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無駄吠えの躾
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闇医者のところへ友弥を迎えにいけば、入り口で佐々木が涼を出迎えた。佐々木が自分を見て驚愕と微苦笑を浮かべるのが見えていたが涼には気にする余裕もない。
「友弥は?」
狭い隠れ家を見渡しながら聞けば、佐々木は治療中だと言う。すぐに姿が見えないことがまた苛立って仕方がない。舌を打って腕を組む。壁に寄りかかって奥を睨んでいれば、佐々木は宥めるように隣に背をつけた。
「あいつは一人で帰れるって言っとった。俺が無理やり連れてきただけやからな」
言外に友弥が佐々木を頼ってきたわけではないからあいつを責めてやるなと言っているのが感じられた。しかし問題は友弥が自分達を最後まで頼ろうとしなかったことだ。佐々木に擁護されているのも面白くなく、何の慰めにもならない。
「知ってる。これが初めてじゃない」
自分の足元を睨みながら涼は低い声を出す。単身で潜入することが多いため、友弥は危険にさらされることが多い。怪我をすることもあれば捕らえられることもある。その中で救援要請が来るのは余程深刻な状況くらいだ。ぐったりとして帰ってきたかと思えば、依頼は達成したと満足そうに言ってくる始末だ。今回も仕事は完遂したらしいが自分達にとってそんなものは瑣末事だ。
「だからって殴んなよ? 結構参っとったからな」
殺気を隠す気もない様子の涼に、仕方のないやつだと佐々木はそう言うに留めた。わかってる、と涼は答えるが部外者に口を挟まれたくないと裏の声が聞こえてきそうだ。
しばらく黙って待っていると、奥からふらりと白い顔が覗いた。涼は勢いよく顔を上げ、そちらを捉えた。話に聞いていた通り、友弥は左腕を三角巾で吊っていた。体の至る所に包帯が巻かれていて細かい怪我も多いことがわかる。
「毒は?」
「もう平気」
涼が短く聞くと、友弥ははっきりとした調子で答えた。どこで得たのか友弥は毒物の耐性があって大抵大事には至らない。
涼の冷たい目も予想の範疇だったのかうろたえることなく正面から受け止めて、友弥はいつも通りの顔をしていた。
「サッキーありがとね」
友弥はそう言って見守っていた佐々木に声をかける。
「おう。まあちょっとは危ない橋渡ったし、謝礼くらいは欲しいけどな」
佐々木が冗談めかしていえば、また持ってく、と友弥が柔らかく答えた。涼は闇医者に金を支払うと友弥を連れてすぐその場を離れた。佐々木に目もくれない涼の様子に、ごめんね、と友弥が小さく謝りながら横を抜けていく。
足早に出ていく涼とその後ろを付いていく友弥の背中を見送って佐々木は詰めていた息を大きく吐き出すのだった。
「友弥は?」
狭い隠れ家を見渡しながら聞けば、佐々木は治療中だと言う。すぐに姿が見えないことがまた苛立って仕方がない。舌を打って腕を組む。壁に寄りかかって奥を睨んでいれば、佐々木は宥めるように隣に背をつけた。
「あいつは一人で帰れるって言っとった。俺が無理やり連れてきただけやからな」
言外に友弥が佐々木を頼ってきたわけではないからあいつを責めてやるなと言っているのが感じられた。しかし問題は友弥が自分達を最後まで頼ろうとしなかったことだ。佐々木に擁護されているのも面白くなく、何の慰めにもならない。
「知ってる。これが初めてじゃない」
自分の足元を睨みながら涼は低い声を出す。単身で潜入することが多いため、友弥は危険にさらされることが多い。怪我をすることもあれば捕らえられることもある。その中で救援要請が来るのは余程深刻な状況くらいだ。ぐったりとして帰ってきたかと思えば、依頼は達成したと満足そうに言ってくる始末だ。今回も仕事は完遂したらしいが自分達にとってそんなものは瑣末事だ。
「だからって殴んなよ? 結構参っとったからな」
殺気を隠す気もない様子の涼に、仕方のないやつだと佐々木はそう言うに留めた。わかってる、と涼は答えるが部外者に口を挟まれたくないと裏の声が聞こえてきそうだ。
しばらく黙って待っていると、奥からふらりと白い顔が覗いた。涼は勢いよく顔を上げ、そちらを捉えた。話に聞いていた通り、友弥は左腕を三角巾で吊っていた。体の至る所に包帯が巻かれていて細かい怪我も多いことがわかる。
「毒は?」
「もう平気」
涼が短く聞くと、友弥ははっきりとした調子で答えた。どこで得たのか友弥は毒物の耐性があって大抵大事には至らない。
涼の冷たい目も予想の範疇だったのかうろたえることなく正面から受け止めて、友弥はいつも通りの顔をしていた。
「サッキーありがとね」
友弥はそう言って見守っていた佐々木に声をかける。
「おう。まあちょっとは危ない橋渡ったし、謝礼くらいは欲しいけどな」
佐々木が冗談めかしていえば、また持ってく、と友弥が柔らかく答えた。涼は闇医者に金を支払うと友弥を連れてすぐその場を離れた。佐々木に目もくれない涼の様子に、ごめんね、と友弥が小さく謝りながら横を抜けていく。
足早に出ていく涼とその後ろを付いていく友弥の背中を見送って佐々木は詰めていた息を大きく吐き出すのだった。
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