静かな夜をさがして

左衛木りん

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第2章 冒険

花嫁衣装は突然に

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二人はエナに連れられてダートン町長の屋敷を訪れた。

町で一番立派な屋敷は外観も内装も非常に洗練されていて清掃と手入れが行き届いており、メイドや小間使いたちは恵まれた環境と待遇で気持ち良く働いているようだった。

「こちらです」

案内役のメイドが執務室の扉を開けると、上品な紳士風の男性が迎え入れてくれた。

「私が町長です。あなた方ですね、例の怪物と花嫁の事件を調べようという旅人は」

四人は型どおりの挨拶を交わすと早速本題に入った。

「それではあなたのお嬢様が四人目の花嫁に…なんとおいたわしい…」

エナに優しく声がけした後町長は久遠を眺めた。

「そして原礎のあなたは行方不明の双子のお姉様をお捜しとか。…ですが、残念ながら私がお会いしたお二人はどちらもあなたとは違う風貌で、年齢も少し上のようでした。お力になれなくて申し訳ありませんな」

久遠は失望をありありと顔に浮かべて肩を落とした。

「そうですか…残念です…ですが現に関わった原礎までもが行方不明になってるのに、どうして大森林に知らせをよこしてくれなかったんですか?これは僕たちの同胞の命に関わることなんです。早く知らせてくれていればきっとすぐに一個小隊を派遣したはずなのに」

町長は沈鬱な面持ちでうつむいた。

「おっしゃるとおりです…しかし当時の私は個人的なこともあって少し取り乱しておりまして、事を大きくしたくなかったのです…今となっては後悔しておりますが…」

その釈明は久遠にとって必ずしも納得のいくものではなかったが、今この場でそれを追及しても意味はないのは明らかなのでそれ以上は何も問い質さなかった。久遠が黙ると今度は静夜が尋ねた。

「怪物のことをお訊きしますが、正体について何かわかっていることはありますか」

「いえ…半獣半人の恐ろしい姿をした怪物としか…」

「では、実際にその姿を見たことが?」

「は、はい。彼は私を名指しして山道に呼び出しました。人間に似てはいましたが背丈も幅も異常に大きく、毛むくじゃらの猩猩のようで、人の言葉を話しました。そして私に例の要求を伝え、花嫁以外誰も山に入れないよう脅して去っていったのです」

「…いったい何者なんだ、そいつ?それに、なぜいきなりそんな要求を…」

「その怪物の正体が何者なのかも、突然そんな要求をし始めた目的や理由もはっきりしていないんですね」

「はい」

謎を解く取っ掛かりすら摑めず静夜が眉を寄せて思案していると、秘書らしき者が入ってきて町長に耳打ちした。

「皆さん申し訳ありません、そろそろ会合に向かう時間ですので、今日のところは…」

「そうでしたか。お忙しいときにお邪魔しました」

三人は真っ直ぐ退室し、町長の屋敷を出た。

「…結局何もわからなかったなあ」

「町長以外に怪物に対面した者がいないのだから、これ以上の情報は見込めないな。被害者側の共通点から考えれば金髪の少女ということになるが…」

「なんでそんなに金髪にこだわるんだろう。僕もそうだけど、人間でも金髪の子なんて珍しくないのに。何か意味があるのかな…」

「あの、それでは次は私の家にご案内しますね。夫とメグが待ってますから」

三人は話しながら通りを歩いていく。

「…」

その姿を屋敷の窓の内側からじっと見つめている者がいたが、気づく者はいなかった。



エナの夫が営む家具工房の前にやってくると、気配を敏感に察知したのか、少女が飛び出してきて三人を出迎えた。

「お帰りなさい、お母さん!遅かったじゃない!心配してたのよ!」

「ごめんねメグ、先に町長さんのお屋敷に行ってたから…聞いて。このお二人が力になってくださるそうよ」

「えっ…ほ、本当に!?」

母親譲りの金髪で、生き生きとしていかにも利発そうなその少女は、噂に聞いていた風変わりな二人組をかわるがわる驚きの目で見つめた。そこへ娘の後を追って慌ただしく父親が出てきた。

