのコースから離れてるぜ。大丈夫なのかい?」
ヨーハは困り顔で俺たちに聞いてくる。
確信は持てないけど、今も感じてるこの感覚。
「「うん。」」
二人で同時にヨーハにうなずく。
「うむ。面白いではないか。それでは小僧、ヨーハ、アンナ、わしで隊を組む。」
うわわ。俺何か感じるって言っただけなのに、どんどん話が進んでいってる。
俺大丈夫かな? たしかに修行して強くなってるけど、捜索とか初めてだぞ。
「まずはあの山のふもとまで行くぞい。時間は一刻を争う。スピードを出していくからの、着いてこれなんだらあきらめて帰るのじゃぞ。」
「はい。」
「あぁ。」
「へっ!?」
あれ? なんか俺だけ話についていけてない。
これからどうするんだっけ?
「ではふもとでの。散じゃ!!」
ババアのその言葉とともにみんなが一直線に山の方へ走り出す。
風のようなスピードで去っていくみんな。話とともに置いて行かれた俺は数秒ポカンとその光景を見つめたのち、
「うおい!! 置いていくな!!」
そう言って急いで3人の後を追いかけた。
アンナってめっちゃ足早くない?
走り始めて20分ほどで遠くに見えていた山のふもとにたどり着いた。
車より早いと思う。今の俺。
しかし驚くべきはアンナとヨーハだ。
さすがにこのスピードに息はきれているもののちゃんと着いてくることができている。
もちろん俺はこんな移動は毎日経験しているので息はきれてないし疲れも全くないけど。
そしてさらに驚くべきは、
「びゅ~びゅ~、ウオエ!! ゼ―ーゼ――ウオオエエ!!」
「なんでババアが息切れてんだよ!!」
ババアの顔は青白く、完全に酸欠状態に陥っているみたいだ。
「みんな ぜぇーぜぇー......結構早カフッ...オエェェ......かったから...ビュ~ビュ~......調子乗っちゃった.......ウオオオェェェエエ!!」
「息のキレ方 多彩か!!」
着いてこれなかったら置いてくぞ見たいなこと言ってたのに。
このババアは世の中を舐めてる。きっと。
「マルス様、大丈夫かい? 少し休んでからでもあたしはいいよ。」
「そうですマルス様。マルス様に何かあっては大変です。」
みんな優しいんだな。
でもババアは 一刻を争う事態じゃ!! とか啖呵切った手前、俺たちにそんな弱みを見せられる性格じゃないんだよ。ほらみんな、早く準備して先へ、
「そうかいの、それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわい。」
「おめぇはプライドってもんがないんかい!!」
舐めてる。世の中を舐めてるぞ、このババア。
ババアは近くの岩に腰を下ろし、息を整えた後、さっきまでのヨボヨボの死にかけた顔から急にまた威厳のある顔つきに戻して、
「ここから探索は2手に分かれる。小僧とヨーハ、わしとアンナがいいじゃろう。おぬしら二人でないとその "何か" というのは感じられんからの。」
「おい、まじかよ!! なんか怪物とかに襲われたらどうすんだよ。俺ヨーハを守りながらとか自信ないぜ。」
「ふふ、あたしも舐められたもんだね。あんたに守ってもらうだって?」
クスクス笑いながらズイっと俺にその巨体を近づけて圧力をかけてくる。
おぉ、と少し気圧されたがそれでも危険なのには変わりない。
「おい。ちょっと待てよ。魔導士とそうじゃない人は肉体的な性能が違い過ぎるんだよ。アンナからも何か言ってやってくれよ。俺一人じゃヨーハを守り切れないって。」
アンナもフフフと笑いっている。
「救世主様、ヨーハおばさんなら大丈夫ですよ。心配ご無用です。」
なぜか自慢げに言うアンナ。
「何を勘違いしておるのか知らんが、この中で一番弱いのはお主じゃよ。ヨーハはお主よりはるかに強い。アンナもそうじゃがこのヨーハも元魔術師じゃ。」
