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これからの事

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「それは…」
あまりの執着ぶりに、レオナルド様は、言葉を失ったようです。

「アレックス殿は、まだ独身だったと記憶していますが、婚約者の方は?」

「お兄様にも、もちろん沢山の釣書が届いておりますし、その内の何人かとは、直接お会いしたみたいなのですが…
お兄様はお会いするご令嬢嬢に、第一声で
『私は、妹を誰よりも優先する事になると思いますが、それでもよろしいですか?』とお尋ねになるのです。
もちろん、それでほとんどのご令嬢からお断りをされるのですけれども、
それでも大丈夫だと仰る強者も中にはいらっしゃるのですが…
今度はお兄様の方がなんだかんだと難癖をつけて、断られてしまうのです。」

「難癖ですか?」

「ええ。ほとんどが『いずれ、私のベッキーより、自分が優先されるのが当然だと思い始める、自意識過剰な女だから、ベッキーに意地悪をするかもしれない。そうしたら、そんな女を選んだ自分を恨んでしまう。』
というとんでもない理由ですけど」

レオナルド様はもう開いた口が塞がらないようです。
言ってて私もかなり恥ずかしいのですけど、お兄様の溺愛ぶりをお話しなければ、今回の結婚が私にとっても好都合である事の理由がわかりませんものね?

「でも、もちろん私も家族も、このままで良いとは思っておりません。
なんとかして、私やお兄様に婚約者をと考えているのですが、今のところ上手くいっておりません。
そこで!今回のレオナルド様のお願いですの!
実は今、アレックスお兄様が新しい果物の加工技術を学びに隣国へ勉強に行っておりますの。しかも1ヶ月。
本当は、私も行く予定でしたが、ちょうど、出発の前日より体調を崩しまして。隣国までは馬車で1週間はかかりますので、大事をとって私はキャンセルしましたの。
お兄様は、自分もキャンセルすると、それはそれは駄々をこねられておりましたが、お世話になる先方の都合もございますし、父からの説得で、予定通り隣国へ向かいました。」
今はアレックスお兄様が出発して、10程経っている。
お兄様の帰国まであと、20日程時間がある。

「なので、お兄様不在の今!既成事実を作ってしまいたいのです!」
レオナルド様は既成事実と聞いて、慌てて
「そ、それは、やはり子作りという…」

「いえいえ、そちらではございません。婚姻という既成事実でございます。」
レオナルド様は、ホッとしたよう


「では、レベッカも急いで結婚をしたいと」

「はい!レオナルド様のお願いがなければ、考えつかなかった計画ですけれども、これは、チャンスなのです。
お兄様が妹離れをする。」
私は少し早口になりながら、テーブルの上にあるレオナルド様の手を握り

「お互い、利益がある事だと思いませんか?もちろん、レオナルド様が私を愛して下さらなくても結構です。
私も必要以上にレオナルド様へ干渉はいたしませんし、レオナルド様のお顔は好みではございませんし。」
と、言うと私が握ったレオナルド様の手が少し震えているのに気がついた。

「あ、申し訳ございません。つい、力が入ってしまって。ご不快でしたよね。」
と急いで手を放した。

「いや。そんなことは…。では、とにかく今回の事は、2人にとってお互い利益になるという事で…レベッカは良いのですね?」
と確認してくる。

私は「はい。両親を説得しなければなりませんが、そこはなんとかします!もちろん、契約結婚である事は、伏せておきますが。
問題は、アレックスお兄様ですけど、帰国するまでに結婚証明書を提出してしまえば、それを無効にする事は出来ないでしょうし。」
私は考えれば考える程、今回のお話がまたとないチャンスだと思える。

「とりあえず、私の両親は領地におりますので、手紙で先に知らせておきます。私は明後日領地に向けて出発する予定ですので」

「では、その時に俺もご一緒させていただきましょう。ご両親にご挨拶をして、結婚を了承していただけるよう、俺からも誠心誠意お願いしなくては。」

「そうですね。私はこちらで運命の相手に出逢った事にします。婚約期間はなしで、すぐ婚姻できるよう、説得しなければ…
でも、妊娠の設定は私の両親にはなしで。さすがに、結婚前に妊娠しているなんて話しをしたら、母が発狂してしまいますから。」
と笑いながら言うと、

「もちろんです。俺もレベッカのご両親に最初から嫌われたくはないし、
では、まずはうちの両親に会ってもらえないだろうか?今、ちょうどこちらのタウンハウスに居るんだ。」

「もちろんです。レオナルド様のご両親にも認めていただかなくてはいけませんもの」

「それは、大丈夫だよ。ソフィア嬢じゃなければ、必ず認めてくれるさ。」

気がつくとお互い、かなりフランクに会話が出来るようになっていた。

「レベッカは明後日領地に出発だったね。では、明日にでも、うちのタウンハウスに来て貰えるだろうか?両親には俺から話をしておくよ。」

「レオナルド様、お仕事は大丈夫なのですか?」

「ああ、我が家の緊急事態だったからな。少し長い休みを貰ったばかりなんだ。それまで、働きっぱなしだったので、すんなりとね。
今、レベッカはコッカス伯爵家のタウンハウスに滞在しているんだったね。なら、明日、俺が迎えに行くよ」
と、明日の打ち合わせをしていると、

「レベッカ!」
と私の名前がカフェ中に響き渡った。
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