神さまのレシピ

yoyo

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落ち着かない気持ち2(1)

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   颯の着替えを手伝ったあの日の出来事が、ずっと頭の中にこびりついて離れなかった。自分の太ももに感じた温かさと、細くて白い足、先端がチラ見えしていた颯の分身、触れそうなほど近づいた颯の唇。そして、それを考えると下半身が疼き反応してしまう自分がいた。あの時、気づいたら颯にキスしようとしていた自分に混乱しながらも、3日間の正月休暇の間に少し落ち着きを取り戻し、そして颯が好きだという気持ちに結論づいた。

   今まで付き合った彼女からは「誰とでも仲良くしないで。私だけを見て」と責められて別れることが多かった。付き合う経緯は相手からの告白だったけど、付き合ってからは彼女のことをちゃんと好きになったし、湖城自身浮気する気もなかったけど、もともと距離感の近い性格ゆえ、誰にでもフレンドリーに接していると、変に誤解され別れることが常だった。だけど、そんな自分を好きになってくれたんじゃないかという思いも片隅にあった。この間別れた彼女はその辺がドライで、一緒にいて楽だったし一番長く付き合っていた。今まで付き合った彼女のことはいつも本気で好きだったと思い込んでいたけど、自分からは好きになったことはなく、自分の気持ちがわからなくなるとか、触れたいと強く思うことはく、湖城にとって颯へのこんな感情は初めてだった。

   休暇明け平静を装って颯の病室に顔を出すと、軽く咳き込みながら読んでいた文庫本から視線をあげる颯がいた。ずっと頭の中を占めていた颯本人が、当たり前だけど目の前にいて、一気に心臓が跳ね上がる。今までどうやって接してたのか急にわからなくなって慌てたけど、長年の看護師業務で培った体と表情が、そんな湖城の心情を気付かなかったように、いつも通り接することができることに安堵する。


「体調はどう?」

「あ、咳はまだだいぶ残ってるんですけど、熱はもうすっかりないです。あの……ご迷惑をおかけしました……」

「調子よくなったなら良かった」


   そう言って、颯の頭に伸ばしかけた手を慌てて引っ込める。触れたいと思う自分がいるが、今まで何も考えずにやっていたことが妙に気恥ずかしくなり、躊躇われた。それを隠すように言葉を繋げる。


「個室は寂しいんじゃない?今叔母さんもなかなかお見舞いに来れないみたいだし」

「大丈夫ですよ。昨日はまさしさんが来てくれたし。それにここは部屋に洗面所がついてるので結構快適です」

「征さんって、叔父さんだっけ?叔母さんの体調はどうなの?」

   確か叔母の涼風は妊娠がわかり、悪阻が重いと言っていた。颯が正月の外泊をやめたのも涼風を気遣ってのことだった。


「まだ、万全ではないみたいですけど、だけど少しずつ食べることができるようになったみたいで、僕も安心しました」

   そう言って笑う颯を見てると愛おしさがこみ上げてくる。だけど、颯は湖城の担当患者である以上、自分の気持ちに蓋をしてでも看護師として関わらないといけないという思いもあり、こみ上げる感情に何とか押さえつける。
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