「えっ!! そうなの? あぁ、だからあのスピードにもついてこれたんだ。」
「バカじゃな、お主は。当り前じゃろ。普通の人間があのスピードについてこれたらそれこそバケモンじゃ。お主、感が良かったり悪かったりと変な奴じゃの。」
「おめぇが変な奴っていうな!!」
「まぁまぁ、救世主様。安心しなよ。これでも昔はそこそこ名前の知れたもんだったんだよ。あたしはね。」
そうなのか。確かにこの体で弱いなんて考えられないわな。よく考えるとめっちゃ強そう。
でもそれなら俺がそこまで不安を覚える必要はないって事だよな。
「なんだ先言ってくれよ。俺てっきり頑張らないとダメなのかなって思っちゃったよ。守りながら戦ってさ。でもそれなら安心だわ。ヨーハ、俺の事しっかり守ってね。俺疲れるの嫌いだから基本的に戦闘は任せるわ。」
その言葉に3人は一瞬ポカーンとした顔で無言になる。
「......お主、プライドってもんがないのか......」
ババアは頭を抱えて言ってる。
ヨーハが苦笑い浮かべながら 「マルス様、任されたよ。」とか言ってる。頼もしい。
アンナはフフフと笑いが出るのを堪えている。
俺、なんか変な事言ったかな?
俺にもそこのラインは引けていない。
とにかく俺の自己修復機能は規格外だ。
時間さえあれば火傷の傷を癒し、切り傷なども完全に塞いでしまう。
しかし万能ではない。そう、今言った時間があればというのがネックなのだ。
時間があれば即死以外は何とかなりそうなものだが回復までには幾分時間がかかる。
重い傷なら半日は回復に費やさなければならない。
もちろん自分の回復が追いつかない場合は死に至っても不思議ではないだろう。
ある程度慣れたとはいえ痛みもある。その痛みで気を失うこともしばしばだ。
そんな修業の日々が過ぎる中、事件が起こった。
肉屋のブラウンが若い者を連れて狩りに出たまま戻らないという。
日が沈むまで待ったがやはり一向に戻ってくる気配がない。
「まさかオルフェとディーパまでもが帰らんとは。」
「しかしあいつらに何かあったとは考えられん。かなりの腕前だぞ。」
オルフェとディーパとは俺がこの村に初めて来たとき村人とは離れて俺のことを睨んでいた二人の事だ。
あれからも俺を見るたび睨んでくる二人だが、ブラウンと狩りに出かけまだ戻ってないという。
「こうしてても始まらん。捜索隊を結成するんだ。女子供は村周辺を、男たちは3~4人で隊を組んでブラウンたちがいつも回っている狩りルートを探索するんだ。」
もう日も沈みかけてる。
じき夜が来るだろう。
都会と違いこの村は夜になると漆黒の世界が広がる。
嫌な予感がする。不謹慎ながらそんな事ばかり考えていた。
「だめだだめだ!! お前は村の周辺を探索しろ。勝手は許さんぞ。」
ダレンが大きな声を出すのですぐに皆がその声の方を見た。
「なんでよお父さん! 少しでも数は多い方がいい。今は3人の命がかかってるのよ。」
ダレンの声をさらに大きな声でまくし立てているアンナがいた。
「ばかもん。それでまた2次災害、3次災害と被害が広がるんだ。ルールに従え。」
「そうやってすぐに女子供って言葉を使う。それにヨーハおばさんは捜索隊に加わってるじゃない!」
「あいつは別だ。男と変わらん。」
「ダレン。誰が男と変わらないんだって?」
横で話を聞いていたヨーハがピクピクと額に青筋を立てた笑顔でダレンに詰め寄る。
「むぅ、男と変わらないというのは女ではないという意味ではなくてだな......」
困惑した表情をするダレン。
あのなりで詰め寄られたら誰だってそうなるわな。
「別に話くらいは聞いておやりよ。」
ヨーハの言葉にダレンはジロリと「余計な事を。」というような目で答える。