「このたびは私どものためにわざわざ…メグの父親のロディと申します」

ロディとメグは二人がかえって恐縮するほど深々と頭を下げた。挨拶と自己紹介の後、二人は工房の奥の居間に通された。具体的なことについて話し合うためである。

「メグさんが花嫁に行くのはいつですか」

「明日の夜です…だからもう時間が…」

「早く方針というか作戦を決めないといけないな」

久遠が腕組みして顎をひねっているとロディが地図を持ってきてテーブルに広げた。

「怪物が棲みついた山がここです。そして遺構の入り口がこの辺り。昔は木の実や茸採りの者が分け入ったり、怖いもの知らずの子供たちが遊びや探検で歩き回ったりして割と知られた場所でしたが、今では誰も近づきません」

「遺構の内部には入れるんですか?内部構造の地図は?」

「ずいぶん前から立ち入り禁止になっているのでわかりません…」

ロディの指が町の北側を出て山へ伸びる細い道をなぞる。

「花嫁はこの一本道をひとりで来ることになってます。誰も同行できないので、どの地点で何が起こるのかは誰も知りません」

明日の夜我が身に降りかかる恐怖を思い描いてメグは顔を真っ白にしている。そんな娘をエナが気遣わしげに抱擁した。静夜は少し考えてから指先を滑らせるように地図の上を指し示した。

「怪物は遺構から出てきて道のどこかで花嫁と接触しようとするでしょう。俺たちは道沿いの茂みに身を隠しながらメグさんを追います。そうして怪物が出現したら…」

「そしたら静夜と僕で一気に叩くってこと?」

「うん。だが殺してはいけない。花嫁と原礎たちの行方を吐かせなければならないし、尋問のため町長に引き渡さなければならないから、気絶させ動けなくして捕獲する」

「そうだな。僕が蔦か蔓でぐるぐる巻きにしてやるよ」

久遠は腕が鳴ると言わんばかりに拳を固く握りしめた。二人の実力や原礎の戦い方を見たことがない親子は心もとなそうに顔を見合わせるばかりだった。



メグにとって運命の日となる翌日の午後、装備を整えた久遠と静夜は宿屋を出て再びロディ宅に向かっていた。

「…」

何も知らずとことこ歩く久遠とは対照的に、静夜はつきまとう何者かの気配を感知していた。向かう方角が偶然同じというわけではない。なぜならその者は二人の背中に視線をぴったり合わせたまま、不自然な左右の移動を繰り返して建物の角から出たかと思うとまた物陰に隠れたり、といかにも怪しげなのだ。害や危険はないと思われたので放っておいてもよかったが、事態が事態なので静夜は行動に移った。

「久遠、こっち」

「へ?…え!?」

久遠の腕を引いて裏路地の奥深くへ、早足で駆け込む。

「あっ…!!」

思ったとおり、その不審者は仰天して慌てて二人を追いかける。しかし反対側の通りに飛び出したところで人混みに阻まれて立ちすくんだ。

「…し、しまった、気づかれた…!」

「うん、だいぶ前に気づいた」

ぽん、と肩に手が置かれる。

「!!」

振り向くと、屋台の陰に身を潜めていた静夜がいつの間にか後ろを取って彼を見下ろしていた。そして彼の背後からはらはらと楽しんでいるような表情の久遠がひょっこり現れた。長身から注がれる厳しい眼力に、捕まった少年はみるみる縮み上がり、哀れっぽく赦しを乞うた。

