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この瞬間が、ずっと続けばいいのに
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サッカーチームでの練習は、有意義なものだったよ。何せ指導のレベルが、高かったし。それに周りに上手な奴らがいるってだけで、自分自身も得る所が多いんだ。敵を作りやすい性格のおれだけど、まぁまぁ当たり障りなく過ごしてはいたつもり。
だけどさぁ。普段の練習場とか、試合会場への移動ってあるじゃん。他の奴らは、両親に車で送り迎えしてもらっていた。おれはまぁ、チームに所属出来るってるだけで贅沢の言えない立場なので…。電車とかバスとか、乗り繋いで移動していたよ。
それが決して、嫌だった訳じゃない。移動時間も、色んな景色を見たり考え事をしたりで楽しかったから。ただ…自分が今サッカーをしているのか、移動をしているのか。時々分からなくなっている事は、あったかもな。
みなさんこんにちは。一ノ瀬蒼、12歳ホモです。学校の課外授業を抜け出して、雪兎と二人。北へ向かう電車の中で、揺られています…。平日で中途半端な時間の在来線だから、同じ車両に乗客は一人もおらず本当に二人きりだ。ここだけ切り取ったら、「千と千尋」のワンシーンみたいだな。
「だけど雪兎、本当に良かったのか?授業をフケようなんて、お前らしくもないじゃん」
「あはは。本当はね、ちょっとこう言うの憧れてたんだ。学校の授業じゃないけど、一番上の桜兄さんがね…。むかーし小学生の頃に家出して、東京の叔父さんに会いに行ったんだって。ぼくなんか、生まれる前の話だよ」
「わお。やるじゃん、桜兄さん。会った事もない人だけど。何か、家出するような理由でもあったのか?」
「さぁねぇ。本人は、当時の家庭教師が合わなかったとか言ってるけど…。多分、彼なりに嫌な事の一つや二つもあったんじゃないかな。医者を目指すなら、勉強のハードルはどんどん高くなるし。蛍兄さんや楓兄さんが生まれきて、家族はどうしてもそっちにチヤホヤしちゃうし」
「医者かぁ。雪兎は、その…。お兄さん達みたく、医者になりたいって思わなかったのか?」
「ないない。思いませんよ。あの人たちの、頭おかしい勉強法を見てたらね。それにぼく、誰かの命に責任なんて持てない…」
命に責任、かぁ。そんなもん、この世の誰にだって持てやしない。何となく由香里姉ちゃんの事を思い出して、またちょっと涙が流れてきそうになった。雪兎はそんなおれを見て、これまた何を考えてるのか察したらしい。
「…ごめんね。暗くなっちゃってさ」
「いや、いいんだ。雪兎はやっぱり、小説家になるべきだよ。いや、なれるって。忘れてないよな、約束。小説が書き上がったら、真っ先におれに見せてくれるって」
「忘れてないよ。だけど、自信ないなぁ…。マテリアルを実体化させるみたく、簡単には行かないから」
「普通の人間にとっちゃ、そっちの方が難しいってか無理なんだけどな。なぁ、話変わるんだけど…。改めて言うよ。おれ、やっぱり雪兎の事が好きだ。愛してる」
「あお君…。おっぱいなら、吸わせませんからね?」
「違ぇーよ!いくらおれでも、こんな電車ん中でおっぱい吸わせろとか言わねぇから!なんぼ乗客いなくても、窓の外から丸見えだし。でも時と場所を改めて、また乳首の開発させてくれると嬉しいな♡そうじゃなくて、告白の時ってクラス中が見守る中で半分勢いみたいな所もあったじゃん。この機会に、改めておれの気持ちを伝えたくなったんだよ…」
「あお君…。ぼくもだよ。あお君の事が、いちばん大好き。いつかご家庭の事情で離れ離れになったとしても、この気持ちは変わらないって誓う」
雪兎…。やっぱ、気づいてたんだな。いつまでも、このまま一緒にはいられないって。だけど、おれだって同じ気持ちだ。どんなに離れたとしても、必ず雪兎の元に戻って変わらないこの気持ちを伝えると誓う。
「雪兎…」
「なぁに?あお君」
「八重歯、舐めさせて」
「駄目です。外から丸見えとは、一体何だったのか。そうじゃなくても、車掌さんとかが突然入ってくるかも知れないじゃん?」
「チッ。ケチくせぇな。それじゃ間を取って、エロぼくろ舐めるので勘弁してやる」
「何と何の、間を取った訳…?でも、仕方ないな。いいよ。誰かに見られてドン引きされても、知らないから」
やりぃ!交渉成立!何だかんだで、結果チョロいんだよな雪兎。そんな訳で、いつも気になってた口元のエロぼくろを思う存分舐めさせてもらった。うーん、満足。今度は裸にひん剥いて、身体中のホクロの数を数えるとかしたいな。まぁそれは、別の機会にもっと人気のない所でね。
雪兎も雪兎でちょっと乗り気になったと見えて、向こうから唇を重ねてきた。幸せだなぁ。この瞬間が、ずっと続けばいいのにな…。
「あぁ。そう言や、また話変わるんだけど。交通費、ちょっと借りる事になるかも知んない。何せ、急に思い立っての逃避行だったからさ。手持ちが財布の中に今、2,034円…。ってか、むしろこれが全財産。つい最近、新しいシューズに買い替えたばっかだから。雪兎は今、いくらくらい持ってる?」