「お願いお父さん。嫌な予感がするの。なんて言っていいかわからないけど......」
「おい! なんてこと言うんだアンナ! こんな時に。」
「ごめんなさい。そういう意味じゃないの。うまく言えないだけで......そんな気がするっていうか.....」
アンナの言葉に驚いた。
確かにこんな時に嫌な予感というのは言葉が悪い。
だけど言いたいことはわかる。
ブラウンたちに何かあったという嫌な予感じゃない。
何かが起こっているという嫌な予感だと思う。
俺も同じ感覚があるし。
「ダレン。一刻を争うのじゃろ。その娘はわしらが預かる。はよ村のもんを指揮しろ。」
横からピョコっと話の間を割って入ってきたバアさん。
しわがれた汚い声だが変な声だが、妙な緊張感がある。
「しかしマルス様。マルス様は捜索隊の中に入っています。そこにアンナを入れるというのは......」
「お前は娘に甘すぎるぞ。この娘は十分に役に立つ。役に立つなら役に立たせろ。」
「しかし......うぅぅぅぅ~。」
苦しみのうめき声を上げるダレン。
さらに追い打ちとババアは言葉を続ける。
「お前の娘への愛情はこの時代でいつかあの子を苦しめるぞ。自分の判断で生きれないことがこの世界ではいかに絶望的事かわからぬお前ではあるまい。」
厳しい一言にたまらずダレンは、
う~、わかりましたよ! 娘をお願いします! アンナ、マルス様の邪魔だけはするなよ!」
ダレンはそういうと足をドスドス鳴らしながらいかにも起こった素振りで村人の待つところへ行ってしまった。
こんな世界だから、みんなが言葉にしているがどんな世界なんだろう。
今回の事件を除けばとても平和な世界に感じるのだが。
ダレンが去った背中を目で追いかけた後、ヨーハは やれやれ とアンナに向き直り、
「こんな時にわがままとは感心しないね。でもアンナがそこまで言うんだ。何か訳があるんだろ?」
「わかりません......」
「わからないってあんた! 今がどれだけ大変な事態かわかってるのかい!?」
「わかっています。きっと何かが起こっています。確信がないから一緒に行きたいんです。この感覚覚えがあるんです。」
「なんだいそりゃ?」
「おい娘っ子。何か感じるのか?」
「マルス様、はい....でもここからだと薄くしか、」
「ほう、という事は、おい小僧。お主も感じてるんじゃろ?」
「へっ!?」
急に話を振るから変な声出ちゃった。
「うーん、まぁまぁかな。たぶんおんなじ感じ、あの山からだろ。」
「そうです! あの山から感じます!」
俺とアンナは連なる山でも最も高い山に視線を置く。
「おいおい、あの山は狩りのコースから離れてるぜ。大丈夫なのかい?」
ヨーハは困り顔で俺たちに聞いてくる。
確信は持てないけど、今も感じてるこの感覚。
「「うん。」」
二人で同時にヨーハにうなずく。
「うむ。面白いではないか。それでは小僧、ヨーハ、アンナ、わしで隊を組む。」
うわわ。俺何か感じるって言っただけなのに、どんどん話が進んでいってる。
俺大丈夫かな? たしかに修行して強くなってるけど、捜索とか初めてだぞ。
「まずはあの山のふもとまで行くぞい。時間は一刻を争う。スピードを出していくからの、着いてこれなんだらあきらめて帰るのじゃぞ。」
「はい。」
「あぁ。」
「へっ!?」
あれ? なんか俺だけ話についていけてない。
これからどうするんだっけ?
「ではふもとでの。散じゃ!!」
ババアのその言葉とともにみんなが一直線に山の方へ走り出す。
風のようなスピードで去っていくみんな。話とともに置いて行かれた俺は数秒ポカンとその光景を見つめたのち、
「うおい!! 置いていくな!!」
そう言って急いで3人の後を追いかけた。
アンナってめっちゃ足早くない?
