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第2章 冒険
消えた少女たち
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二人がエヴェリーネに戻ってきたとき、涸れていた川に少しずつ水が戻ってきたということで、村中が大騒ぎになっていた。
「あっ!見て見て、帰ってきたわ!」
「おかげでもうすぐ水車が回せそうですよ!これでやっとまた仕事ができます!」
「ありがとう、本当にありがとう!!」
「お…お役に立ててよかったです…」
またもや村人に取り囲まれ今度は熱烈な感謝の言葉を浴びせられて苦笑いしていた久遠だったが、もうひとつの重大案件を忘れてはいなかった。
「それよりさっきおっしゃっていた赤さびの発生した小麦畑というのはどこですか?早く見たいので連れていってください」
すると例の初老の男性農夫が案内を買って出たので、久遠は静夜と、その後ろに興味津々の見物人たちをぞろぞろと引き連れて小麦畑に向かった。
「ここですよ」
「…ここ、って…ここ全部ですか!?」
農夫が腕をぐるりと回して示したのが見渡す限り一面の広大な小麦畑だったので、久遠は青ざめて絶句した。
「…」
静夜は黙って心配そうに久遠を見つめている。
「原礎がいっこうに来てくれないので病気が広がっちまったんですよ。どうかお願いします!」
農夫を先頭に、素朴で善良な人々の切々と懇願するような視線がぐさぐさと突き刺さってくる。
(ううっ、どうしよう…!!本当はいまいち自信持てないけど…引き受けたことは責任持って最後まできちんとやらなきゃ…!)
久遠は腹を決め、緊張しつつも力強くうなずいて見せた。
「頑張ります…やってみます!」
自分で自分に発破をかけ、畝の中にずんずんと進み出る。一番手近の麦の葉に浮き出た赤い斑の様子を見てから、視界に広がる茫々たる緑の麦の海に対峙した。
(大丈夫、この日のために今まで修行してきたんだ…僕だってちゃんとできる!それに、静夜に恥ずかしいとこ見せたくない…!)
どきどきと高鳴る胸を抑え、深呼吸をして雑念を払う。意識は身体の中心の煌源へ、遡るように集中し始める。そこから少しずつ力を引き出し、己が血と気の通う道筋に沿って流して、次第にぬくもりを帯び始める両掌を大きく開いて差し伸べた。
(僕は穂波じゃないけど、植物の礎は根っこが同じ…だからきっと届くはず。お願い、受け取って…!)
久遠が煌気を分け与えるにつれ、麦の穂の海から蛍か星のような光が無数に浮かび上がり、一帯を覆い尽くした。風も止まった中で彼の金髪と上衣の裾だけがゆらりと持ち上がり、身体の線からにじみ出した金色の光芒が天に伸びる糸のように立ち昇って、見つめる群衆の感嘆の声と溜め息を誘う。見ると、病んでいた麦畑は煌気の癒しを受けていつしか生き生きと光り輝く緑の海原に変わっていた。久遠が集中を解いて光が鎮まると、急いで自分の畑の様子を確かめに行った農夫たちが口々に歓声を上げて久遠に手を振った。
「治ってる!さびが消えてるぞ!」
「こっちもよ!」
それを聞いた村人たちの表情に笑顔の花が次々と咲いた。青い麦畑の真ん中に突然花畑が出現したかのような興奮と歓喜の中、ようやく緊張がほぐれた久遠は肺いっぱいの溜め息をついた。
(よかった…なんとかギリギリ…耐えた…)
静夜が歩み寄って久遠の肩に優しく手を置いた。
「お疲れ様。よくやったじゃないか」
「ありがと…。ちょっと無理かもって思ったけど…修行の成果が出せたみたい…」
精一杯の笑顔を見せる久遠と静夜の周りに村人たちが駆け寄って万歳と拍手が巻き起こった。
「ほんとにありがとう、原礎の少年くん!」
「このご恩は一生忘れないよ!」
「お礼なら何でもしますから、どうぞ何でもおっしゃってくださいまし!」
「ちょっ…あの、ちょっと待ってください!」
久遠はあくまで冷静に皆を制止し静かにさせた。そして人々の目と耳を自分に集めると、あえて忌憚のない現実を真摯に語った。
「確かに赤さび病は治しましたけど、今のはその場凌ぎの応急処置で、根本的な解決にはなりません。原因である黴も必死に生きてて、作物の病はその生存戦略の一環ですから。ただ皆さんの暮らしに悪影響が出ないように対策をすることはできます…残念ながら瑞葉の僕は専門ではないので、穂波の族になるべく早く来て対策を講ずるよう依頼します」