「えぇと…。現金が、財布の中に2万円くらい。だけど、キャッシュカードも持って来てるから。銀行の預貯金総額は、今500万円くらいかな?お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが、毎年『生前贈与』で振り込んでくれるから。それと、株やら投資信託を合わせて締めて700万円くらい」
「わお。向こう五年くらい、家出できるんじゃね?むしろ今から、海外にでも飛んどく?」
だけどさぁ。普段の練習場とか、試合会場への移動ってあるじゃん。他の奴らは、両親に車で送り迎えしてもらっていた。おれはまぁ、チームに所属出来るってるだけで贅沢の言えない立場なので…。電車とかバスとか、乗り繋いで移動していたよ。
それが決して、嫌だった訳じゃない。移動時間も、色んな景色を見たり考え事をしたりで楽しかったから。ただ…自分が今サッカーをしているのか、移動をしているのか。時々分からなくなっている事は、あったかもな。
みなさんこんにちは。一ノ瀬蒼、12歳ホモです。学校の課外授業を抜け出して、雪兎と二人。北へ向かう電車の中で、揺られています…。平日で中途半端な時間の在来線だから、同じ車両に乗客は一人もおらず本当に二人きりだ。ここだけ切り取ったら、「千と千尋」のワンシーンみたいだな。
「だけど雪兎、本当に良かったのか?授業をフケようなんて、お前らしくもないじゃん」
「あはは。本当はね、ちょっとこう言うの憧れてたんだ。学校の授業じゃないけど、一番上の桜兄さんがね…。むかーし小学生の頃に家出して、東京の叔父さんに会いに行ったんだって。ぼくなんか、生まれる前の話だよ」
「わお。やるじゃん、桜兄さん。会った事もない人だけど。何か、家出するような理由でもあったのか?」
「さぁねぇ。本人は、当時の家庭教師が合わなかったとか言ってるけど…。多分、彼なりに嫌な事の一つや二つもあったんじゃないかな。医者を目指すなら、勉強のハードルはどんどん高くなるし。蛍兄さんや楓兄さんが生まれきて、家族はどうしてもそっちにチヤホヤしちゃうし」
「医者かぁ。雪兎は、その…。お兄さん達みたく、医者になりたいって思わなかったのか?」
「ないない。思いませんよ。あの人たちの、頭おかしい勉強法を見てたらね。それにぼく、誰かの命に責任なんて持てない…」
命に責任、かぁ。そんなもん、この世の誰にだって持てやしない。何となく由香里姉ちゃんの事を思い出して、またちょっと涙が流れてきそうになった。雪兎はそんなおれを見て、これまた何を考えてるのか察したらしい。
「…ごめんね。暗くなっちゃってさ」
「いや、いいんだ。雪兎はやっぱり、小説家になるべきだよ。いや、なれるって。忘れてないよな、約束。小説が書き上がったら、真っ先におれに見せてくれるって」
「忘れてないよ。だけど、自信ないなぁ…。マテリアルを実体化させるみたく、簡単には行かないから」
「普通の人間にとっちゃ、そっちの方が難しいってか無理なんだけどな。なぁ、話変わるんだけど…。改めて言うよ。おれ、やっぱり雪兎の事が好きだ。愛してる」
「あお君…。おっぱいなら、吸わせませんからね?」
「違ぇーよ!いくらおれでも、こんな電車ん中でおっぱい吸わせろとか言わねぇから!なんぼ乗客いなくても、窓の外から丸見えだし。でも時と場所を改めて、また乳首の開発させてくれると嬉しいな♡そうじゃなくて、告白の時ってクラス中が見守る中で半分勢いみたいな所もあったじゃん。この機会に、改めておれの気持ちを伝えたくなったんだよ…」
「あお君…。ぼくもだよ。あお君の事が、いちばん大好き。いつかご家庭の事情で離れ離れになったとしても、この気持ちは変わらないって誓う」
雪兎…。やっぱ、気づいてたんだな。いつまでも、このまま一緒にはいられないって。だけど、おれだって同じ気持ちだ。どんなに離れたとしても、必ず雪兎の元に戻って変わらないこの気持ちを伝えると誓う。
「雪兎…」
「なぁに?あお君」
「八重歯、舐めさせて」
「駄目です。外から丸見えとは、一体何だったのか。そうじゃなくても、車掌さんとかが突然入ってくるかも知れないじゃん?」
「チッ。ケチくせぇな。それじゃ間を取って、エロぼくろ舐めるので勘弁してやる」
「何と何の、間を取った訳…?でも、仕方ないな。いいよ。誰かに見られてドン引きされても、知らないから」
やりぃ!交渉成立!何だかんだで、結果チョロいんだよな雪兎。そんな訳で、いつも気になってた口元のエロぼくろを思う存分舐めさせてもらった。うーん、満足。今度は裸にひん剥いて、身体中のホクロの数を数えるとかしたいな。まぁそれは、別の機会にもっと人気のない所でね。
雪兎も雪兎でちょっと乗り気になったと見えて、向こうから唇を重ねてきた。幸せだなぁ。この瞬間が、ずっと続けばいいのにな…。
「あぁ。そう言や、また話変わるんだけど。交通費、ちょっと借りる事になるかも知んない。何せ、急に思い立っての逃避行だったからさ。手持ちが財布の中に今、2,034円…。ってか、むしろこれが全財産。つい最近、新しいシューズに買い替えたばっかだから。雪兎は今、いくらくらい持ってる?」
「えぇと…。現金が、財布の中に2万円くらい。だけど、キャッシュカードも持って来てるから。銀行の預貯金総額は、今500万円くらいかな?お祖父ちゃんとお祖母ちゃんが、毎年『生前贈与』で振り込んでくれるから。それと、株やら投資信託を合わせて締めて700万円くらい」
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