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その67
しおりを挟むフェルト女史は、立ち上がり、クリス様とアーベル殿下の元へゆっくりと歩いて行く。
2人は何ともばつの悪そうな顔をしている。
私はミシェル殿下の手を取り、椅子に座らせた。
ミシェル殿下は泣き止んではいるが、化粧はとれて、ぐしゃぐしゃだ。
私はハンカチでそっと顔を拭った。
フェルト女史は2人を前に、
「貴方達2人が、こんなに女性に優しく出来ない人だとは、私、思いませんでしたわ。
王太子殿下、私をミシェル王女の講師にしたのは、貴方の優しさだと思っておりましたのに。
好きな女に格好つけたかっただけでしたのね。
正直申しますけど……多分今回の事、彼女は自責の念に駆られるでしょう。王太子殿下は、今、彼女も苦しませております。彼女の心が手に入るとお思いにならない方が、よろしいかと思いますわよ?」
と言った。
途中から、私には理解できない話をしていたが、この雰囲気では、訊ねる事は不可能だろう。
クリス様は、
「そ、そんな!か、彼女は何もしていない。どうしてそうなる?」
と、かなり動揺しているようだが、やはり私には、理解できない話だ。
フェルト女史は、
「さぁ、2人はもう言いたい事は言ったのでしょう?女性の部屋に長々と滞在するものではありませんよ。さっさとお戻り下さい」
と2人を追い出してしまった。…つ、強い。
2人が退出した後、私はミシェル殿下を寝室に連れていき、少し休ませる事にした。
その後、部屋の長椅子に座るフェルト女史に私は、
「先程は…ありがとうございました」
と頭を下げた。
フェルト女史は、
「まぁ…アルティアに戻される事は変えられないわ。
でも、今回のミシェル殿下の失態について、害をなすつもりでなかった事は、皆分かっているの。アーベル殿下がどうしても結婚に消極的でね。陛下も甘いのよ、あの子には。
ミシェル王女の今までの態度があまり褒められたものでない事は確かよ。なので、良い口実にされてしまった。
アルティアに戻されれば、ミシェル王女の立場は悪くなってしまうでしょうね。…そこで、1つ私に提案があるのよ」
と、フェルト女史は私に人差し指を立てた。
「提案…ですか?」
私が訊くと、
「そう。これは奥の手で出来れば使いたくなかったけれど、仕方ないわ。それで、シビルにお願いがあるの」
私は自分も責任を感じていた為、直ぐ様頷いた。
「何でも致します!」
そう私が言うと、フェルト女史は、
「では、ミシェル王女をランバンの第二王子へ嫁がせます。貴女はミシェル王女を説得して頂戴」
と私の目を見て微笑んだ。
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