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レベッカの事情 sideレオ

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彼女には、彼女の事情があった。
超シスコンの兄から自由になる事。
これが彼女にとって、俺と結婚する意味だ。
両親にはあまり目をかけてもらえなかったようだが、その分の兄の愛が重いらしい。少し話を聞いただけでも、引いた。

次期伯爵のアレックス殿には視察でも挨拶させていただいたが…
こんな常軌を逸した人物だったとは…驚きだ。
彼女はどう思ってるか知らないが、確実に妹を女性として愛してるだろ?それは。
そう思わなくはないが、間違っても口にだしてはいけないことだとわかる。
この国でも近親婚は認められていない。
早く彼女を助け出さなければいけない。
彼女から結婚の合意を得られたのだから、一刻も早く実現に向けて動くべきだろう。
彼女が思わずといった風に、俺の手を握る。思わず力が入った。それを彼女も感じたのか
「あ、申し訳ございません。つい、力が入ってしまって。ご不快でしたよね。」
と急いで手を放してしまった。
俺は不快じゃない事を伝えたが、もう彼女から触れてくる事はなかった。
何故か、まだ彼女の手の温もりを感じるようで…胸の鼓動が早くなる。レベッカに悟られないようにするのが必死だ。

彼女と打ち合わせをしていると、1人の男性が店内に入ってきた。

「レベッカ!」

彼女と同じ髪色、同じ瞳の色……間違いない、彼女の兄だろう。
その男性は眼鏡越しに俺を睨みつける。その手は彼女の腰だ。

「貴様は誰だ。」

怒ってる。間違いなく怒ってる。
俺は慌てて自己紹介をした。

そこからは、ほとんど口を挟む事が出来ない。
彼女が必死に兄上であるサミュエル殿を宥めているのを見ているだけだ。
たまに、頷いたり、口を開いたりするだけだ。
それにしても、距離が近くないか?
ホントに兄妹か?

彼はサミュエル殿で、アレックス殿ではないはずだが…これもこれで問題じゃないか?

彼女はその態度を特別おかしいとは思ってないようだが…多分おかしいぞ?

なんとか、サミュエル殿の機嫌は治ったようだが、依然俺に対しては厳しい目を向けてくる。
そりゃそうだろう、可愛い妹の運命の相手なんて認められるはずはない。

俺は2人が店を出ていくのを見送る。
最後に彼女が「明日もお会いできますか?」と聞いてきた。
明日はうちの両親に彼女を紹介しなければならない。
サミュエル殿は彼女に任せるしかない。
俺は明日の約束を取り付けて、運を天に任せた。

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