異世界転移ってなんですか？〜最強スキルを手に入れたJKが、魔王を倒す旅に出るようです〜

2章

4話

《リンメイside》

｢お前はここで待ってるアル！｣

自身の馬をリードロープで繋ぎ、下水道へと降りていく

下水道内は、白いモヤのようなものがかかり、視界が悪くなっていた

｢嫌な予感ビンビンするネ…｣

今回のクエストでは、最近多発する家庭の水道トラブルの原因を突き止めること。内容としては初心者向けではあるが、下水道の雰囲気の悪さが、単なる下水道調査では済まないことを感じさせる

｢あっちの方がモヤが濃くなってるヨ｣

モヤが濃くなる方へと歩みを進めていくと、進行方向に、天井を這う巨大な黒い蜘蛛が居た

｢な、なんでシャドウスパイダーがこんな所にいるアルか！？｣

魔物にはそれぞれ生息地がある(怪鳥なら山岳エリア、ゴブリンなら森林エリア）だが、本来ルルノアにしか生息しないシャドウスパイダーの出現に、リンメイは驚いたのだ

驚嘆するリンメイを発見したシャドウスパイダーが、球体状の蜘蛛糸をリンメイ目掛け発射

リンメイは、攻撃の軌道上から体を逸らし攻撃を躱す

｢迷てる暇ないネ……｣

シャドウスパイダーに向かい走り出し、アイテムボックスからナイフを装備する

｢ホワチャー！｣

手に持ったナイフをシャドウスパイダー目掛け投げつける

｢シャ？｣

カキンッと鉄と鉄がぶつかる音が鳴り、投げたナイフが弾かれる

｢やっぱ硬いアルな……｣

シャドウスパイダーが体を回転させながら、天井から地面に降り、蜘蛛の巣状の糸を吐き出す

狭い下水道内では、すり抜けるスペースは無く、走り込んでいたリンメイに絡みつく

｢ぬあっ！？｣

絡みついた糸がリンメイを地面に拘束し、カサカサと耳障りな足音をさせてシャドウスパイダーが迫る

｢こうなったら、やるしかないアル！｣

目を閉じ、スゥーっと大きく深呼吸をする

｢魔族解放！｣

リンメイがそう言うと、体を赤い炎が包む

｢シャー！｣

シャドウスパイダーは威嚇するものの、炎に近づけず様子を伺っている

｢さあて、反撃開始ヨ！｣

炎の中から腕を回しながら歩いてくるリンメイ

髪と瞳は赤く染まり、服は極度に露出の高まったビキニアーマー、白かった肌は褐色になっている

リンメイの正体は【魔族のサキュバス】であった

｢シャーッ！！｣

シャドウスパイダーにとっては、人型の生物の姿形が変わった事など、取るに足らない現象

炎を纏わないリンメイに脅威はないと突進してくる

｢朱雀！｣

口を目一杯膨らまし、左指2本を口元にあてる。
大きく息を吐き出すと、灼熱の炎の息吹となって前方を襲う

｢シャー……！？｣

突然炎に包まれたシャドウスパイダー、炎を振り払おうとするも、抵抗虚しく燃え尽きてしまった

｢魔族の力、また使ってしまったアル……。皆といる時に使う機会なければいいけど……｣

燃えるシャドウスパイダーを見つめながら、暗い表情を浮かべるリンメイ

もし魔族だとバレたら、みんなと一緒に居れなくなるかも知れないという不安が押し寄せていた

｢おや、リンメイ様ではありませんか｣

突然声を掛けられ後ろを振り向くと、小柄で眼鏡をかけた鼻の高い黒マントの男が立っていた

｢お前は……ゴルザ……？｣

｢名前を覚えていてくれたのですね、元魔族四天王リンメイ様｣

｢その肩書きで呼ぶなアル｣

眉間に皺を寄せて、ゴルザを睨みつける

｢おっとこれは失礼しました｣

｢ところで、何でお前がここにいるネ｣

｢とある実験、それ以上は貴女にはお伝え出来かねます｣

不敵に笑うゴルザに苛立つリンメイ

｢ここでやることは済ませましたので、私はこれで失礼します｣

｢待つアル！｣

｢久しぶりにお会いできて嬉しかったですよ、また機会があればお会いしましょう｣

そう言うと、ゴルザは白いモヤに紛れ消えてしまう

｢実験って一体なんネ……早く魔王を倒さないと、とんでもない事になる気がするアル……｣

ゴルザが消えると、下水道内に蔓延していた白いモヤも晴れた。

果たしてゴルザはここで何の実験をしていたのか、魔王は一体何を企んでいるのだろうか？