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ちびっ子は冒険者編(3)

ここなら簡単に見つかるぞ!

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「おおー。なんか、すごくキレイな場所に着いたな!」
「薬草の自生を大量に確認した。素晴らしい場所」
「さすが、エルトだな。百五十本の薬草も、ここなら簡単に見つかるぞ!」
「よ、よかった……」

 リオーネとナニのはずんだ会話を聞いて、エルトは少し安心した。

 ちょっとだけ、帝都からは離れてしまった……ような気もするが、ここはまだ、帝都冒険者ギルドの管轄内で間違いない。
 昨日、ギンフウの書斎で地図を確認したらから間違いようがなかった。

 ふたりとも手放しで喜んでくれているのが、とても嬉しい。と、エルトは思った。
 エルトの顔に笑顔が浮かぶ。

「……ちょ、ちょっと、待ってくれるかな?」

 帝都をでてからのことを説明しはじめたリオーネを、慌てたようなフィリアの声が遮った。

「なんだよ?」

 せっかく、自分たちの活躍を自慢できると思ったのに、いきなり話の腰を折られてしまい、リオーネの機嫌がものすごく悪くなる。

「あ、ゴメンね。少し、確認したいんだけど……」
「なんだよ?」
「もしかして、エルトは帝都から一回で惑わしの森に【転移】できたのかな? 何回かにわけて【転移】したのではなくて?」
「そうだけど? それがなにか問題あるのか?」

 ルースギルド長は『冒険者登録が終わってから』の話を希望したのだが、いきなり、現地の話になってしまった。
 帝都から現場へ移動する話が、ごそっと抜け落ちている。
 
 きょとんとした顔をしているリオーネに、「おおありだよ!」と詰め寄りたいのをフィリアはグッと堪える。

 子どもたちの基準がおかしすぎる。
 先程から胃の辺りを押さえているルースの反応を探るが、ギルド長は天井を見上げていて、表情まではわからなかった。

「えっと……【転移】魔法を使って、長距離を移動する場合は、何度か途中で休みながら、【転移】するんだよ……普通はね」

 座標さえわかれば、未踏の場所にも移動できる便利な【転移】魔法だが、魔力消費が多いわりには、移動距離はそれほど多くない。

 魔法を使って移動する場合、通常は【転移】の下位魔法にあたる【移動】魔法を使う。
 【移動】魔法で一旦、自分が以前に行ったことがある場所にまで移動して距離を稼ぎ、そこから【転移】魔法で目的地に跳ぶ、という方法がとられるのだ。

 それでも目的地に届かない場合は、中継地点を設定し、何回か【転移】魔法を使用することになる。

 術者の魔力消費を抑える目的もあるが、それ以上に、大量の魔力にあてられてしまう同行者の負荷を回避するためだ。
 魔法で長距離を一気に移動することは、忌避されている。……のが、一般的だ。

「……ボクなにか悪いことした?」

 フィリアの顔色をうかがうように、エルトが見上げる。前髪越しに見え隠れする潤んだ瞳にまっすぐ見つめられ、フィリアが大きく息を呑む。

 プランBという謎な単語が、唐突に思い出された。

 確かに、こんな風に目をウルウルされたら、どんな理不尽なことであっても無条件で許してしまうだろう。

「ううん。エルトのすごさを改めて痛感しだだけだから……」

 そこは教え諭すところだろ……という、ギルド長の心の声が聞こえたような気がしたが、気づかなかったふりをする。

 フィリアは話の腰を折ってしまったことを再度謝罪し、リオーネに話の続きを促した。
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