「…ご、ごめんなさい!悪気はなかったんです!ただ、どうしても、その…じっとしてられなくて…」

「君は…もしかして、フィン?」

『えっ?』

少年と久遠が同時に声を出し、同時にぽかんとした。

「昨日エナさんが一度だけ幼なじみのフィンという名前を口にしていた。同年代の男の子だろうとは思っていたが…違っただろうか」

「…違いません…僕がフィンです…メグとは同い年で、家が近所だから、小さい頃からよく知ってます…」

「なぜ俺たちを尾行した?」

見るからに優しげで純朴そうなその少年はすっかり弱りきった様子でぽつりぽつりと白状した。

「…メグが花嫁になる決心をした後、急にもう会わないって言われてすごく心配で…おばさんが連れてきた二人組がどんな人たちなのかも気になって…僕にも何かできることはないかって思ったんです」

「気持ちはわからなくはないが相手は正体不明の怪物だ。君にできることは何もない。残念だがここは俺たちに任せて家でおとなしく待っ…」

「いいじゃないか、とりあえず一緒に家に行くくらい。僕たちが偶然出会って何も知らずに連れてきたってことにするから。とにかくメグさんに会いたいんだろ?」

久遠が思わぬ助け舟を出すとフィンはそばかすの目立つ頬を初々しげに染めて下を向いた。そして無言で大きくひとつうなずいた。

「やっぱりな。そうと決まれば、さっさと行くぞ」

「待て、久遠。ただでさえ神経が張り詰めてるときなのに会いたくない人に無理矢理会わされたらメグさんの精神状態が…」

「静夜は真面目な上に鈍いんだな…女の子の気持ちは時に言葉とは裏腹なんだよ」

久遠はまだ不服そうな静夜と嬉しさを隠せないフィンの手をぐいぐいと引っ張っていった。



「フィン…!もう会わないって言ったのに、どうして勝手に来るのよ!?」

「ごめん、メグ!でも…僕…」

フィンを連れてロディ宅に行くとメグは静夜が言ったとおり苛立ちの感情を投げつけたが、フィンがおそるおそる歩み寄って謝罪の念と心配の気持ちを正直に伝えると、久遠が言ったとおり感情を収め涙混じりの恥ずかしそうな笑みをにじませた。それを見ていたロディとエナは思わず目許を和ませたのだった。

家にはメグが着ていく衣装がすでに届いており、仕立て屋から来た二人の手伝いの女性も待機していた。

「私のことは久遠さんと静夜さんが守ってくださるから心配しないで、フィン。あなたは家で待っててね」

「…うん…」

口ではそう言ったものの、フィンの顔は張りついた強い不安にこわばっている。隠し事ができず頼りなさげな彼をメグは苦笑いで見つめた。

「そんな顔しないでよ、フィン…。せっかく覚悟を決めたのにまた不安になっちゃうじゃない。あなたってほんと昔から怖がりで心配性なんだから」

「メグ…」

心配して来たはずが逆に慰められてしまってフィンは苦しかったが、今目の前で微笑んでいるメグがいったいどれほどの恐怖に苛まれているか想像すると、自分が彼女にしてあげられることが他に見つからず、居ても立ってもいられなくなって、衝動的にメグを背中に隠して皆の前に立ち塞がった。

「僕…僕、やっぱりメグに怖い思いをさせたくない…!お願いです、どうかメグを行かせないでください!お願いします…!」

その場にいた全員が呆気に取られて二人を見た。一番驚いたのはメグだった。

「何言ってるの、私が行くことはもう決まってるの!それにお二人がちゃんと守ってくれるから大丈夫だって…!」

「でももし万一のことがあったら…お二人がかなわないような強敵だったら!?連れていかれて何されるかわからないじゃないか!」

そんな強い奴ならこんな小ずるくてまどろっこしいことしない、と久遠が肩をすくめ、静夜も同感とばかりにうなずく。するとフィンはますます追いつめられ、やけになって喚き散らした。

