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2章

5話

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「いやっ、やめてぇぇぇ!!」

スミノフの手が胸に迫る……が

『auto REFLECTION』

1度雅から手を離してしまった為、悪意的意志を持ったスミノフの接触は反射されてしまう

「な、なんだ?どうして触れないんだ」

何度雅の胸に手を伸ばしても、オートリフレクションで阻まれる

スミノフの魔の手は阻めても、両手を封じられみやビームも撃てず、防戦一方に変わりはない

(どうすれば……)

目を閉じ考える

こんな時クリスタルならどうするんだろう

こんな時フリーダムならどうするんだろう

こんな時リンメイならどうするんだろう

皆の顔が走馬灯のように駆け巡る

『こ、これは!?』

「凄く胸が熱い、感じるよ」

「おお、やっとその気になってくれたんだね雅!」

勘違いしたスミノフはガッツポーズしている

『雅ちゃん!新しいスキル獲得だ!』

「うん!ソウルユニゾン!!フリーダム!!」

新たに獲得したスキル名を叫ぶと、雅の体が白い光に包まれる

「次はなんだよぉ!」


・新スキル【ソウルユニゾン】
仲間を信じる心が、仲間の心と共鳴し
一時的に仲間の能力を得ることが出来るスキル


光が収まると、白い髪に青い瞳、機械の腕と脚に、ボディースーツを身に纏う、フリーダムを模した姿へと変貌した



「ふんっ!」

押さえつけられていた手を振りほどくと、スミノフは尻もちをついた

「展開!!」

雅の腕に装甲が展開されていき、右腕が銃口の形状をなす

「みやビーム!!」

銃口に紫色の粒子状エネルギーが溜まっていき、スミノフ目掛けて放つ

「あがっ……」

腕から放たれたみやビームは、スミノフの顔のすぐ側の地面に着弾していた

『気絶しちゃったみたいだね』

「うん、これに懲りてもう悪いことしなくなるといいんだけど」

ユニゾン状態を解き元の姿に戻った雅

「ギルドに報告に行こっか!」

『雅ちゃん、ちょっと待って』

雅が立ち止まると、洞窟の奥から微かに声が聞こえてくるのが分かった

「ステちゃん、これってもしかして……?」

『そのもしかしてみたいだ』

微かに聞こえていた声は段々と近くなり、洞窟からその声の主が姿を現す

『ゴブリンキングだ!』

さっきまで闘っていたゴブリンとは比べ物にならない大きさの、王冠を頭に乗せたゴブリンキング

「ステちゃん、いくよ」

ゴブリンキングに身構えたその時

「アクアスラスト!」
「回転……!」

聞き覚えのある声と技がゴブリンキングを急襲した

「雅ー!大丈夫アルかー!」

後方から手を振り走る寄るリンメイ

「雅さん遅くなりました」
「加勢に参ったぞ」

クリスタル、フリーダムも駆けつけてくれた

「みんな!来てくれたんですか!」

仲間の顔を見渡し満面の笑みを浮かべる雅、安心したのも束の間、ゴブリンキングが立ち上がり雄叫びを上げる

「みなさん、やりますよー!」

4人が横並び、マスターピースの初陣が始まる

フリーダムが跳躍、リンメイが駆け出す

「アクアスラスト!」

突撃するリンメイに斬りかからんとする腕に、水の剣を突き刺すクリスタル

「ナイスカバー!アル!」

両手に持った2本のナイフをゴブリンキングの両目目掛けて投げるリンメイ

「グガギッ……」

見事命中したナイフに顔を押さえながら、もがき苦しむゴブリンキング

「素晴らしい連携だ」

フリーダムが上空から急速落下し、拳を撃ち込むと、ゴブリンキングの頭が地面にめり込む

『雅ちゃん!今だ!』

「うん!みやビーム!!」

無防備なゴブリンキングに、禍々しいビームが直撃し爆散

初戦闘とは思えない連携を見せたマスターピース一行は、ハイタッチで勝利を祝い、ギルドへの帰路につく

《》
ギルドへ報告を済ませ、報酬と【チーム・勇者】3人の懸賞金を受け取った一行は宿へと戻っていた(チーム・勇者は指名手配中で懸賞金が掛けられていた)

それぞれの報告会を兼ねた、クエストの土産話に花を咲かせ宿の食事を楽しむ

「3人は変な男にまで邪魔されて大変だったアルなぁ」

チーム勇者3人の愚行に呆れるリンメイ

「リンメイさんは特に変わったことはなかったんですか?」

「へ?あ、ああ、何の変哲もない下水道調査だったネ」

「それなら良かった、ですけど」

一瞬焦った様子のリンメイを不思議に思ったが、言及はしなかった

食事を終え、露天風呂に入り、床に就くという宿ルーティンをこなし4人は体を休めた


翌日、クエスト受注の為にギルドに訪れると、受付のお姉さんが、待ってましたと言わんばかりに声を掛けてきた

「お待ちしてました、先程緊急のクエストが入ってきたんですが、皆さんにお願い出来ませんか?」

受付のお姉さんに渡された、クエストボードを確認するマスターピース一行

「海の魔物軍団を討伐せよ……ですか?」

「はい、ここから馬車で2時間程の所にある【レイ浜辺】という場所に、魔物の大群が住み着いてしまったようなんです」

受付のお姉さんによれば、1週間ほど前から【レイ浜辺】に魔物による被害が頻発しており、浜辺近くの【レイギルド】の冒険者たちが何度か派遣されたものの、全て失敗に終わっているとの事

「話は分かりましたが、何故私たちなのでしょうか?」

「今回浜辺に被害を及ぼしているのはギルド未登録の魔物だそうで、並大抵の冒険者では歯が立たないと判断し、皆さんにお声掛けさせて頂きました」

初日にギルドの課題を解決し、2日目には盗賊一味、怪鳥、ゴブリンキングを倒した化け物チームに白羽の矢が立ったようだ

ギルドが困っているクエストの為、報酬も中々の高額設定で断る理由はない

「分かりました!私たちマスターピースに任せてください!」

クエストを受注した一行は【レイ浜辺】へと向かう為馬車に乗り込んだ
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