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06.バーミリオン公爵家
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リハビリ以外はほとんどなにもすることがない私はぼんやりとしている時間が多かった。
ただ、リベリオンへの不信感と不安だけが膨れ上がり続けた。
かつては愛されるだけでどれほど幸せになれるかと思った人。けれど今は全くその愛が信じられないのだ。
「シルビア、調子はどうだ」
そう言って兄が部屋に入ってきた。私が事故に遭う前、全くと言っていいほど無関心に思われたこの人。リベリオン同様に事故後から優しくなった人。
ただ、リベリオンと違いあくまで家族であることがこの人の変貌に対して、リベリオン程の警戒心を持たせていない。
例えば嫌悪するほど憎んでいる身内なら、死ぬほどの大けがをしても私は何も感じないかもしれないが、いままでいるかいないか分からなかった身内でも大けがをしたら流石に心配になるという感情は私にも分かる。
だからといって、ずっとほっとかれたことについて許すつもりも私から歩み寄るつもりもないけれど。私は紙に文字を書いた。この頃やっとペンを問題なく握れるようになった。
『悪くありません』
「そうか。そのシルビアはリベリオンとの婚約についてどうしたい?」
こんな状態になったのになぜか私とリベリオンの婚約は破棄されていなかった。正直今のリベリオンの様子を考えれば破棄してしまう方が安心できる。
しかし、破棄しても、この体の私に新しい縁談は難しいだろう。その場合、侯爵家に居座り続けるか、体が回復してから後妻にでもなるよりない。
(どの未来も最悪だな……)
『よくわかりません。なぜ彼が婚約を破棄しないのかも……』
「……リベリオンのバーミリオン公爵家の公爵夫人の話って聞いたことシルビアはあったか?」
そう言われた時、私はバーミリオン公爵家の公爵夫人、リベリオンの母のことを思い出した。彼女は元々とても利発で賢い女性で、現公爵様と沢山の優れた事業をしていたそうだ。
しかし、ある時から難病に侵されてしまいほとんど表舞台には出てこなくなって久しい。
私も一度お会いしたことがあるが、やせ細り弱っているだろうその姿をカーテン越しに見ただけだ。
その公爵夫人を公爵様はとても大切にされていて、手ずから率先して世話をしていると聞いたことがある。リベリオンもそんな両親を見て育ったそうだ。
『はい、存じております』
「リベリオンは、両親のことをとても尊敬している。だからシルビアがそのような状態になったからと言って婚約破棄はしないと言っていた。けれど……」
兄の顔が浮かないものになる。その言葉だけならば素晴らしいと言わざるえないが、あの変貌ぶりの説明にはならない。私は兄を見つめて次の言葉を待っていた。
「あいつはシルビアに興味がないというより嫌っていたはずなのにそんなこと言うなんて、正直俺は薄気味が悪い。俺もシルビアのこと守れなかったかったし、言えたことじゃないのはわかってる。でも、なんか嫌な感じがする。父上や母上は感動していたみたいだけど……」
嫌っていたと確認のある言葉に思わず目を見開く。兄は何か知っている。直感的にそう思った。
ただ、リベリオンへの不信感と不安だけが膨れ上がり続けた。
かつては愛されるだけでどれほど幸せになれるかと思った人。けれど今は全くその愛が信じられないのだ。
「シルビア、調子はどうだ」
そう言って兄が部屋に入ってきた。私が事故に遭う前、全くと言っていいほど無関心に思われたこの人。リベリオン同様に事故後から優しくなった人。
ただ、リベリオンと違いあくまで家族であることがこの人の変貌に対して、リベリオン程の警戒心を持たせていない。
例えば嫌悪するほど憎んでいる身内なら、死ぬほどの大けがをしても私は何も感じないかもしれないが、いままでいるかいないか分からなかった身内でも大けがをしたら流石に心配になるという感情は私にも分かる。
だからといって、ずっとほっとかれたことについて許すつもりも私から歩み寄るつもりもないけれど。私は紙に文字を書いた。この頃やっとペンを問題なく握れるようになった。
『悪くありません』
「そうか。そのシルビアはリベリオンとの婚約についてどうしたい?」
こんな状態になったのになぜか私とリベリオンの婚約は破棄されていなかった。正直今のリベリオンの様子を考えれば破棄してしまう方が安心できる。
しかし、破棄しても、この体の私に新しい縁談は難しいだろう。その場合、侯爵家に居座り続けるか、体が回復してから後妻にでもなるよりない。
(どの未来も最悪だな……)
『よくわかりません。なぜ彼が婚約を破棄しないのかも……』
「……リベリオンのバーミリオン公爵家の公爵夫人の話って聞いたことシルビアはあったか?」
そう言われた時、私はバーミリオン公爵家の公爵夫人、リベリオンの母のことを思い出した。彼女は元々とても利発で賢い女性で、現公爵様と沢山の優れた事業をしていたそうだ。
しかし、ある時から難病に侵されてしまいほとんど表舞台には出てこなくなって久しい。
私も一度お会いしたことがあるが、やせ細り弱っているだろうその姿をカーテン越しに見ただけだ。
その公爵夫人を公爵様はとても大切にされていて、手ずから率先して世話をしていると聞いたことがある。リベリオンもそんな両親を見て育ったそうだ。
『はい、存じております』
「リベリオンは、両親のことをとても尊敬している。だからシルビアがそのような状態になったからと言って婚約破棄はしないと言っていた。けれど……」
兄の顔が浮かないものになる。その言葉だけならば素晴らしいと言わざるえないが、あの変貌ぶりの説明にはならない。私は兄を見つめて次の言葉を待っていた。
「あいつはシルビアに興味がないというより嫌っていたはずなのにそんなこと言うなんて、正直俺は薄気味が悪い。俺もシルビアのこと守れなかったかったし、言えたことじゃないのはわかってる。でも、なんか嫌な感じがする。父上や母上は感動していたみたいだけど……」
嫌っていたと確認のある言葉に思わず目を見開く。兄は何か知っている。直感的にそう思った。
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