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8 ロイの役割
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六歳を過ぎたばかりのロイは、最初厩舎の掃除を命じられた。
馬丁長は小さなロイが馬に蹴られ命を失ってはいけないと、重要なことを最初に約束事として教えた。
「馬は優しい生き物だ。だから無闇矢鱈と蹴り上げられることはない。だがな、臆病だから絶対に真後ろから近づくな。これが一つ目の約束。二つ目の約束は近づく時は声を優しくゆっくり声を掛けながら横から。分かったか?」
「うん」
「この二つを守らないと、馬はおまえを蹴り飛ばすからな」
馬丁長は声変わりをしていないロイのボーイソプラノボイスが馬をどれだけ驚かせてしまうのか教えた上で、ゆっくり優しい声を出すよう指導した。馬そのものの世話を始めさせてもらうまでの数年は、ロイは椎葉を運び掃除に明け暮れる日々だった。
小さな体で大人に混じり働くのはどれだけ体力を消耗することだろうか。しかし、厩舎での仕事の後には勉強がロイには課せられていた。十歳になる頃には勉強の他に侯爵家の私兵に混じり木剣の素振りをさせられるようにもなった。
早くから馬の扱いになれ、体力も付き剣も握れる。十三歳のロイは侯爵にとって都合がいいように育っていった。嬉しい誤算だったのは地頭が良いこと。愚弟の種だとは思えない程に。お陰で十五の頃には寄宿学校を優秀な成績で卒業し大人の仲間入りを果たした十六歳のノアの従者として使うことが出来た。
顔だけは良い愚弟と美しく魅惑的なアリエルの息子であるロイ。その顔立ちは美しく、長い間目を合わせれば魅入られそうだった。幼い頃からの教育で所作も立ち姿も美しいロイはそこらへんの貴族より貴族らしく見える。何もかもが次期侯爵となるノアの従者として申し分なかった。
侯爵の思い通りに育ち、ノアに服従するロイ。
弟が仕出かした時には『面倒事を』と内心怒りもしたが、今となってはアリエルとロイは侯爵にとって良い拾い物だった。
そう思っている侯爵は、否、そう思わせているのは本当はロイだということに気付いていない侯爵は迂闊にもロイに更なる教育を施してしまうのだった。選りにも選って、諜報活動という。
馬丁長は小さなロイが馬に蹴られ命を失ってはいけないと、重要なことを最初に約束事として教えた。
「馬は優しい生き物だ。だから無闇矢鱈と蹴り上げられることはない。だがな、臆病だから絶対に真後ろから近づくな。これが一つ目の約束。二つ目の約束は近づく時は声を優しくゆっくり声を掛けながら横から。分かったか?」
「うん」
「この二つを守らないと、馬はおまえを蹴り飛ばすからな」
馬丁長は声変わりをしていないロイのボーイソプラノボイスが馬をどれだけ驚かせてしまうのか教えた上で、ゆっくり優しい声を出すよう指導した。馬そのものの世話を始めさせてもらうまでの数年は、ロイは椎葉を運び掃除に明け暮れる日々だった。
小さな体で大人に混じり働くのはどれだけ体力を消耗することだろうか。しかし、厩舎での仕事の後には勉強がロイには課せられていた。十歳になる頃には勉強の他に侯爵家の私兵に混じり木剣の素振りをさせられるようにもなった。
早くから馬の扱いになれ、体力も付き剣も握れる。十三歳のロイは侯爵にとって都合がいいように育っていった。嬉しい誤算だったのは地頭が良いこと。愚弟の種だとは思えない程に。お陰で十五の頃には寄宿学校を優秀な成績で卒業し大人の仲間入りを果たした十六歳のノアの従者として使うことが出来た。
顔だけは良い愚弟と美しく魅惑的なアリエルの息子であるロイ。その顔立ちは美しく、長い間目を合わせれば魅入られそうだった。幼い頃からの教育で所作も立ち姿も美しいロイはそこらへんの貴族より貴族らしく見える。何もかもが次期侯爵となるノアの従者として申し分なかった。
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弟が仕出かした時には『面倒事を』と内心怒りもしたが、今となってはアリエルとロイは侯爵にとって良い拾い物だった。
そう思っている侯爵は、否、そう思わせているのは本当はロイだということに気付いていない侯爵は迂闊にもロイに更なる教育を施してしまうのだった。選りにも選って、諜報活動という。
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