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第三部
第2章〜共鳴せよ! 市立芦宮高校文芸部〜③
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生徒会室に到着すると、すでに一年生のふたりと、生徒会のメンバーが集まっていた。
寿生徒会長が、吹奏楽部の練習で不在である代わりに、生徒会会計担当の前田先輩が司会側の席に着いている。
ボクらが会議机の前に並べられた椅子に腰を下ろすと、前田先輩が確認をとる。
「副会長、白草さんたちが来てくれたけど、これで全員でイイの~?」
その問いかけに、生徒会副会長にして広報部の花金鳳花部長が、無言でうなずくと、会計担当の先輩がミーティング開始の宣言を行った。
「そいじゃ、二回目のPR動画コンテスト連絡会を始めよう~! あたしは、生徒会長の代わりに、連絡会に出席することになった三年の前田だよ。会計を担当しているから、お金が掛かりそうなことは、あたしに相談してね~」
ざっくばらんな口調で語る先輩の語り口に、少し緊張がほぐれる。
いつもは、ミーティングの実質的な進行役になっている生徒会長が居ないので、生徒会の副会長である鳳花部長が、淡々と進行を務める。
「みんな、資料の提出ありがとう。今日の期限までに全チームの提出物が揃って嬉しいわ。じゃあ、早速だけど、チームごとに企画案を聞かせてもらおうかしら……まずは、広報部の所属者が二人いる黒田くんのチームからお願い」
鳳花部長にうながされて、竜司が腰を上げて、生徒会専用のノートPCの前に移動した。
壁を使うだけの放送室とは違い、天井から吊り下げられたホワイトスクリーンに投影されたスライドショーの資料のトップページには、竜司たちが作ったと思われる
『広報部Presents 芦宮高校PR Vtuber化計画』
というポップな文字が踊っていた。
表紙スライドに描かれたその文字列が目に入った瞬間、
(やられた! なるほど、そう来たか……)
と、ボクは腕を組み、天井を仰いだ。
付き合いが長いだけに、竜司たちの考えることは、手に取るように理解る。
ボクにとっては、もう説明を聞くまでもないことなんだけど、この日のために準備をしてきたと思われる親友は、自分たちの企画のプレゼンテーションを開始した。
「学校のクラブ活動をPRする動画ということで、オレたちのチームは、動画サイトで流行っていながら、たぶん、学校紹介などではあまり活用されていないアバターを利用し、Vtuberになりきって、クラブ紹介をしようと考えました」
竜司は、そう言って一枚目のスライドを表示させ、説明を続ける。
「いまや、Vtuberは、芸能人やスポーツ選手と同じくらい、10代の男女から熱く指示される存在です。そのVtuberになりきることができる環境も、LIVE 2Dのアバターを簡単に作成可能なツールが揃っていることで難しくありません」
二枚目のスライドには、《今すぐVtuberになれる! お手軽ツールを徹底紹介》というサイトを参考資料した、アバター作成用のツールが紹介されていた。
「そして、我が広報部には、Vtuberに欠かせないトークスキルを持った、期待の新人・佐倉桃華が入部しました! 彼女の話術で、クラブの魅力をタップリ紹介しようと、オレたちのチームは考えています」
竜司が、そこまで説明し終えると、佐倉さんが自分のスマホをかざした。
彼女が手にしている6・1インチのディスプレイには、桃色の髪の毛が印象的な少女キャラのアバターが映し出されている。
そして、佐倉さんが、こうしたキャラクター特有の少し鼻にかかったような声で、
「こんにちは~! 芦宮高校非公式Vtuberの芦宮サクラで~す。これから、わたしたちの高校のクラブを紹介してくから、ヨロシクね~」
と、やや大げさなジェスチャー付きで話し出すと、スマホの画面のアバターも、佐倉さんの顔や手の動作に合わせて動き出した。
「ほお~」
「おぉ~」
期せずして、生徒会のメンバーから声が上がった。
「いま、スマホだけでも、こんなことまで出来るんだ? いや~、スゴい時代だね~」
前田先輩が、感嘆の声を上げると、書紀担当の生野先輩が、竜司たちに問いただすように質問する。
「たしかに、すごい技術だと思いますが……こういうサービスは、お金が掛かるんじゃないですか? それと、パソコンで利用できるアプリの方が、のちのち便利なのでは?」
冷静な先輩のツッコミにも、あらかじめ、その質問がされることを予想していたのか、竜司は余裕の表情で、返答する。
「その点については、心配ありません。このnizino Liveのサービスは、基本無料で利用可能ですし、パソコン版は、WindowsPCにも対応していますから」
「なるほど、それなら問題なさそうですね」
生野先輩が、会計係の前田先輩と副会長の鳳花先輩に確認する。
「ちなみに、現在の初期段階で、芦宮サクラは、芦宮高校非公式のVtuberという設定で、公式キャラクター化を目指しているという背景で、ストーリー性を持たせるようにしてます」
竜司が追加の説明を行いながら、スライドのページを操作すると、Vtuber芦宮サクラの身長や生年月日・血液型などが記されたプロフィールが表示された。
「ハハハ……そこまで作り込んでるんだ……」
苦笑しながら前田先輩は語り、我が部の部長である鳳花先輩は、後輩たちの企画案に満足したようすで、うなずきながら、ふたりに声をかける。
「ありがとう。黒田くん、佐倉さん。私は、こういったことには詳しくないのだけど……とても、興味深いアイデアだと思うわ。完成した作品を楽しみにさせてもらうわね」
緊張から開放されたことと、鳳花部長にアイデアを認められたという喜びがあったのだろう、竜司と佐倉さんの表情には、笑みがこぼれている。
