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帰国⑸
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佑輔さんに散々真野とのことをつつかれて、ややうんざり気味に時計を見ると、もう1時間は経とうとしている。それでもまだ、戻ってくる気配はなく会話が途切れたタイミングで、今度はリアムのことを聞き出す。真野からは、預かっている子とは聞いていたけど、一体誰の子を預かって、遠くの日本まで連れてきているのか。
「リアムは、預かってるって聞いたけど……」
佑輔さんは、やや伏し目がちに「あぁ……」と呟いて、テーブルに置かれたコーヒーを一口飲んで、リアムについて教えてくれた。
リアムは、3年前母親が亡くなってテオが働いている施設にやってきて、佑輔さんがボランティアで、そこの子供にサッカーを教えているときに、出会ったようだ。たしか、テオと出会ったのもこのボランティアだと聞いていた。リアムの母親は、アル中でネグレクト、育児放棄に近い養育しかしておらず、初めて会った時はもっとガリガリに痩せて、背も低く、今以上に幼く女の子っぽかったと。また、母親による暴言、暴力も日常茶飯事で、女性に対する警戒心が強く、施設でも男性職員の方に懐き、特にテオに一番心を許している。「オレはそのオマケのようなものだ」と佑輔さんは苦笑いした。
「父親が日本人だって……」
「そだね……リアムのためには会わせてあげるのがいいのかもしれないけど……」
だけど、真野は今回の帰国は父親を探すためではないと言っていた。父親は音信不通なんだと。でも、今の佑輔さんの言葉では会わせてあげることもできるような言い方だ。次の言葉が見つからないでいると、佑輔さんはフッと笑って言葉を繋げる。
「こっそり調べてた。今回の帰国の目的の半分はそれ。もう半分は、リアムに大好きな日本を見せてあげたかったから」
「じゃ……じゃあ、見つかったってこと?でも……会わせない?」
昨日、佑輔さんはリアムの父親に会いに行っていた。会ってみて、リアムに話すかどうかを決めようと思っていたのだと。だけど、今はもう再婚して新しい家族もできていて、今の家族には子供がいる事は言ってないから、認知することも会うつもりもない、はっきり言って迷惑だとも言われたようだ。
「そんな……」
「だから、テオとも話して今はリアムには言わないことにした。もう少し大きくなったら言うかもしれないけど、今は何もメリットがない。まあ、オレとテオの身勝手な思いなんだけどな」
確かに、血の繋がった父親がいてもそんな気持ちであれば、テオや佑輔さんと一緒にいる方がリアムにとってはいいのではと思う。だけど、それをリアムが望んでいるかどうかはわからないから、佑輔さん達は自分たちの身勝手な思いを背負うことにしたのだ。
先程会ったリアムは、テオにも佑輔さんにもよく懐いていて、楽しそうで2人の選択は間違っていないと祈りたい。
「リアムは、預かってるって聞いたけど……」
佑輔さんは、やや伏し目がちに「あぁ……」と呟いて、テーブルに置かれたコーヒーを一口飲んで、リアムについて教えてくれた。
リアムは、3年前母親が亡くなってテオが働いている施設にやってきて、佑輔さんがボランティアで、そこの子供にサッカーを教えているときに、出会ったようだ。たしか、テオと出会ったのもこのボランティアだと聞いていた。リアムの母親は、アル中でネグレクト、育児放棄に近い養育しかしておらず、初めて会った時はもっとガリガリに痩せて、背も低く、今以上に幼く女の子っぽかったと。また、母親による暴言、暴力も日常茶飯事で、女性に対する警戒心が強く、施設でも男性職員の方に懐き、特にテオに一番心を許している。「オレはそのオマケのようなものだ」と佑輔さんは苦笑いした。
「父親が日本人だって……」
「そだね……リアムのためには会わせてあげるのがいいのかもしれないけど……」
だけど、真野は今回の帰国は父親を探すためではないと言っていた。父親は音信不通なんだと。でも、今の佑輔さんの言葉では会わせてあげることもできるような言い方だ。次の言葉が見つからないでいると、佑輔さんはフッと笑って言葉を繋げる。
「こっそり調べてた。今回の帰国の目的の半分はそれ。もう半分は、リアムに大好きな日本を見せてあげたかったから」
「じゃ……じゃあ、見つかったってこと?でも……会わせない?」
昨日、佑輔さんはリアムの父親に会いに行っていた。会ってみて、リアムに話すかどうかを決めようと思っていたのだと。だけど、今はもう再婚して新しい家族もできていて、今の家族には子供がいる事は言ってないから、認知することも会うつもりもない、はっきり言って迷惑だとも言われたようだ。
「そんな……」
「だから、テオとも話して今はリアムには言わないことにした。もう少し大きくなったら言うかもしれないけど、今は何もメリットがない。まあ、オレとテオの身勝手な思いなんだけどな」
確かに、血の繋がった父親がいてもそんな気持ちであれば、テオや佑輔さんと一緒にいる方がリアムにとってはいいのではと思う。だけど、それをリアムが望んでいるかどうかはわからないから、佑輔さん達は自分たちの身勝手な思いを背負うことにしたのだ。
先程会ったリアムは、テオにも佑輔さんにもよく懐いていて、楽しそうで2人の選択は間違っていないと祈りたい。
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