包み隠さずはっきりとそう言い切ると久遠は神妙に聞いている人々の目の前で足許に落ちていた緑の葉を一枚拾い、指先からにじませた煌気の光のインクでさらさらと何かを綴った。それからその葉にフッと息を吹きかけ、再び吹き始めた風に乗せて空に飛ばした。
「言文の葉です。穂波の同胞が近くにいれば応えてくれます…いつになるかはわかりませんけど」
人々は興奮の冷めた不安げな顔を見合わせていたが、誰かが人垣のどこかから声を張り上げた。
「この子の言うとおりだ!自然が相手なんだからしかたねぇ。今救ってもらった畑を大事に守りながら待ってるよ」
「…そうだな。今までだってちゃんとやってきたんだ。俺らならできるさ!なぁ!」
「ああ!ありがとうな、少年!」
穂波の族がいつ来てくれるかわからないという不安が完全に拭われたわけではなかったが、彼らも自然とともに生きる農家である。無責任だと非難され落胆させることを内心恐れていた久遠は、意外に好意的な反応が得られたことにホッと胸を撫で下ろした。一方、原礎でも農夫でもなくやや引いた立場で状況を見守っていた静夜は人知れずかすかに目を見張って久遠の横顔を眺めていた。…そのとき。
「…きゅ~…」
久遠は目を回した。その身体がいきなり脱力し、揺れ、傾いた。
「!!」
反射的に抱き止めた静夜の腕の中で、久遠はすでに固く瞑目している。
「わああっ!!大変だぁ!!」
「少年くん、どうしたの!?大丈夫!?」
「久遠…!久遠!!」
色めき立つ群衆の中、さしもの静夜も動揺して横たわる久遠に呼びかけると…。
「ぐー。ぐー」
「…眠ってます」
『…はあー…』
久遠以外の全員が溜め息をついた。静夜は言った。
「すみません、実は彼はまだ修行中の身なので…力を使い果たしてしまったのかもしれません」
「まあ、そうだったの!それはそれは、じゃあすごく頑張っちゃったのね」
「無理させちまって悪かったなあ」
「うちは宿屋ですからどうぞお休みになってください!さあ、こちらへ」
「ありがとうございます」
宿屋の主人の言葉に甘え、すやすや眠る久遠を抱いて運んでいく静夜だった。
村で一軒しかない宿屋の最上階の一番上等な部屋に担ぎ込まれた久遠は、あれからずっと寝返りさえ打たず、ふかふかの広いベッドの上で糸の切れた人形よろしくじっと横たわり熟睡している。昼前に倒れ、今はもう夕方だ。その間静夜は部屋から一歩も出ず久遠の側にいた。彼の様子が心配だというのが第一だったが、可愛らしく頑張り屋の原礎の少年と護衛らしき人間の剣士の噂を耳にした村人や旅人が二人をひと目見ようと大挙して宿の玄関に詰めかけている、と軽食を運んできた主人が伝えてくれたからでもあった。
静夜は窓辺の椅子に座ってレーヴンホルトの手入れをしながら目だけちらりと上げ、寝ている久遠を見た。
(やはりあまり一度に大量の煌気を使わせないよう気をつけなければいけないな…今日のことで久遠の力の容量がある程度量れたから、もし久遠が無理しそうだと思ったら止めに入るか…)
静夜は彼方が語ってくれた、幼い頃力を使い切ってその場で眠り込んでしまったという逸話を思い出していた。そして誰かに奉仕するために自分の限界の一線を見失ってしまう久遠を止めることもまた彼を守ることなのだとの心構えを新たにした。
日没が近づき、室温が下がり始めるのを感じた静夜は久遠のベッドに歩み寄り、起こさないよう気をつけながら毛布を重ねてやった。そっと寝顔を窺うと本当にまるでよくできた人形か、魔法にかかった眠り姫のようだ。思い返せば久遠は毎晩彼より遅くまで起きていて、毎朝先に起床していた。久遠が眠っている姿を見るのは意外にも今日が初めてだ。静夜は不思議な驚きと当惑に襲われて久遠の寝顔から目が離せなくなり、しばらく突っ立って見つめていた。
「…んん~…」
やがて久遠が身体をもぞもぞ動かし始めた。金縛りが解けたようだった。静夜はさっと目をそらして数歩下がった。下がった後で、なぜ目をそらす必要があるのか、自分の行動が不可解になってつい顔をしかめた。そうするうちに久遠はうっすらまぶたを開け、エメラルドの瞳をぱちぱちさせた。
