初恋♡リベンジャーズ

遊馬友仁

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第三部

第2章〜共鳴せよ! 市立芦宮高校文芸部〜②

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 5月30日(月)

 週が明けた月曜日の放課後――――――。

 芦宮《あしのみや》高校PR動画コンテストの第二回目の連絡会に参加するべく、教室を出たボクたちは、新館D棟の最上階にある生徒会室に向かう。

 前回までは、広報部の活動拠点である放送室でミーティングを行っていたけど、今回の企画が終わるまで、竜司たちのチームが優先的に放送室を使用すること、各チームの機密保持のため、二回目の連絡会から会議やミーティングなどは、生徒会室を利用させてもらえることになったそうだ。

 また、今回は、各チームの動画制作案が出揃ったということで、提出した資料の内容確認のために、部活の練習に忙しい紅野こうのさん以外のメンバーが集まることになった。

 竜司と白草しろくささん、天竹あまたけさんと連れ立って生徒会室に向かう途中、案の定、ボクらの前を歩く白草さんが、竜司にカラミだす。

「ねぇねぇ、クロ! クロたちは、どんな内容で動画を作るの?」

「それは、今日の連絡会での報告を楽しみにしておいてくれ! まあ、いまの段階で言えるのは、内容だってことだな」

 竜司は、何気なく返答しただけのようなきがするんだけど、いったい、ナニが気に入らないのか、白草さんは、急に不機嫌になった。
 彼女の声のトーンは、一段低くなり、ボクらの歩く廊下には、不穏な空気が漂いだす。

「ふ~ん……ねぇ……それって、あの子が、自分で言ってるだけ? それとも、クロも同じように思ってるの?」

「そりゃ、だからな! モモカの特性を活かすには、あの方法が……」

 その言葉を最後まで言い終わらないうちに、

「ぎゃあああ!」

と、友人が悲鳴をあげた。

「なにするんだシロ! 急に足を踏みつけてきて!!」

「あっ! ゴメン~! わたしったら、脚が長いから、ついクロの足元まで伸ばしちゃった」

「いや、今のは、どう見てもワザとだろ!?」

 抗議の声をあげる竜司に対して、白草さんは、どこ吹く風と言った感じで、クラスメートの言葉を平然と受け流している。

「まったく……いきなり、なんなんだよ……!?」

 竜司は、ブツブツと言いながらも、気を取り直したように、白草さんに質問をぶつけた?

「ところでさ、シロたちの方は、どうなんだ? 一年の宮野のようすだと、ずいぶん、自信があるみたいじゃないか?」

 クラスメートのその質問に、彼女は、ツンと澄ました表情で応じる。

「クロたちは、秘密主義みたいだもんね! わたしたちだけ内容を教えるって言うのもなぁ~。でも、ヒントくらいは教えてあげる! わたしたちの企画は、わたしと雪乃、そして、ダンス部の魅力全開の内容にするつもり……あ~、動画を見た男子全員が、わたしたちの魅力のとりこになっちゃったら、どうしよう?」

 白草さんの言葉を耳にした竜司は、苦笑しながら返答する。

「相変わらず、スゴイ自信だな……その余裕と優越感を少し分けてほしいくらいだ!」

 白草さんの「」という親友の言葉に対して、同意するようにボクも深くうなずきつつ、

(まったく……ふたりとも廊下で歩きながら、よく痴話喧嘩なんてできるな……)

と、あきれながら、感心してしまう。
 すると、こちらのようすを観察していたのか、隣を歩く天竹さんが、ボクにだけ聞こえるような声で話しかけてきた。

「黒田くんの言うように、白草さんの唯我独尊ぶりは、今日も平常運転ですね」

「うん……今どきの言葉で言えば、『安定の……』ってヤツだね」

 天竹さんの言葉に、ボクは同意してうなずくと、彼女は、「はい!」と、返答したあと、少し自嘲するような表情で、こうつけ加えた。

「そして、私たちのことなんて、歯牙にも掛けていない、ということも……」

 たしかに、いまの白草さんは、竜司と佐倉さんのことで頭がいっぱいで、ボクらのチームについては、ほとんど、問題にしていないだろう。

 それはそれで、気が楽になる面はあるけど、というのは、なんだか気分的に面白くない。

 そんな風に考えていると、ボクの気持ちを代弁するように、天竹さんが言葉を続けた。
 
「白草さんや佐倉さんに経験で劣ることは事実だと思いますが……まったく気にされていない、というのは、少ししゃくさわりますね」

 彼女の言葉に、再び賛同していることを示すように、ボクは無言で大きくうなずく。
 そして、今回の企画のパートナーであるクラスメートに、小声で語りかけた。

「とにかく、今日の連絡会で、白草さんのチームと竜司のチームの企画案を探ってから、ボクたちも出来る限りの対策を練ろう!」

 ボクの言葉に、天竹さんは、薄く微笑みながら、うなずく。

「はい、私も、白草さんたちに舐められたまま終わりたくは無いですから……」

 いままで、彼女のことは、口数の少ない文化系女子だと思っていたんだけど――――――。

 どうやら、それだけでなく、芯の強さや負けず嫌いな側面もあるようだ。
 そんな天竹さんのことを少し心強く感じながら、ボクたちは、生徒会室に歩みを進めた。
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