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リエゾン⑸
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次の日、いつもの談話室ではなくて面談ルームに呼ばれた。以前、湖城が涼風と話をしたあの部屋だ。部屋に入るともう吉志の姿があり、椅子を一つどかして空いたスペースに颯の車椅子を押し入れて、湖城もその隣に座った。
「あはっ、そんなにかしこまらなくてもいいよ。この間も言ったけど、これから先の目標とか、郁島くんの希望とかまだちゃんと聞いてなかったからね。その部分の確認かな。とりあえず、あと10日くらいは、俺と湖城がメインで動くから、気持ちの共有が必要だと思うんだよね。初めに挨拶に行った時も少し話したけど、郁島くんが今、不安に思っていることを少しでも和らげて、リハビリに専念できるようにしたいと思っているよ。リハビリが進むとさらに、不安は減っていくと思うしね。郁島くんは今、一番何を望む?」
「……べつに……何もないです……こんな体、リハビリしてもどうにかなると思えないし……いっそ、両親と一緒に死ねば良かったんだ……」
「颯くん……」
「理学療法士の白井さんは、以前より足を動かせるようになったって言ってたよ。確実に進歩してると思うけど?」
確かに、ここ2、3日真面目にリハビリに取り組み、寝ている状態や座った状態で少し足を動かせるようになっていた。だけど、まだ足に力が入らなく自力で立ったり、立った状態を維持していくことは難しかった。
「少し足を動かせるようになったからって、立つことすらできない。トイレだって未だに連れて行って貰って全部やってもらてる。それに今は、もしものためだって……またオムツ穿かされて……こんなんじゃ赤ちゃんと一緒じゃないですか」
颯は、排泄の失敗が続いた時に昼夜問わずオムツを穿かされていた。もしもの時、周りにバレて颯が恥ずかしい思いをしないようにという面もあるけど、看護側の処理が楽だからという側面も大きい。だけど、1度普通の下着に戻していた颯にとって、漏らすかもしれないからとオムツを履かなきゃいいけないことは、颯のプライドを大きく傷つけてしまっていたようだ。
「あ、あの……今は日中は俺がすぐトイレに連れて行けるし、失敗することもないから、日中だけでもパンツでいいと思います。夜は俺がいないことが多いから、難しいと思いますが……」
「うん。そうだね。郁島くんにとってその部分が大きなネックになっていそうだもんね。でも、今以上に心配だからとトイレに行くのはなしかな。泌尿器科の先生も機能的に2時間半は貯めることが可能だと話していたから、最低1時間に1回。そして徐々に延ばして行けるように意識してみること。どう郁島くん?」
「……でも……また間に合わなかったら、湖城さんに迷惑かけるし……今、本当に……したいと思ったら出ちゃってることもあって……だから……オムツはヤダって言いながら……全然、自信がない……」
「だけど、颯くん。最近は日中は失敗は全然ないよね。失敗しちゃうのは、夜とか寝起きで、トイレに行く間隔が少し空いちゃった時だよね。今はリハビリも一緒に付いて行って、側にいれるし。俺は大丈夫だと思うよ」
「湖城のお墨付きもあるし、俺も日中からチャレンジしてみていいと思うけど、どうしても心配ならオムツじゃなくて、パンツにパッドを使ってみてもいいかもね」
「パッド……?」
「そう。パンツの前面に付けて使用するタイプで、オムツよりは吸収してくれないけど、そんなに量が多くなければ1回分は大丈夫かな」
「それなら……少し安心です」
颯は排泄面の不安を少し吐露できたためか、投げやりだった感情が少し引いていた。それから3人で、10日間リハビリを頑張って、立位を保てるようになることが目標となった。ここができるようになると、1人でトイレに行きたいという颯の希望が叶う日もぐっと近くなる。そして、颯がリハビリを頑張れるように、吉志と湖城は息抜きをしたり、不安や愚痴などを吐けるようサポートしてくことを確認した。
「あはっ、そんなにかしこまらなくてもいいよ。この間も言ったけど、これから先の目標とか、郁島くんの希望とかまだちゃんと聞いてなかったからね。その部分の確認かな。とりあえず、あと10日くらいは、俺と湖城がメインで動くから、気持ちの共有が必要だと思うんだよね。初めに挨拶に行った時も少し話したけど、郁島くんが今、不安に思っていることを少しでも和らげて、リハビリに専念できるようにしたいと思っているよ。リハビリが進むとさらに、不安は減っていくと思うしね。郁島くんは今、一番何を望む?」
「……べつに……何もないです……こんな体、リハビリしてもどうにかなると思えないし……いっそ、両親と一緒に死ねば良かったんだ……」
「颯くん……」
「理学療法士の白井さんは、以前より足を動かせるようになったって言ってたよ。確実に進歩してると思うけど?」
確かに、ここ2、3日真面目にリハビリに取り組み、寝ている状態や座った状態で少し足を動かせるようになっていた。だけど、まだ足に力が入らなく自力で立ったり、立った状態を維持していくことは難しかった。
「少し足を動かせるようになったからって、立つことすらできない。トイレだって未だに連れて行って貰って全部やってもらてる。それに今は、もしものためだって……またオムツ穿かされて……こんなんじゃ赤ちゃんと一緒じゃないですか」
颯は、排泄の失敗が続いた時に昼夜問わずオムツを穿かされていた。もしもの時、周りにバレて颯が恥ずかしい思いをしないようにという面もあるけど、看護側の処理が楽だからという側面も大きい。だけど、1度普通の下着に戻していた颯にとって、漏らすかもしれないからとオムツを履かなきゃいいけないことは、颯のプライドを大きく傷つけてしまっていたようだ。
「あ、あの……今は日中は俺がすぐトイレに連れて行けるし、失敗することもないから、日中だけでもパンツでいいと思います。夜は俺がいないことが多いから、難しいと思いますが……」
「うん。そうだね。郁島くんにとってその部分が大きなネックになっていそうだもんね。でも、今以上に心配だからとトイレに行くのはなしかな。泌尿器科の先生も機能的に2時間半は貯めることが可能だと話していたから、最低1時間に1回。そして徐々に延ばして行けるように意識してみること。どう郁島くん?」
「……でも……また間に合わなかったら、湖城さんに迷惑かけるし……今、本当に……したいと思ったら出ちゃってることもあって……だから……オムツはヤダって言いながら……全然、自信がない……」
「だけど、颯くん。最近は日中は失敗は全然ないよね。失敗しちゃうのは、夜とか寝起きで、トイレに行く間隔が少し空いちゃった時だよね。今はリハビリも一緒に付いて行って、側にいれるし。俺は大丈夫だと思うよ」
「湖城のお墨付きもあるし、俺も日中からチャレンジしてみていいと思うけど、どうしても心配ならオムツじゃなくて、パンツにパッドを使ってみてもいいかもね」
「パッド……?」
「そう。パンツの前面に付けて使用するタイプで、オムツよりは吸収してくれないけど、そんなに量が多くなければ1回分は大丈夫かな」
「それなら……少し安心です」
颯は排泄面の不安を少し吐露できたためか、投げやりだった感情が少し引いていた。それから3人で、10日間リハビリを頑張って、立位を保てるようになることが目標となった。ここができるようになると、1人でトイレに行きたいという颯の希望が叶う日もぐっと近くなる。そして、颯がリハビリを頑張れるように、吉志と湖城は息抜きをしたり、不安や愚痴などを吐けるようサポートしてくことを確認した。
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