「…へっ?あれ、えーと…」
「よく眠ってたな」
「静夜!」
我に返った久遠は上半身をガバッと起こすとがっくりうなだれ大きな溜め息を漏らした。
「あーあ、またやっちゃった…」
「具合はどうだ?」
「ぐっすり眠ったからもう大丈夫…だけど、ねえ、ちょっと僕の荷物から水筒取ってくれる?」
静夜から渡された革の水筒の中身を数口飲んでふうっと息をつく。
「それは?」
「煌礎水といって、煌気を補給し煌源を活性化させる特殊な泉の水だよ。と言っても独り立ちした原礎は飲まなくても全然平気で、せいぜい喉を潤す程度だけど、僕の力はこの歳で未だに赤ちゃん並みだから毎日少しずつ飲まないといけないんだ」
「そうか」
静夜の視線に耐えられそうになくて、久遠は手にした水筒にかこつけてじっとうつむいた。
「あれくらいの仕事でへろへろになっちゃうなんて…ほんとダメだな、僕…」
「駄目じゃない。少し張り切りすぎて無理をしただけだ」
「…でも」
結局静夜に恥ずかしいところを見せた上に迷惑をかけてしまったーー気落ちして下向きに垂れた金髪の頭を静夜は軽くぽんぽんとした。
「君は立派にやり遂げた。皆も喜んで、心から感謝してくれてる。胸を張っていい」
そんなふうに言ってもらえるとは思いもしなかった静夜の言葉に、もともとつぶらな久遠の両目がさらに大きく見開かれ、細かく震え出す。初めて感じる見知らぬ熱が頬に差し、胸の奥がぎゅっと痛くなった。
「静夜…あ…あ…」
いつもなら誰にでも簡単に言えるひと言がなぜかうまく出てこなくて、消え入りそうな声でぼそっと言った。
「…ありがと」
「うん」
静夜も言葉少なだが、その声は温かく、優しかった。
「ところで、ここは宿屋か?にしてもちょっと良すぎないか、この部屋。お代は大丈夫?」
「君が村のために頑張ってくれたから、とご主人のご厚意で宿泊も食事もすべて無料だそうだ。それから、君が気に入ったここの小麦のパンも好きなだけ食べてくれと」
「ほ、ほ、ほんと!?うん、食べる食べる!!」
最高のご褒美に久遠はぱあっと薔薇色の笑顔になった。
翌朝、休息をしっかり取り、食べたかったパンをたらふく食べて出発の準備をしていた二人の部屋に突然の訪問者があった。
「すみません、これから出立というときに…」
「何か?」
もしや飲み食いしすぎて大赤字を出してしまったかと青くなる二人に、訪問者ーー宿の主人はひとりの女性を引き合わせた。三十代半ばくらいで金髪の質素な女性だが、少し痩せて疲れている印象だ。
「実は…これは私の娘のエナと申しまして、ここから西に行ったダートンの町の家具職人に嫁いだのですが、これの娘…つまり私の孫娘のメグに大変なことが起きてるということで、腕の立つお二人の噂を聞いて朝一番の馬を飛ばして来たんです」
「突然すみません…ですが誰に相談したらいいかわからなくて…どうかお力をお貸しください」
エナは弱々しい声で言いながら深く頭を下げた。久遠と静夜は困り顔を見合わせた。確かに特別急ぐ旅ではないが、かと言って人間たち自身の問題や事件に何でもかんでも首を突っ込むつもりはないし、そんな余裕もない。だがエナの思い詰めてやつれた様子を見ると話すら聞かず無下に拒むのも忍びない。迷った久遠は静夜に助言を求めた。
「どうしよう?話だけでも聞いてみる?」
静夜は至って冷静にうなずいた。
「ご主人にはずいぶんお世話になったからな。まずは事情を伺って、その上で判断しよう」
久遠もその意見に賛成だったので、改めて父娘に向き直り承諾した。
「わかりました。とりあえずお話は伺います」
すると父と娘の間に安堵の笑みが輝いた。
「ありがとうございます…!実は、話というのは今ダートンで起きてる花嫁失踪事件についてなんです」
「失踪…?」
久遠の胸がどきりと高鳴り、静夜の目つきも険しくなる。エナが話を続ける。
「はい。事の発端は一か月ほど前です。町外れの山中にある大昔の遺構にどこからともなく謎の半獣半人の怪物が現れて棲み着き、一週間ごとにひとり、若い娘を花嫁として差し出せと要求してきたんです。従わなければ魔獣を差し向けて町を滅ぼす、と…。花嫁の条件はただひとつ、長い金髪であること…そしてこれまでにすでに三人の娘さんが犠牲に…」
