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クリスマス⑸
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ボフっと頭に重みが加わり、支配されそうだったネガティブなモヤが払われる。隣を見ると湖城の手が頭の上に乗っかっていた。
「なんで、颯くんがそんな顔するのさ~振られたのは俺だよ~」
何も言えないでいるとグリグリと頭を揺らされて、大げさな感じに「おーい」と呼びかけてくる。
「ぼ……僕のせいですか……」
顔は上げずに呟く。時間にしたら数秒なんだろうけど、長い長い間の沈黙を感じられ、それが肯定しているのではないかと怖くて湖城を見れない。
「な、何言ってんの。そんなわけないよ。なんで?なんで颯くんのせいなの?」
「だって……星、見に連れて行ってくれたり、よく病室に来てくれたり……仕事じゃない時間に色々やってくれたから……彼女との時間を減らしちゃったのかなって……」
「あーいや、違う、違う。俺が不甲斐なかっただけ。どうしても彼女より仕事の比重の方が大きくて、彼女のこと放ったらかしちゃうこと多くてさ。今まで何も言われなかったから大丈夫だって、勝手に思い込んで、彼女の本当の気持ちに気づいてあげられなかったんだよ」
湖城から違うと言われても、信じてない訳じゃなかったけど、なかなか顔をあげられない。
「振られた俺にここまで喋らせたんだから、もう颯くんのせいじゃないってわかったでじょ。はい、顔上げて、振られた俺を慰めてよ」
今度は両手で颯の髪をぐちゃぐちゃにしながら、そんな軽口を言う。ゆっくりと顔を上げると笑って見つめる湖城の顔があった。
「か……かっこいいから……大丈夫です……」
彼女がいたことのない颯にとって、どうやって慰めたらいいのかわからず、そんな思いつきを言葉にしてみるけど、それもまた本人目の前にして言うのは恥ずかしくて、最後は尻すぼみになってしまう。それを気づかれまいと、話題を変えた。
「さっき、白井さんが言ってたんですけど、このツリー裏伝説があるって」
「あー、24日の夜中12時見ると、願いが叶うってやつ?」
頷くと「俺らみたいに夜、抜け出した人がいたのかね」と笑う。
「あ、あの……24日また一緒に見れたら、湖城さんの振られた傷が癒えますようにって願います」
颯を見つめて目を丸めている湖城の顔をみて、なんかとんでもないことを言ってしまったと改めて自覚して恥ずかしくなる。
「夜中に抜け出すのは、もう無理かな。その日は夜勤でもあるし。ごめんね」
「そう……ですよね」
「でも、今日一緒にツリー見れて、話を聞いてもらちゃって、かなり元気出たよ。ありがとね」
湖城ならまた「いいよ」と夜中に連れ出してくれるのではないかと期待していた。だけど、神さまには湖城のためと言いながら颯自身が一緒にいたいだけだといことが見透かされたようだ。
「なんで、颯くんがそんな顔するのさ~振られたのは俺だよ~」
何も言えないでいるとグリグリと頭を揺らされて、大げさな感じに「おーい」と呼びかけてくる。
「ぼ……僕のせいですか……」
顔は上げずに呟く。時間にしたら数秒なんだろうけど、長い長い間の沈黙を感じられ、それが肯定しているのではないかと怖くて湖城を見れない。
「な、何言ってんの。そんなわけないよ。なんで?なんで颯くんのせいなの?」
「だって……星、見に連れて行ってくれたり、よく病室に来てくれたり……仕事じゃない時間に色々やってくれたから……彼女との時間を減らしちゃったのかなって……」
「あーいや、違う、違う。俺が不甲斐なかっただけ。どうしても彼女より仕事の比重の方が大きくて、彼女のこと放ったらかしちゃうこと多くてさ。今まで何も言われなかったから大丈夫だって、勝手に思い込んで、彼女の本当の気持ちに気づいてあげられなかったんだよ」
湖城から違うと言われても、信じてない訳じゃなかったけど、なかなか顔をあげられない。
「振られた俺にここまで喋らせたんだから、もう颯くんのせいじゃないってわかったでじょ。はい、顔上げて、振られた俺を慰めてよ」
今度は両手で颯の髪をぐちゃぐちゃにしながら、そんな軽口を言う。ゆっくりと顔を上げると笑って見つめる湖城の顔があった。
「か……かっこいいから……大丈夫です……」
彼女がいたことのない颯にとって、どうやって慰めたらいいのかわからず、そんな思いつきを言葉にしてみるけど、それもまた本人目の前にして言うのは恥ずかしくて、最後は尻すぼみになってしまう。それを気づかれまいと、話題を変えた。
「さっき、白井さんが言ってたんですけど、このツリー裏伝説があるって」
「あー、24日の夜中12時見ると、願いが叶うってやつ?」
頷くと「俺らみたいに夜、抜け出した人がいたのかね」と笑う。
「あ、あの……24日また一緒に見れたら、湖城さんの振られた傷が癒えますようにって願います」
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