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その68
しおりを挟むそこからのフェルト女史の動きは早かった。
即座にフェルト宰相の力を借りて、ランバン王国と、アルティア王国へ手紙を出す。
アルティア王国とランバン王国に国交はない。どうするつもりなのだろう?
私はベルガ王国を立つ準備を始め、それに平行して、ミシェル殿下と話をした。
あの時、ユリアがゲルニカ行きを口を滑らして言ってしまった事を、とても後悔していた。しかし、遅かれ早かれミシェル殿下にはその事を言わなければならなかったのだ。
あの時にゲルニカの事で殿下が駄々を捏ねたから婚約破棄されるわけではない。
原因はそれではないのだから、これ以上ユリアが気に病む必要はないと、私はユリアに言った。
ミシェル殿下は、今だ、婚約破棄について受け入れる事が出来ずにいる。
本心では、アーベル殿下を気に入っていた事も確かだが、アルティアに戻って、自分が今後どうなるのかを心配しているのだろう。
自分の責任で、アルティア王国とベルガ王国の関係が悪化するなんて、夢にも思ってなかった筈だ。
何だかんだ言っても、自分はここ、ベルガ王国に嫁ぐ事が変わる事はないと思っていただろう。
私はフェルト女史から聞いた話を、殿下にする。
フェルト女史はランバン国王に『貸し』があった。
…そう、やっぱりフェルト女史はランバン国王の元婚約者だった訳だ。
国王はフェルト女史の冤罪を公にしていない。自分の保身の為だ。
ランバン国王は自分の王妃を幽閉した後、側妃を娶り、2人の王子に恵まれた。
その後、何故かフェルト女史をランバンへ連れ戻そうとしたらしい。
『実は愛していたと言われても、信じられるわけないじゃない?
でも、何度も何度も謝罪の手紙を貰ったわ。
もう怒る気にもならないけれど、許すつもりもなかったから無視してやったの。
その内、私は主人と結婚したから、やっと諦めてくれたんだけど、それでも、何か罪滅ぼしがしたいと言ってね。
何か1つ私の願いを、何でも聞いてくれる事を約束してくれたのよ』
とフェルト女史は言った。
そんな大切な約束をミシェル殿下に使ってしまっても良いのかと私が驚いていると、フェルト女史は、
『本当は使うつもりもなかった約束だもの。折角なら人の役に立ちたいわ』
と笑って言っていた。
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