「つまり失踪というのは、花嫁として怪物に差し出され、それきり行方不明になったということですか?」
「そうです…。花嫁は決められた夜、決められた山道をひとりで歩いてくるように言われて…誰の同行も許されないので、そうとしか…生きているのかどうかすらわかりません…それで…それで…」
エナが声と肩を震わせてうつむくと、その後を父親が引き取って続けた。
「そして何ともやりきれないことに、次に選ばれた四人目の花嫁が私の孫娘のメグなのです…メグは十六歳で母親譲りの長い金髪なので、条件に合致してしまったんです」
「そんな…ひどい…!」
思わず心を揺さぶられ、素直な感情を露わにする久遠の肩に静夜はそっと手を置く。彼の顔には場合によっては非情な判断も辞さないという冷徹な意思が保たれている。何しろ二人は正義と博愛の勇者でも怪物退治の英雄でもなく、まして久遠は煌気が弱い上に加減を知らない。自分が止めなければ宇内や彼方との約束を破ることになりかねないとの危惧は昨日の件でより強くなっていた。
「ああ、メグ…私から金髪を受け継いだばかりにこんな目に…夫や幼なじみのフィンは髪を切って短くするかいっそのこと黒く染めてしまえと言ったのですが、優しくて勇敢なメグは、三人もの女の子が勇気を出して花嫁に行ったのに、自分だけ逃げて知らん顔することはできないと頑として拒否して…私…もうどうすればいいか…」
「このままだとメグがどんなひどい目に遭わされるか…どうか事件を解決して私たちの可愛いメグを救ってやってください…お願いします…!」
人前であることも忘れてさめざめと嗚咽するエナを父親が抱きしめる。
「すごく…立派な、素晴らしいお嬢さんだと思います…」
「…久遠」
すっかり情に絆されて唇を噛みしめている久遠を背中に隠すようにして静夜は一歩前に出た。
「…おつらいお気持ちは理解します。ですが俺たちにもできる限り道を急ぐ理由があり、助けを求めて待ち続けている人がいるんです。それに原礎は…俺は人間ですが…原礎は人間たち自身の問題や事件のすべてに介入し助力することはできません。もしどうしてもとおっしゃるならこの地方を守護する騎士団か怪物退治専門の傭兵に依頼してください」
「静夜…!!」
「あの…お二人とも、今朝食堂で原礎の人捜しをしてるとおっしゃってましたよね。もしかしたら手がかりが見つかるかもしれませんよ」
「えっ!?」
久遠の顔がみるみる気色ばんだとき主人がおもむろに思いがけない言葉を返してきたので、二人は一瞬ぽかんとし、それから揃って同時に身を乗り出した。
「どういうことですか?何かご存じなんですか?」
「エナの話によると、実は三人の娘さんが失踪する間に、たまたま別々の時期にダートンに立ち寄った原礎の女性二人が調査と討伐を買って出てくださいまして。ただ二人とも山から戻らず消息不明で…花嫁たちと一緒の運命をたどった可能性も…」
原礎が巻き込まれていると判明した以上静夜には拒否する建前はない。静夜が苦々しい悔いと自己嫌悪の思いに臍を噛んでいるのをよそに久遠はさらに、もはやエナの襟首を摑みそうな勢いで彼女に詰め寄った。
「そ…その女性のどちらかひとりは僕とそっくりな顔をしてませんでしたか!?名前は!?永遠と言ってませんでしたか!?僕の双子の姉なんです!!」
「す、すみません、私は直接お会いしてませんのでお顔やお名前は…でも町長は確かお会いになってるはずです」
「じゃ、じゃあ早く町長に会って確かめないと!」
主人は温厚そうな見かけによらない利口な商売人の目つきで静夜をじっと見つめた。
「申し訳ありません、静夜様。私はけして情報を盾に取るつもりもお二人の目的につけ込むつもりもなかったのですが…ここは双方に利益の可能性があるということで、お引き受けいただけないでしょうか」
(すっかりやられたな…だが永遠さんが見つかる可能性があるなら話は別だ。むしろ情報提供に感謝しなければ…今後の関係性も考えて)
静夜はもやもやとする気持ちを払拭し、切り替え、毅然とした顔つきでうなずいた。
「…わかりました。そういうことでしたら、調べてみましょう。まずは一緒にダートンに向かって町長にお会いします」
久遠は待ちきれずにやる気満々の表情で静夜を見上げる。父娘も手を握り合って喜びと希望に涙している。