ただ――――――。
そんな和やかな空気を切り裂くように、
「わたし、ちょっと気になることがあるんですけど……!」
と、腕を組みながら、苛立ちを隠せないように発言する女子生徒の姿があった。
寿生徒会長が、吹奏楽部の練習で不在である代わりに、生徒会会計担当の前田先輩が司会側の席に着いている。
ボクらが会議机の前に並べられた椅子に腰を下ろすと、前田先輩が確認をとる。
「副会長、白草さんたちが来てくれたけど、これで全員でイイの~?」
その問いかけに、生徒会副会長にして広報部の花金鳳花部長が、無言でうなずくと、会計担当の先輩がミーティング開始の宣言を行った。
「そいじゃ、二回目のPR動画コンテスト連絡会を始めよう~! あたしは、生徒会長の代わりに、連絡会に出席することになった三年の前田だよ。会計を担当しているから、お金が掛かりそうなことは、あたしに相談してね~」
ざっくばらんな口調で語る先輩の語り口に、少し緊張がほぐれる。
いつもは、ミーティングの実質的な進行役になっている生徒会長が居ないので、生徒会の副会長である鳳花部長が、淡々と進行を務める。
「みんな、資料の提出ありがとう。今日の期限までに全チームの提出物が揃って嬉しいわ。じゃあ、早速だけど、チームごとに企画案を聞かせてもらおうかしら……まずは、広報部の所属者が二人いる黒田くんのチームからお願い」
鳳花部長にうながされて、竜司が腰を上げて、生徒会専用のノートPCの前に移動した。
壁を使うだけの放送室とは違い、天井から吊り下げられたホワイトスクリーンに投影されたスライドショーの資料のトップページには、竜司たちが作ったと思われる
『広報部Presents 芦宮高校PR Vtuber化計画』
というポップな文字が踊っていた。
表紙スライドに描かれたその文字列が目に入った瞬間、
(やられた! なるほど、そう来たか……)
と、ボクは腕を組み、天井を仰いだ。
付き合いが長いだけに、竜司たちの考えることは、手に取るように理解る。
ボクにとっては、もう説明を聞くまでもないことなんだけど、この日のために準備をしてきたと思われる親友は、自分たちの企画のプレゼンテーションを開始した。
「学校のクラブ活動をPRする動画ということで、オレたちのチームは、動画サイトで流行っていながら、たぶん、学校紹介などではあまり活用されていないアバターを利用し、Vtuberになりきって、クラブ紹介をしようと考えました」
竜司は、そう言って一枚目のスライドを表示させ、説明を続ける。
「いまや、Vtuberは、芸能人やスポーツ選手と同じくらい、10代の男女から熱く指示される存在です。そのVtuberになりきることができる環境も、LIVE 2Dのアバターを簡単に作成可能なツールが揃っていることで難しくありません」
二枚目のスライドには、《今すぐVtuberになれる! お手軽ツールを徹底紹介》というサイトを参考資料した、アバター作成用のツールが紹介されていた。
「そして、我が広報部には、Vtuberに欠かせないトークスキルを持った、期待の新人・佐倉桃華が入部しました! 彼女の話術で、クラブの魅力をタップリ紹介しようと、オレたちのチームは考えています」
竜司が、そこまで説明し終えると、佐倉さんが自分のスマホをかざした。
彼女が手にしている6・1インチのディスプレイには、桃色の髪の毛が印象的な少女キャラのアバターが映し出されている。
そして、佐倉さんが、こうしたキャラクター特有の少し鼻にかかったような声で、
「こんにちは~! 芦宮高校非公式Vtuberの芦宮サクラで~す。これから、わたしたちの高校のクラブを紹介してくから、ヨロシクね~」
と、やや大げさなジェスチャー付きで話し出すと、スマホの画面のアバターも、佐倉さんの顔や手の動作に合わせて動き出した。
「ほお~」
「おぉ~」
期せずして、生徒会のメンバーから声が上がった。
「いま、スマホだけでも、こんなことまで出来るんだ? いや~、スゴい時代だね~」
前田先輩が、感嘆の声を上げると、書紀担当の生野先輩が、竜司たちに問いただすように質問する。
「たしかに、すごい技術だと思いますが……こういうサービスは、お金が掛かるんじゃないですか? それと、パソコンで利用できるアプリの方が、のちのち便利なのでは?」
冷静な先輩のツッコミにも、あらかじめ、その質問がされることを予想していたのか、竜司は余裕の表情で、返答する。
「その点については、心配ありません。このnizino Liveのサービスは、基本無料で利用可能ですし、パソコン版は、WindowsPCにも対応していますから」
「なるほど、それなら問題なさそうですね」
生野先輩が、会計係の前田先輩と副会長の鳳花先輩に確認する。
「ちなみに、現在の初期段階で、芦宮サクラは、芦宮高校非公式のVtuberという設定で、公式キャラクター化を目指しているという背景で、ストーリー性を持たせるようにしてます」
竜司が追加の説明を行いながら、スライドのページを操作すると、Vtuber芦宮サクラの身長や生年月日・血液型などが記されたプロフィールが表示された。
「ハハハ……そこまで作り込んでるんだ……」
苦笑しながら前田先輩は語り、我が部の部長である鳳花先輩は、後輩たちの企画案に満足したようすで、うなずきながら、ふたりに声をかける。
「ありがとう。黒田くん、佐倉さん。私は、こういったことには詳しくないのだけど……とても、興味深いアイデアだと思うわ。完成した作品を楽しみにさせてもらうわね」
緊張から開放されたことと、鳳花部長にアイデアを認められたという喜びがあったのだろう、竜司と佐倉さんの表情には、笑みがこぼれている。
ただ――――――。
そんな和やかな空気を切り裂くように、
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