「どうしても行けと言うなら、メグを、さ、さ、さらって朝までどこかに閉じ込めます!!」

「ば、馬鹿言わないで!そんな自分勝手なことできるわけないでしょ!だいたい私が行かなきゃ魔獣が…!」

「メグさんを行かせたくないってんなら、じゃあいったい誰が代わりに行くんだよ?金髪でよく似た背格好で怪物を怖がらない子なんてそうそう都合良くいると思うか?」

『…』

腰に手を当てて堂々と言い放った久遠に、その直後、誰からともなく視線がひとり、またひとりと集まって、やがて全員が彼を見た。久遠は目をぱちくりとさせる。

「いるな。…ここに」

静夜のつぶやきに、他の面々が多少遠慮しながらも肯定のサインをそっと送ると、久遠はぎょっとして飛び上がりそうになった。

「えええっ!?まさか、僕にメグさんの代わりに行けっていうのか!?嘘だろ!?」

ロディ一家とフィン、そして手伝いの女性たちの目の色がそれぞれの思惑に応じて一気に変わる…。

「君が適任だ。金色の長髪だし、男の割に背があまり高くなくて細い。というか君以外にいない」

「何考えてんだよ静夜、冗談じゃない!僕は男だ!一瞬でバレるに決まってるじゃないか!」

「いえ、あの…女の子の服を着てそれらしく振る舞ったら意外とわからないかも…あ、すみません!けして久遠さんが娘の代わりに危険な目に遭ってもいいということではなく…純粋に容姿が、という意味で…」

「…お、お母さん…!」

「うっ…!」

もごもごと口ごもり、さすがに失礼だったとうつむくエナに、実際しばしば少女と間違えられる久遠はぐうの音も出ず立ち尽くす。そしてじわじわと高まる皆の期待と関心のまなざしに辛抱しきれなくなって叫んだ。

「…わかった、わかったよ!僕がメグさんの服を着て行けばいいんだろ!?どうせもともと静夜と行くことになってたんだ。服替えたとこでそんなに…か、変わらないんだから…!」

「決まりだな。じゃ、久遠は着替えて。メグさんは何もせず家にいてもらって構いません。後のことは俺たちに任せてください」

「す、すみません…」

フィンとメグは複雑そうな笑みを交わしている。

「お召し物は奥の部屋に用意してございます。こちらへどうぞ。皆様は少しの間お待ちください」

久遠が二人の手伝いとともに部屋をつかつかと出ていき、扉がバタンと閉められた…



「…お召し物って…何だよこれぇ!!」

かなりの時間が経ってようやく部屋から出てきた久遠は、なんと純白の花嫁姿だった。

飾り気が少なく華美ではないが上品で淑やかなドレスに身を包み、目許と唇にほんの少しだけ色づけを施した初々しく可憐なその姿に、一同の口から、わあ、おおお、と驚嘆と称賛の声が上がる。

「裾と腰周りの調整は少し変えましたが、元がほっそりしておいでなので問題ありません。よくお似合いですわ!」

「お肌は白くてすべすべですし、髪もさらさらつやつやですからほとんど触らなくて大丈夫です。お美しいですよ。男の子にしておくのがもったいないくらい」

「む、む、無理だこんなの…恥ずかしい…!!」

「…」

露わにされた鎖骨の辺りを隠すようにして真っ赤になっていた久遠はとっさに静夜に噛みついた。

「いやらしい目で見るな!」

「見てない」

「今!見てたろ!」

「見てない。一か月以上一緒に寝起きして今更そんな目で見るはずないだろう。…それより大股開きで立つな。あと言葉遣い」

「わかってる!余計なお世話だっ」

「あの…ほ、本当にすみません、私のためにこんなことまでしていただいて…何てお礼を言えばいいか…」

メグがおずおずと口を挟むと久遠はそれ以上当たり散らすわけにもいかず、静夜への憤懣をぐっと堪え、落ち着き払って答えた。

「僕なら大丈夫です。どっちみちすぐ終わらせて帰ってきて脱ぐんですから」

出発の時刻まであと少しロディ宅で待機することになり、ひとまず全員が居間に移動する。

「フィンを連れてきたのが運の尽きだったな。…でも、想像した以上に美人だぞ」

「…!?」

ふっ、と鼻で軽く笑う声にハッとして見上げると、静夜が大魔王のような勝ち誇った悪い顔で高みから見下ろしていた。

(…こいつ、さっき鈍いってからかわれたこと絶対根に持ってる…!くっそー…憶えてろよ…!)