「ありがとうございます…!では私がご案内しますね!」
まだいくつもの不可解な点を残しつつ、エナと二人はエヴェリーネからダートンへと移動した。
「あっ!見て見て、帰ってきたわ!」
「おかげでもうすぐ水車が回せそうですよ!これでやっとまた仕事ができます!」
「ありがとう、本当にありがとう!!」
「お…お役に立ててよかったです…」
またもや村人に取り囲まれ今度は熱烈な感謝の言葉を浴びせられて苦笑いしていた久遠だったが、もうひとつの重大案件を忘れてはいなかった。
「それよりさっきおっしゃっていた赤さびの発生した小麦畑というのはどこですか?早く見たいので連れていってください」
すると例の初老の男性農夫が案内を買って出たので、久遠は静夜と、その後ろに興味津々の見物人たちをぞろぞろと引き連れて小麦畑に向かった。
「ここですよ」
「…ここ、って…ここ全部ですか!?」
農夫が腕をぐるりと回して示したのが見渡す限り一面の広大な小麦畑だったので、久遠は青ざめて絶句した。
「…」
静夜は黙って心配そうに久遠を見つめている。
「原礎がいっこうに来てくれないので病気が広がっちまったんですよ。どうかお願いします!」
農夫を先頭に、素朴で善良な人々の切々と懇願するような視線がぐさぐさと突き刺さってくる。
(ううっ、どうしよう…!!本当はいまいち自信持てないけど…引き受けたことは責任持って最後まできちんとやらなきゃ…!)
久遠は腹を決め、緊張しつつも力強くうなずいて見せた。
「頑張ります…やってみます!」
自分で自分に発破をかけ、畝の中にずんずんと進み出る。一番手近の麦の葉に浮き出た赤い斑の様子を見てから、視界に広がる茫々たる緑の麦の海に対峙した。
(大丈夫、この日のために今まで修行してきたんだ…僕だってちゃんとできる!それに、静夜に恥ずかしいとこ見せたくない…!)
どきどきと高鳴る胸を抑え、深呼吸をして雑念を払う。意識は身体の中心の煌源へ、遡るように集中し始める。そこから少しずつ力を引き出し、己が血と気の通う道筋に沿って流して、次第にぬくもりを帯び始める両掌を大きく開いて差し伸べた。
(僕は穂波じゃないけど、植物の礎は根っこが同じ…だからきっと届くはず。お願い、受け取って…!)
久遠が煌気を分け与えるにつれ、麦の穂の海から蛍か星のような光が無数に浮かび上がり、一帯を覆い尽くした。風も止まった中で彼の金髪と上衣の裾だけがゆらりと持ち上がり、身体の線からにじみ出した金色の光芒が天に伸びる糸のように立ち昇って、見つめる群衆の感嘆の声と溜め息を誘う。見ると、病んでいた麦畑は煌気の癒しを受けていつしか生き生きと光り輝く緑の海原に変わっていた。久遠が集中を解いて光が鎮まると、急いで自分の畑の様子を確かめに行った農夫たちが口々に歓声を上げて久遠に手を振った。
「治ってる!さびが消えてるぞ!」
「こっちもよ!」
それを聞いた村人たちの表情に笑顔の花が次々と咲いた。青い麦畑の真ん中に突然花畑が出現したかのような興奮と歓喜の中、ようやく緊張がほぐれた久遠は肺いっぱいの溜め息をついた。
(よかった…なんとかギリギリ…耐えた…)
静夜が歩み寄って久遠の肩に優しく手を置いた。
「お疲れ様。よくやったじゃないか」
「ありがと…。ちょっと無理かもって思ったけど…修行の成果が出せたみたい…」
精一杯の笑顔を見せる久遠と静夜の周りに村人たちが駆け寄って万歳と拍手が巻き起こった。
「ほんとにありがとう、原礎の少年くん!」
「このご恩は一生忘れないよ!」
「お礼なら何でもしますから、どうぞ何でもおっしゃってくださいまし!」
「ちょっ…あの、ちょっと待ってください!」
久遠はあくまで冷静に皆を制止し静かにさせた。そして人々の目と耳を自分に集めると、あえて忌憚のない現実を真摯に語った。
「確かに赤さび病は治しましたけど、今のはその場凌ぎの応急処置で、根本的な解決にはなりません。原因である黴も必死に生きてて、作物の病はその生存戦略の一環ですから。ただ皆さんの暮らしに悪影響が出ないように対策をすることはできます…残念ながら瑞葉の僕は専門ではないので、穂波の族になるべく早く来て対策を講ずるよう依頼します」
