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看護師失格⑶
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「別れようか」
久しぶりに会った彼女の口から思いもよらない言葉が降ってきた。クリスマス直前であり、たまたま入った大型チェーン店のカフェは、殆どの席が浮き足立ったような笑みを浮かべる人たちで溢れているのに、湖城達の席は別世界のようだった。
「え?なに?急に……」
「別に急じゃないよ。ずっと考えてた。今まで言ってなかったけど、仕事のことになると周りが全然見えなくなって、私のことなんて眼中にもないんだろうなと寂しく思ってたし」
確かに直接会うのは3週間ぶりだったけど、今までもそういうことはよくあったし、彼女はクールだと思っていたから寂しく感じていたなんて意外だった。
「そんなの言ってくれれば……」
「言ってたら変わってた?たぶん、湖城は変えられないよ。別に仕事が大好きなのは知ってるし、湖城を独占したいとかそういんじゃなくて。これが湖城だから仕方ないなぁくらいだったんだけど……」
「え……まだ何かあるの?」
「湖城さぁ、今、好きな人いるんじゃない?」
本日2度目の思いもよらない言葉に、一瞬何を言われているのか理解が及ばなくなる。目の前にいる3年付き合っている彼女以外に、誰のことを言われているのかわからず焦る。黙っていると変な誤解を生みそうなので、慌てて声を上げる。
「は?いないよっ!」
「そうかなぁ……こういう私の勘は当たるんだけどな。もう、ほとんど私に気持ち向いてないと思うんだよね。それが、何とか繋いでいた最後の砦を壊されちゃった感じかな」
「なんだよ。勘って……ちゃんと好きだよ」
「その好きはさ、友達とか同僚の好きだよ。湖城さ、会ってなかったこの3週間でどれだけ、私のこと考えた?私が入る余地がないほど、頭いっぱいを占めている人がいるんじゃない?私はさ、仕事で会えないのは仕方ないとしても頭の中にいるのは私が1番じゃないと嫌かな」
もう、何を言っても考えは覆らないようで「今までありがとう」と言って、湖城を残して店を出て行った。
ひとり残された店内で、今までのやり取りが反芻される。なぜ、こんなことになってしまったのか。だけど頭がいっぱいになってる人と言われて、ひとり思い浮かんでしまったのも事実だった。でも、彼女が考えているようなことはない……
この間、吉志にも似たようなことを言われて、颯のことは患者以上友人と湖城の中で結論付けたばかりだった。だけど、今日彼女に言われたことは、それ以上の恋愛感情にまでなっているということだ。そこまで考えたところで「まさか……ないない……」と首を振る。
久しぶりに会った彼女の口から思いもよらない言葉が降ってきた。クリスマス直前であり、たまたま入った大型チェーン店のカフェは、殆どの席が浮き足立ったような笑みを浮かべる人たちで溢れているのに、湖城達の席は別世界のようだった。
「え?なに?急に……」
「別に急じゃないよ。ずっと考えてた。今まで言ってなかったけど、仕事のことになると周りが全然見えなくなって、私のことなんて眼中にもないんだろうなと寂しく思ってたし」
確かに直接会うのは3週間ぶりだったけど、今までもそういうことはよくあったし、彼女はクールだと思っていたから寂しく感じていたなんて意外だった。
「そんなの言ってくれれば……」
「言ってたら変わってた?たぶん、湖城は変えられないよ。別に仕事が大好きなのは知ってるし、湖城を独占したいとかそういんじゃなくて。これが湖城だから仕方ないなぁくらいだったんだけど……」
「え……まだ何かあるの?」
「湖城さぁ、今、好きな人いるんじゃない?」
本日2度目の思いもよらない言葉に、一瞬何を言われているのか理解が及ばなくなる。目の前にいる3年付き合っている彼女以外に、誰のことを言われているのかわからず焦る。黙っていると変な誤解を生みそうなので、慌てて声を上げる。
「は?いないよっ!」
「そうかなぁ……こういう私の勘は当たるんだけどな。もう、ほとんど私に気持ち向いてないと思うんだよね。それが、何とか繋いでいた最後の砦を壊されちゃった感じかな」
「なんだよ。勘って……ちゃんと好きだよ」
「その好きはさ、友達とか同僚の好きだよ。湖城さ、会ってなかったこの3週間でどれだけ、私のこと考えた?私が入る余地がないほど、頭いっぱいを占めている人がいるんじゃない?私はさ、仕事で会えないのは仕方ないとしても頭の中にいるのは私が1番じゃないと嫌かな」
もう、何を言っても考えは覆らないようで「今までありがとう」と言って、湖城を残して店を出て行った。
ひとり残された店内で、今までのやり取りが反芻される。なぜ、こんなことになってしまったのか。だけど頭がいっぱいになってる人と言われて、ひとり思い浮かんでしまったのも事実だった。でも、彼女が考えているようなことはない……
この間、吉志にも似たようなことを言われて、颯のことは患者以上友人と湖城の中で結論付けたばかりだった。だけど、今日彼女に言われたことは、それ以上の恋愛感情にまでなっているということだ。そこまで考えたところで「まさか……ないない……」と首を振る。
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