年に一度の旦那様

五十嵐

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32 甘言

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「ロイ、どうなっているんだ。アナベルもナタリアも機嫌を損ねたではないか。あの女が二人に会う時におまえは釘を刺したはずだろ」
「ノア様、こればかりはどうしようもございません。コリンス伯爵令嬢はご自分の立場が故にお二人にノア様に閨でどうお仕えすればいいか教えを請うたのです。そういう意味では立場を重々ご理解いただいているのではないでしょうか」
「しかし二人の様子から察するに、あの女を抱けば面倒が起きそうだな」
「一層の事、初夜を利用したらいかがでしょうか」

ロイはノアにレイチェルの伯爵家での扱いを話し、初夜をすっぽかされても戻るどころか誰にも相談出来ないことを伝えた。また、事前にアナベルとナタリアには初夜を含め当分レイチェルと房事は行わないと告げれば二人は喜ぶだろうとも。
二人が機嫌を損ねたのはノアをレイチェルに取られたくないという嫉妬からだと、ノアを喜ばせる言葉を時折挟みながら。

「早々にコリンス伯爵令嬢に初夜に夫婦の寝室に来る必要はないと告げられては?その際、アナベル様とナタリア様を伴うのがよろしいかと」
「そうだな。そうすることで、この邸でのアナベル達の立場がしっかりするし、あの女の今後の躾にも役立つだろうしな」
「はい。初夜に相手にされない女主人への扱いを使用人達はするでしょう。だからこそノア様が優しく接することで、コリンス伯爵令嬢は感謝をするはず。簡単に都合よく躾けられるのではないでしょうか。当分教育と称して、書類仕事を押し付ければよろしいかと。勿論、最後のご署名はノア様でなくてはなりませんが、その前にわたしが全ての出来を確認致します」

ロイの話にノアの口角が微かに上がる。面倒を押し付け、空いた時間をどう使うかでも考えているのだろう。
愛人二人を侍らせ、好きなだけ外出でもすればいい。寧ろそうしてもらうのが狙いなのだ。

本当はレイチェルの嫌がることはしたくない、けれど愛人二人にも甘言を弄しなくてはいけないとロイは思った。
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