包み隠さずはっきりとそう言い切ると久遠は神妙に聞いている人々の目の前で足許に落ちていた緑の葉を一枚拾い、指先からにじませた煌気の光のインクでさらさらと何かを綴った。それからその葉にフッと息を吹きかけ、再び吹き始めた風に乗せて空に飛ばした。
「言文の葉です。穂波の同胞が近くにいれば応えてくれます…いつになるかはわかりませんけど」
人々は興奮の冷めた不安げな顔を見合わせていたが、誰かが人垣のどこかから声を張り上げた。
「この子の言うとおりだ!自然が相手なんだからしかたねぇ。今救ってもらった畑を大事に守りながら待ってるよ」
「…そうだな。今までだってちゃんとやってきたんだ。俺らならできるさ!なぁ!」
「ああ!ありがとうな、少年!」
穂波の族がいつ来てくれるかわからないという不安が完全に拭われたわけではなかったが、彼らも自然とともに生きる農家である。無責任だと非難され落胆させることを内心恐れていた久遠は、意外に好意的な反応が得られたことにホッと胸を撫で下ろした。一方、原礎でも農夫でもなくやや引いた立場で状況を見守っていた静夜は人知れずかすかに目を見張って久遠の横顔を眺めていた。…そのとき。
「…きゅ~…」
久遠は目を回した。その身体がいきなり脱力し、揺れ、傾いた。
「!!」
反射的に抱き止めた静夜の腕の中で、久遠はすでに固く瞑目している。
「わああっ!!大変だぁ!!」
「少年くん、どうしたの!?大丈夫!?」
「久遠…!久遠!!」
色めき立つ群衆の中、さしもの静夜も動揺して横たわる久遠に呼びかけると…。
「ぐー。ぐー」
「…眠ってます」
『…はあー…』
久遠以外の全員が溜め息をついた。静夜は言った。
「すみません、実は彼はまだ修行中の身なので…力を使い果たしてしまったのかもしれません」
「まあ、そうだったの!それはそれは、じゃあすごく頑張っちゃったのね」
「無理させちまって悪かったなあ」
「うちは宿屋ですからどうぞお休みになってください!さあ、こちらへ」
「ありがとうございます」
宿屋の主人の言葉に甘え、すやすや眠る久遠を抱いて運んでいく静夜だった。
村で一軒しかない宿屋の最上階の一番上等な部屋に担ぎ込まれた久遠は、あれからずっと寝返りさえ打たず、ふかふかの広いベッドの上で糸の切れた人形よろしくじっと横たわり熟睡している。昼前に倒れ、今はもう夕方だ。その間静夜は部屋から一歩も出ず久遠の側にいた。彼の様子が心配だというのが第一だったが、可愛らしく頑張り屋の原礎の少年と護衛らしき人間の剣士の噂を耳にした村人や旅人が二人をひと目見ようと大挙して宿の玄関に詰めかけている、と軽食を運んできた主人が伝えてくれたからでもあった。
静夜は窓辺の椅子に座ってレーヴンホルトの手入れをしながら目だけちらりと上げ、寝ている久遠を見た。
(やはりあまり一度に大量の煌気を使わせないよう気をつけなければいけないな…今日のことで久遠の力の容量がある程度量れたから、もし久遠が無理しそうだと思ったら止めに入るか…)
静夜は彼方が語ってくれた、幼い頃力を使い切ってその場で眠り込んでしまったという逸話を思い出していた。そして誰かに奉仕するために自分の限界の一線を見失ってしまう久遠を止めることもまた彼を守ることなのだとの心構えを新たにした。
日没が近づき、室温が下がり始めるのを感じた静夜は久遠のベッドに歩み寄り、起こさないよう気をつけながら毛布を重ねてやった。そっと寝顔を窺うと本当にまるでよくできた人形か、魔法にかかった眠り姫のようだ。思い返せば久遠は毎晩彼より遅くまで起きていて、毎朝先に起床していた。久遠が眠っている姿を見るのは意外にも今日が初めてだ。静夜は不思議な驚きと当惑に襲われて久遠の寝顔から目が離せなくなり、しばらく突っ立って見つめていた。
「…んん~…」
やがて久遠が身体をもぞもぞ動かし始めた。金縛りが解けたようだった。静夜はさっと目をそらして数歩下がった。下がった後で、なぜ目をそらす必要があるのか、自分の行動が不可解になってつい顔をしかめた。そうするうちに久遠はうっすらまぶたを開け、エメラルドの瞳をぱちぱちさせた。
「…へっ?あれ、えーと…」
「よく眠ってたな」
「静夜!」
我に返った久遠は上半身をガバッと起こすとがっくりうなだれ大きな溜め息を漏らした。
「あーあ、またやっちゃった…」
「具合はどうだ?」