走り始めて20分ほどで遠くに見えていた山のふもとにたどり着いた。
車より早いと思う。今の俺。
しかし驚くべきはアンナとヨーハだ。
さすがにこのスピードに息はきれているもののちゃんと着いてくることができている。
もちろん俺はこんな移動は毎日経験しているので息はきれてないし疲れも全くないけど。
そしてさらに驚くべきは、
「びゅ~びゅ~、ウオエ!! ゼ―ーゼ――ウオオエエ!!」
「なんでババアが息切れてんだよ!!」
ババアの顔は青白く、完全に酸欠状態に陥っているみたいだ。
「みんな ぜぇーぜぇー......結構早カフッ...オエェェ......かったから...ビュ~ビュ~......調子乗っちゃった.......ウオオオェェェエエ!!」
「息のキレ方 多彩か!!」
着いてこれなかったら置いてくぞ見たいなこと言ってたのに。
このババアは世の中を舐めてる。きっと。
「マルス様、大丈夫かい? 少し休んでからでもあたしはいいよ。」
「そうですマルス様。マルス様に何かあっては大変です。」
みんな優しいんだな。
でもババアは 一刻を争う事態じゃ!! とか啖呵切った手前、俺たちにそんな弱みを見せられる性格じゃないんだよ。ほらみんな、早く準備して先へ、
「そうかいの、それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわい。」
「おめぇはプライドってもんがないんかい!!」
舐めてる。世の中を舐めてるぞ、このババア。
ババアは近くの岩に腰を下ろし、息を整えた後、さっきまでのヨボヨボの死にかけた顔から急にまた威厳のある顔つきに戻して、
「ここから探索は2手に分かれる。小僧とヨーハ、わしとアンナがいいじゃろう。おぬしら二人でないとその "何か" というのは感じられんからの。」
「おい、まじかよ!! なんか怪物とかに襲われたらどうすんだよ。俺ヨーハを守りながらとか自信ないぜ。」
「ふふ、あたしも舐められたもんだね。あんたに守ってもらうだって?」
クスクス笑いながらズイっと俺にその巨体を近づけて圧力をかけてくる。
おぉ、と少し気圧されたがそれでも危険なのには変わりない。
「おい。ちょっと待てよ。魔導士とそうじゃない人は肉体的な性能が違い過ぎるんだよ。アンナからも何か言ってやってくれよ。俺一人じゃヨーハを守り切れないって。」
アンナもフフフと笑いっている。
「救世主様、ヨーハおばさんなら大丈夫ですよ。心配ご無用です。」
なぜか自慢げに言うアンナ。
「何を勘違いしておるのか知らんが、この中で一番弱いのはお主じゃよ。ヨーハはお主よりはるかに強い。アンナもそうじゃがこのヨーハも元魔術師じゃ。」
「えっ!! そうなの? あぁ、だからあのスピードにもついてこれたんだ。」
「バカじゃな、お主は。当り前じゃろ。普通の人間があのスピードについてこれたらそれこそバケモンじゃ。お主、感が良かったり悪かったりと変な奴じゃの。」
「おめぇが変な奴っていうな!!」
「まぁまぁ、救世主様。安心しなよ。これでも昔はそこそこ名前の知れたもんだったんだよ。あたしはね。」
そうなのか。確かにこの体で弱いなんて考えられないわな。よく考えるとめっちゃ強そう。
でもそれなら俺がそこまで不安を覚える必要はないって事だよな。
「なんだ先言ってくれよ。俺てっきり頑張らないとダメなのかなって思っちゃったよ。守りながら戦ってさ。でもそれなら安心だわ。ヨーハ、俺の事しっかり守ってね。俺疲れるの嫌いだから基本的に戦闘は任せるわ。」
その言葉に3人は一瞬ポカーンとした顔で無言になる。
「......お主、プライドってもんがないのか......」
ババアは頭を抱えて言ってる。
ヨーハが苦笑い浮かべながら 「マルス様、任されたよ。」とか言ってる。頼もしい。
アンナはフフフと笑いが出るのを堪えている。
俺、なんか変な事言ったかな?
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