神さまのレシピ

yoyo

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前進⑵

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「最近、湖城さんいないので、郁島くん寂しいんじゃないですか?」

   リハビリが終わり、休憩しながら迎えにくる看護師を待っている時、葉那が声をかけてきた。2週間ほぼ毎日、湖城と一緒にリハビリに来ていたので、葉那にとって颯と湖城はセットの存在のようだった。最近は、リハビリの送り迎えをしてくれるのは朝也だったり、他の看護師のことが多く、湖城と一緒にリハビリ室に来ることはなかった。


「そんなことないですよ。最近、湖城さん来なくて寂しいのは、白井さんなんじゃないですか?」

「んー、確かに。湖城さんは話していて面白いですからね」

「え?白井さんって……」


   否定されるかと思ったその言葉は意外にも受け入れられ、颯はビックリして声を上げてしまった。


「あはっ……私は同僚としては尊敬して好きですけどね~。だけど、湖城さんは、けっこうモテるんですよ~コミュ力高いですからね。新人看護師とか退院する患者は毎年1人以上泣かされてるとか……って噂があったりしますからね」


   それは、颯も薄々感じていた。颯の専属としてついてくれていた期間も、移動中とかよく他の女性患者から声をかけらていることが多かった。そんな様子を見て、今までも相当モテてきたんだろうなと思っていた。でも、一緒に星を見に行った直後に、湖城は流星群を彼女とキャンプ場で見たと話していて、そんな湖城を射止めた彼女がいるんだなとも思っていた。
   湖城が颯の専属から外れて、リハビリ中ずっと付き添うことはなくなったが、仕事の合間を縫ってちょこちょこ颯の病室に顔を出し、休憩時間も「お昼付き合って」と颯を屋上へ連れ出し、颯の隣でコンビニのパンやおにぎりを頬張っていた。だから、葉那が言う寂しさはなく、むしろ距離が縮まったのではないかと思うほどだった。そんなことをボーッと考えていると「おまたせ」と馴染み深くなった声が聞こえた。


「あ、湖城さん。お久しぶりです。今ちょうど、郁島くんとも湖城さん来なくて寂しいって話してたんですよ~」

「んなっ……それは、白井さんでしょ!もうっ、変なこと言わないで下さいよ」

「あははっ……そうでした、そうでした」

「えー、颯くんは寂しくないの?俺は、リハビリの様子見れなくなって、ちょっと寂しいのに~」

「毎日、病室で会ってるじゃないですか。それに、僕のリハビリなんて見てないでちゃんと仕事してくだい。今日の迎えも真崎さんだって聞いてましたよ」

「そんな冷たいこと言わないでよ~。時間が空いたから、朝也に文句言われながらも変わってもらったのに~」


   もう颯のトイレ介助も女性の看護師でも慣れて連れて行ってもらっているし、湖城がわざわざ来なくても大丈夫なんだが、今でもトイレには8割は湖城が来てくれていた。

   以前から担当患者にここまでするのかなと、他の担当患者にも同じくしてるのかなと思うことがあったけど、それではいくつ体があっても大変じゃないのかなとも思う。
   もしかして僕だけなんだろうか……少しの申し訳なさとめちゃくちゃ嬉しい気持ちに飲み込まれる。でも、なんでこんな気持ちになるのかはよくわからない。特別扱いされて嬉しい子どもと一緒なのだろうか……
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