「ぐっすり眠ったからもう大丈夫…だけど、ねえ、ちょっと僕の荷物から水筒取ってくれる?」
静夜から渡された革の水筒の中身を数口飲んでふうっと息をつく。
「それは?」
「煌礎水といって、煌気を補給し煌源を活性化させる特殊な泉の水だよ。と言っても独り立ちした原礎は飲まなくても全然平気で、せいぜい喉を潤す程度だけど、僕の力はこの歳で未だに赤ちゃん並みだから毎日少しずつ飲まないといけないんだ」
「そうか」
静夜の視線に耐えられそうになくて、久遠は手にした水筒にかこつけてじっとうつむいた。
「あれくらいの仕事でへろへろになっちゃうなんて…ほんとダメだな、僕…」
「駄目じゃない。少し張り切りすぎて無理をしただけだ」
「…でも」
結局静夜に恥ずかしいところを見せた上に迷惑をかけてしまったーー気落ちして下向きに垂れた金髪の頭を静夜は軽くぽんぽんとした。
「君は立派にやり遂げた。皆も喜んで、心から感謝してくれてる。胸を張っていい」
そんなふうに言ってもらえるとは思いもしなかった静夜の言葉に、もともとつぶらな久遠の両目がさらに大きく見開かれ、細かく震え出す。初めて感じる見知らぬ熱が頬に差し、胸の奥がぎゅっと痛くなった。
「静夜…あ…あ…」
いつもなら誰にでも簡単に言えるひと言がなぜかうまく出てこなくて、消え入りそうな声でぼそっと言った。
「…ありがと」
「うん」
静夜も言葉少なだが、その声は温かく、優しかった。
「ところで、ここは宿屋か?にしてもちょっと良すぎないか、この部屋。お代は大丈夫?」
「君が村のために頑張ってくれたから、とご主人のご厚意で宿泊も食事もすべて無料だそうだ。それから、君が気に入ったここの小麦のパンも好きなだけ食べてくれと」
「ほ、ほ、ほんと!?うん、食べる食べる!!」
最高のご褒美に久遠はぱあっと薔薇色の笑顔になった。
翌朝、休息をしっかり取り、食べたかったパンをたらふく食べて出発の準備をしていた二人の部屋に突然の訪問者があった。
「すみません、これから出立というときに…」
「何か?」
もしや飲み食いしすぎて大赤字を出してしまったかと青くなる二人に、訪問者ーー宿の主人はひとりの女性を引き合わせた。三十代半ばくらいで金髪の質素な女性だが、少し痩せて疲れている印象だ。
「実は…これは私の娘のエナと申しまして、ここから西に行ったダートンの町の家具職人に嫁いだのですが、これの娘…つまり私の孫娘のメグに大変なことが起きてるということで、腕の立つお二人の噂を聞いて朝一番の馬を飛ばして来たんです」
「突然すみません…ですが誰に相談したらいいかわからなくて…どうかお力をお貸しください」
エナは弱々しい声で言いながら深く頭を下げた。久遠と静夜は困り顔を見合わせた。確かに特別急ぐ旅ではないが、かと言って人間たち自身の問題や事件に何でもかんでも首を突っ込むつもりはないし、そんな余裕もない。だがエナの思い詰めてやつれた様子を見ると話すら聞かず無下に拒むのも忍びない。迷った久遠は静夜に助言を求めた。
「どうしよう?話だけでも聞いてみる?」
静夜は至って冷静にうなずいた。
「ご主人にはずいぶんお世話になったからな。まずは事情を伺って、その上で判断しよう」
久遠もその意見に賛成だったので、改めて父娘に向き直り承諾した。
「わかりました。とりあえずお話は伺います」
すると父と娘の間に安堵の笑みが輝いた。
「ありがとうございます…!実は、話というのは今ダートンで起きてる花嫁失踪事件についてなんです」
「失踪…?」
久遠の胸がどきりと高鳴り、静夜の目つきも険しくなる。エナが話を続ける。
「はい。事の発端は一か月ほど前です。町外れの山中にある大昔の遺構にどこからともなく謎の半獣半人の怪物が現れて棲み着き、一週間ごとにひとり、若い娘を花嫁として差し出せと要求してきたんです。従わなければ魔獣を差し向けて町を滅ぼす、と…。花嫁の条件はただひとつ、長い金髪であること…そしてこれまでにすでに三人の娘さんが犠牲に…」
「つまり失踪というのは、花嫁として怪物に差し出され、それきり行方不明になったということですか?」
「そうです…。花嫁は決められた夜、決められた山道をひとりで歩いてくるように言われて…誰の同行も許されないので、そうとしか…生きているのかどうかすらわかりません…それで…それで…」
