神さまのレシピ

yoyo

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クリスマス⑷

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   今日のリハビリを終えて、部屋を出ると湖城が立っていた。今はもう一人で移動できるので送迎をしえもらう必要はなくなっている。リハビリが始まる前も一人で来たし、帰りも一人で帰るはずだった。


「湖城さん⁈どうしたんですか?」

「書類を届けに近くまで来たからさ。ちょうど颯くんのリハビリが終わったのが見えたから、一緒に戻ろうと思って待ってた」
   そう言って表情を崩す湖城に久しぶりなのでいつもよりドキドキする。

「でも僕もう、一人でも大丈夫ですよ」
   だけど、そんな思いを悟られまいと突き放したような言い方になってしまう。

「それはわかってるんだけどね。最近あんまり話できてなかったし、ちょっと遠回りして散歩しながら戻ろうよ」

「でも……」


   ずっと検温の時のちょっとした時間だけじゃなくて、もっともっと話したいと思っていたから、こんな風に時間を作ってくれるのはすごく嬉しいのに、こんなことをしたら、今度こそ担当を外されてしまうのではないかと勘ぐってしまう。あのとき聞いた話は颯のことだという確証は何もなのに、今までの颯の行動を考えるとどうしてもしっくりきてしまうのだ。

   2週間前にロビーに大きなクリスマスツリーが飾られ、せっかくだから見に行こうと誘われる。なかなか1階のロビーに行くことはなく、まだ見たことはなかったけど、リハビリのとき葉那がツリーのことを話していた。ツリーにはとある伝説があるらしい。


「颯くん、この病院のクリスマスツリーは、とある噂があるんだよ」

「あーはい。さっき白井さんに聞きました。病気とか怪我とかの治癒をお願いすると治りが早いって」

「なんだ~聞いてたのか。そうそう。何故かはわからないけど、そういう噂があるんだよね。だから一緒に行って颯くんの足が早くよくなるようにお願いしようと思ってね」

   葉那から聞いたクリスマスツリーの伝説は、もう一つあってクリスマスイブの夜中の12時に担当の看護師と一緒にツリーを見ると願いが叶うという裏伝説だ。イブに湖城と一緒にツリーを見れたら……と勝手に考えが膨らんでいく。足のこともだけど治癒以外でも願いが叶うなら、何をお願いするだろうか……

   ライトアップされたクリスマスツリーの周りには何人か人がいたけど、外来時間は終わっていて、そこまでは混んではいなかった。思っていたよりずっと小さめのツリーは手を伸ばすと一番上で輝いている星にも難なく手が届いてしまうくらいだった。それでも電飾によって光るツリーは神秘的で本当に願いを叶えてくれそうだ。


「いつも通りすぎるだけでちゃんと見たことがなかったんだけど、すごいきれいだね。今年のクリスマスも仕事だったし、無縁かなと思っていたけど、こうやって見るのもいいね」

「クリスマス……か、彼女と過ごさないんですか?」


   そんなこと聞こうと思ってなかったのに、ツリーを見てたらついポロッと口から滑り落ちてきた。これもずっと気になっていたことだ。

「え?あー彼女には振られたんだよねー」

   ドキッと心臓が嫌な音をたてる。あの話はやっぱり本当だったんだと苦しい。こんな風に思うのは思い上がりも甚だしいけど、自分のせいなんじゃないかとまたいつものネガティブな感情が迫ってくる。
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