神さまのレシピ

yoyo

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前進⑴

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「やったっ……」と小さく呟き、平行棒に掴まりながら、自力で立ち上がる。今日で2週間の湖城の颯特別週間が終わろうとしていた。目標だった立位を保つことは、介助して立たせてもらえると可能となり、身体を支えて貰えればすり足で少し歩くこともできるようになっていた。


「おぉ!!颯くん、やったぁ!」


   少し離れて見ていた湖城が颯に近寄って声をかける。葉那に支えられて、呼吸を整えながら車椅子に戻り、湖城に笑顔を向ける。目が合うと、満面の笑みを返してくれた。

   この2週間ほど、リハビリの効果が実感できるようになり、排泄面もパッドは使ってはいたけど、オムツから解放されて不安に押しつぶされるよりも一筋の光が見え始めていた。もっとリハビリを頑張りたいと思えたし、頑張れば以前のように歩けるようになるという期待も持てた。そう思えるようになったのは、吉志とそして、湖城の存在が大きかった。


「すごいよ。よく頑張ったね、颯くん。よかったね……ほんと……」

「ありがとうございます。あはっ……湖城さん、泣きそうになってるじゃないですか」

「泣いて……ない……よ……」


   自分のことのように喜んでくれる湖城の様子を見て、さらに嬉しさが込み上げてくる。


「一番近くで、郁島くんのこと応援してたのは、湖城さんですからね。そりゃあ、泣いちゃいますよねー」


   泣いてないなんて、強がりを言うくせに何も言えないでいる湖城をみて、葉那と2人でクスクスと笑ってしまう。
   こんな風にまた、自分が笑うことが出来るんだなと改めて実感する。





   病室のベットに戻って来て「じゃあ、また何かあったら呼んで」とナースステーションへと戻ろうとする湖城を呼び止めた。


「ん?どうした?」

「あ、いや……湖城さんには、この2週間本当にお世話になったから……えっと……だから、ありがとうございました」

「えー、いやいや。俺は自分の仕事をやっていただけだし、それにいつもの業務より颯くん担当のこの2週間は俺自身もすごく楽しかったから、俺の方がお礼を言いたいくらいだよ」

「ははっ。なんですか、それ。それでも、僕は湖城さんがいないと、ちゃんとリハビリをしてたかわからないし、今少しずつ立てるようになったり、歩けるようになったのは湖城さんのおかげだと思ってます」


   そうだ。闇に引きずられそうになった時、湖城はいつでも引っ張り上げてくれる。気持ちも体も回復してきたのは湖城がずっと側で声をかけ続けてくれたからだ。


「明日からは、今までみたいには来れなくなっちゃうけど、颯くんの担当は変わらないから、これからもまだまだよろしくね」

「はい。こちらこそ」

   そう言い合って、何だかおかしくなって2人で笑ってしまった。
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