エナが声と肩を震わせてうつむくと、その後を父親が引き取って続けた。
「そして何ともやりきれないことに、次に選ばれた四人目の花嫁が私の孫娘のメグなのです…メグは十六歳で母親譲りの長い金髪なので、条件に合致してしまったんです」
「そんな…ひどい…!」
思わず心を揺さぶられ、素直な感情を露わにする久遠の肩に静夜はそっと手を置く。彼の顔には場合によっては非情な判断も辞さないという冷徹な意思が保たれている。何しろ二人は正義と博愛の勇者でも怪物退治の英雄でもなく、まして久遠は煌気が弱い上に加減を知らない。自分が止めなければ宇内や彼方との約束を破ることになりかねないとの危惧は昨日の件でより強くなっていた。
「ああ、メグ…私から金髪を受け継いだばかりにこんな目に…夫や幼なじみのフィンは髪を切って短くするかいっそのこと黒く染めてしまえと言ったのですが、優しくて勇敢なメグは、三人もの女の子が勇気を出して花嫁に行ったのに、自分だけ逃げて知らん顔することはできないと頑として拒否して…私…もうどうすればいいか…」
「このままだとメグがどんなひどい目に遭わされるか…どうか事件を解決して私たちの可愛いメグを救ってやってください…お願いします…!」
人前であることも忘れてさめざめと嗚咽するエナを父親が抱きしめる。
「すごく…立派な、素晴らしいお嬢さんだと思います…」
「…久遠」
すっかり情に絆されて唇を噛みしめている久遠を背中に隠すようにして静夜は一歩前に出た。
「…おつらいお気持ちは理解します。ですが俺たちにもできる限り道を急ぐ理由があり、助けを求めて待ち続けている人がいるんです。それに原礎は…俺は人間ですが…原礎は人間たち自身の問題や事件のすべてに介入し助力することはできません。もしどうしてもとおっしゃるならこの地方を守護する騎士団か怪物退治専門の傭兵に依頼してください」
「静夜…!!」
「あの…お二人とも、今朝食堂で原礎の人捜しをしてるとおっしゃってましたよね。もしかしたら手がかりが見つかるかもしれませんよ」
「えっ!?」
久遠の顔がみるみる気色ばんだとき主人がおもむろに思いがけない言葉を返してきたので、二人は一瞬ぽかんとし、それから揃って同時に身を乗り出した。
「どういうことですか?何かご存じなんですか?」
「エナの話によると、実は三人の娘さんが失踪する間に、たまたま別々の時期にダートンに立ち寄った原礎の女性二人が調査と討伐を買って出てくださいまして。ただ二人とも山から戻らず消息不明で…花嫁たちと一緒の運命をたどった可能性も…」
原礎が巻き込まれていると判明した以上静夜には拒否する建前はない。静夜が苦々しい悔いと自己嫌悪の思いに臍を噛んでいるのをよそに久遠はさらに、もはやエナの襟首を摑みそうな勢いで彼女に詰め寄った。
「そ…その女性のどちらかひとりは僕とそっくりな顔をしてませんでしたか!?名前は!?永遠と言ってませんでしたか!?僕の双子の姉なんです!!」
「す、すみません、私は直接お会いしてませんのでお顔やお名前は…でも町長は確かお会いになってるはずです」
「じゃ、じゃあ早く町長に会って確かめないと!」
主人は温厚そうな見かけによらない利口な商売人の目つきで静夜をじっと見つめた。
「申し訳ありません、静夜様。私はけして情報を盾に取るつもりもお二人の目的につけ込むつもりもなかったのですが…ここは双方に利益の可能性があるということで、お引き受けいただけないでしょうか」
(すっかりやられたな…だが永遠さんが見つかる可能性があるなら話は別だ。むしろ情報提供に感謝しなければ…今後の関係性も考えて)
静夜はもやもやとする気持ちを払拭し、切り替え、毅然とした顔つきでうなずいた。
「…わかりました。そういうことでしたら、調べてみましょう。まずは一緒にダートンに向かって町長にお会いします」
久遠は待ちきれずにやる気満々の表情で静夜を見上げる。父娘も手を握り合って喜びと希望に涙している。
「ありがとうございます…!では私がご案内しますね!」
まだいくつもの不可解な点を残しつつ、エナと二人はエヴェリーネからダートンへと移動した。
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