久遠は薄紅を差した唇の端をぴくぴくさせただけで何も言わず、ただ彼を睨み返した。



動くものとてない夜の山道を、小さなランプの燈を提げたか細い花嫁がたったひとり、ゆっくりと登っていく。

繊細な蟲の翅のように透ける白いベールを目深に被り、その顔立ちははっきりとはわからない。細い顎の線と固く結んだ小さな唇が覗くだけだ。

彼女が進むのはかつて三人の少女たちが恐怖に怯えながら歩き、煙のように姿を消した道だ。今のところ何の異変も起こらないが、彼女はーーいや彼は道沿いの木々の陰を忍び歩く気配を確かに捉えていた。

(頼むぞ、静夜…)

静夜はいつもの無彩色の旅装束で夜闇に溶け込み、いつでも飛び出せるように神経を研ぎ澄ませてそのときに備えている。今の彼には記憶はないが、身体が覚えている猟犬のような感覚が彼に夜行性の動物の脚の運びや落ち葉が揺れるこそという微音を全方位から伝えてくれる。そして今彼は久遠の周辺に目を光らせる一方で、自分の背後に接近する何者かの出方を待っていた。

その者は能う限り物音を立てぬよう気をつけながら静夜の背中に近づくと、彼の肩に手を伸ばし…。

「…!!」

次の瞬間、反対にその手をがしっと摑まれてとっさに声を上げそうになった。

「しっ!」

「んんっ…!」

フードつきの黒い上衣をしっかり着込んだフィンは空いた方の手で慌てて口を覆う。静夜は久遠の歩く姿を振り向いて確かめながら、息だけの声でフィンを問い詰めた。

「家で待ってろとあれほど言ったのにどうして黙ってついてくるんだ!?君がいると足手まといだ。今すぐ町に帰りなさい!」

「で、でも僕…」

「帰れと言ったら帰るんだ」

「でも…」

表情に怒気を孕んで突き放そうとした静夜にフィンはなおもしつこく食い下がり、意外なことを言い出した。

「僕、きっとお役に立てます。…遺構の内部の構造を知ってますか?今では立ち入り禁止になってて入る人もいないけど、僕たちまでの年齢の子は昔よく親に内緒であそこに忍び込んで遊んでたので、構造はよく憶えてるんです。もし遺構に入らざるを得なくなったら僕が道案内してあげられますよ」

弱みを突かれて静夜は返答に窮した。もし山道で怪物を捕らえ損ね、遺構の中へ追跡することになれば土地鑑がない二人には確実に不利になるので、実のところその点は気がかりだった。それをフィンが補い、助けてくれるというのだ。静夜はわずかな時間考え込んだ結果、背に腹は代えられない、とフィンの申し出を受けることにした。

「わかった。ただし条件がある。必ず俺の指示に従い、勝手な行動はしないこと。破ったら即座に気絶させてその場に放置する。いいな?」

脅しではなく本当にやるぞ、と語る静夜の眼の気迫にフィンはぞくっと身震いしたが、負けじと彼を見つめ返した。

「わかりました」

互いにうなずき合い、今度は二人で追跡を再開する。

森のどこかで梟が啼き、狼の遠吠えが聞こえた。距離はかなりあるので襲われる心配はない。

と、ランプを提げた久遠の手がぴくりと震えた。

いるーー後ろに、何かがーー!!

ドレスの下の素肌が脛から頭皮まで一気にザワッと粟立った。いつの間に近づいたのかまったくわからない。静夜とフィンもはっと気づいたが、時すでに遅し。どこからともなく現れたその存在はすでに久遠の真後ろを歩いていた。

久遠の肩に何かが置かれる。

それは青白く乾ききっただったーー
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