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Episode38 城下町の祭りへ④
しおりを挟むガタガタガタ……
情けないことに、ボクの身体は震え始めてしまった。
そしてそれを止める事も出来ない……
「大丈夫……あなたは私が守るから」
「お、お姉ちゃん……」
僕よりちょっと背が高い位で……とても戦ったり出来る様には見えない夜美ちゃん。
本当に大丈夫なのだろうか?
「へへっ……俺らと少し遊んでってくれたら、この道通してやってもいいんだぜ……」
しかし金髪の男が夜美ちゃんの肩に手を伸ばす時だった。
パシィィィィッ……
「ぐぁっ……」
凄い音が鳴り響き男がうずくまる。ボクには何が起こったのかさっぱり分からなかったけど、男性は片方の手首を握りうめき声をあげていた。
「汚ならしい手で触らないで欲しいわね……」
「て、てめえらっ!」
「あ、兄貴ぃっ……」
チンッ、チンッ、ガチャ…
後ろにいた人達が腰の剣を引き抜いて一斉に構える。
「ハァッ……本当に面倒ね……」
スルッ、スルッ…
夜美ちゃんはスカートの片側を太腿辺りまで捲り上げていった。
露になった真っ白な太腿には、サバイバルナイフの様な物がバンドでとめられている。
夜美ちゃんはそれを取り出すとその切っ先を男達に向けた。
「手加減は……出来ないかもしれないわよ……」
その冷たいトーンの声に一瞬背筋が寒くなった。
「なめるなァァッ!」
長剣を抜いた一人の男が夜美ちゃんに襲いかかる。
だが……
チィィィーン…
カランッ…
「えっ?」
早すぎてあまりよくは見え無かったが、遅くは夜美ちゃんが男の長剣をナイフでさばいただけだ。
さばかれて剣を落とした男も、何が起きたんだ? みたいな顔をしながら自分の手首を押さえている。
「一斉にかかれぇぇぇぇ!!」
「「オオオォォォー」」
一度に複数の男が夜美ちゃんに襲いかかったが……
チンッ…チンッ…
夜美ちゃんはさっきの男と同じ様に、目にも止まらぬ早さで男達の剣をさばき落としていく。
(すごい……僕と同じ男の娘なのに……)
しかしボクが夜美ちゃんの戦いに見いってしまっていた時だった。
グイッ…
「うっ……」
僕は後ろから首の辺りに腕を回されて羽交い締めにされてしまった。
「抵抗をやめろォォォォ!」
それは最初に夜美ちゃんに手首をはたかれたリーダー格の金髪の男だった。
「ゆ、ゆうとっ!」
夜美ちゃんは此方を振り向くと動きを止めた。
ズザッ!
そしてすぐに此方に踏み込む……
しかし……
ギュウゥゥ…
「うぅ……」
「おいっ、動いたらこの娘の首へし折っちまうぞッ!」
此方に近づこうとした夜美ちゃんの動きが止まった。
「さあぁて……こっちにも随分被害がでちまったしよぉ……慰謝料貰わねぇとなぁ……」
ゴクッ…
後ろからボクを羽交い締めにしている男が音を立てて唾を飲み込む。
「金じゃぁなくてよぉ……へへ……アンタの身体で…へへへっ」
周りでうずくまる男達は一斉に顔を上げると、夜美ちゃんに厭らしい視線を集中させた。
「ゆ、ゆうとを放しなさいッ!」
強気な口調で話す夜美ちゃんの表情に……微かに焦りのようなものを感じた。
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