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23. ラクアート様の無茶ぶり
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「お兄様……」
「うん」
「お兄様……」
「うん。良くないほうの予想というか、まさかRPGの要素のあるゲームとは思わなかった。単純な恋愛ゲームだと良かったのに」
「魔王ですって。ピンクさん、聖女になるんですって!」
「うん。リーナ。落ち着こうか。魔王は封印を解かないから復活しないし、仲間を集めて再封印するのも今のところない! って言っていたから特に何もしなくても世界が滅亡したりは、ないみたいだから」
「そ、そうね。そこは安心して、良いのかしら? あのピンクの彼女のいう事が信用できるのなら」
「魔王の封印が緩んでなければ良いけれど、いったい何をしたら封印が解かれるんだ? ゲームではあのピンク頭が封印を解いて、仲間を集めてまた封印しに行くって言っていたけど」
「わからないわ。それとお兄様の事、また星の王子様って言っていたわ。攻略できないからあきらめたって。お兄様の攻略にはドラゴンが必要みたいだけど、何か心あたりある?」
「あるわけないよ! でも、パズルがどうとか言っていたな。俺、パズルは割と得意だ」
「じゃぁ、いざという時の為にドラゴンを仲間にするといいわね?」
「「どうやって!?」」
思わず声がそろってしまった。
とにかく、ピンクの彼女のインパクトが強すぎて唖然としているうちに時が過ぎてしまった、という敗北感のあるお茶会だった。
仕方がないので、また、ピンクの彼女を招いて今度こそ会話を誘導して情報を得るしか、誘導、誘導できるのかしら、あの只管自分の好きな事しか話さない自分本位のピンクから……。
後半はもうラクアート様からいかに自分が大切にされているか、どんなものを買ってもらったか、いずれ、何を買ってもらう予定なのかとか、学生会の皆さまの悪口とか愚痴とか、クラスで蔑ろにされているウップンとか聞かされているばかりだった。
ウオーター公爵家での行儀見習いはちっとも身についていないようだけど、ラクアート様はどう思っているのかしら。
疲れた私たちは揚げ焼きドーナッツに蜂蜜をつけて食べていた。それにサクランボのフレーバーティ。
甘いものが美味しい。
この世界でも油は結構お高いので、揚げ物をするほどの量は簡単に手に入らない。フライパンは魔道具を使うと焦げ付かないので普段のお料理ではそんなに使わないし、庶民の食べ物屋では主に獣油を使っているらしい。
植物油が手に入ったら唐揚げとかトンカツとか作りたい。コロッケも外せない。
「早く『液体』の加護で油が出てくれたらいいのにね」
「そうしたら、放火し放題。ピンクの丸焼きができる」
「お兄様ったら」
とりあえず、仕方ないのでピンクの彼女を時々お茶に招いて情報を得る事にした。今回はピンクのインパクトに衝撃をうけたが、次回は落ち着いて打ち返して見せよう、なんて。
打ち返せるといいなぁ。
まだゲームの始まりには時間がある事が分かっただけでも朗報かもしれない。ラクアート様はいらないから側妃なんて冗談じゃないけど婚約破棄は大歓迎。
と言った話をしていた翌々日、ラクアート様から呼び出された。ラクアート様はピンク、じゃないフレグランス嬢と一緒に管理棟のテラスで待っていた。
「ごきげんよう。ラクアート様。本日は何か御用でしょうか」
「ああ、フレーが学生会の面々を呼んでお茶会を開きたいというんだ。君の名前で学生会の皆に招待状を出してくれ」
「私の名前で、ですか?」
「ああ、タウンハウスでお茶会を開きたいそうだから」
「私、学生会の皆さまとは面識がないですし、学生会は男の方ばかりだったと記憶しております」
「私の知り合いという事で問題はない。今回は殿下を始め私たちの学年だけ招待するつもりだから、ごく内輪の集まりになるな」
「2学年の皆さまとフレグランス様をお呼びするということでしょうか」
「ああ、いや、それだとうーん。そうだなやはり、学生会全員を招待しよう」
「そうなりますと、学生会の皆さまで7名になりますし、トーリスト・ガーター様を入れますと8名になります。殿下の侍従も含めるとかなりの人数になりますが」
「大丈夫よ。いつもの学生会のメンバーだから。それにリーナが加わるだけだし。場所を変えれば殿下も少しは固さがとれて話しやすくなると思うの」
ピンクの彼女が楽しそうに口を挟んできた。ラクアート様がいると機関銃のようにしゃべらない。
落ちかけているけど一応は猫をかぶっているのかもしれない。
でも、面識のない王族をお茶会に招待、それも私の名前で。
ラクアート様の常識もどこかにいってしまったのかしら。ラクアート様、学生会ではないけれど学年代表として学生会に出入りしているので、その時にピンクの彼女を伴っているそうだ。
迷惑だと思う。
仕方ないので、宛名はなしにして招待状をつくり、出席の場合のみお名前を頂く事にした。
招待状はラクアート様が主体で並べて小さく私の名前を書いた。ピンクの彼女が自分も連名にしてほしいと言ってきたが、それは流石にラクアート様も「今回は名前を入れなくても皆、わかっているから」と諫めていた。
何をわかっているのだか……。
迷子になったラクアート様の常識はどこにいるのかしら。
「うん」
「お兄様……」
「うん。良くないほうの予想というか、まさかRPGの要素のあるゲームとは思わなかった。単純な恋愛ゲームだと良かったのに」
「魔王ですって。ピンクさん、聖女になるんですって!」
「うん。リーナ。落ち着こうか。魔王は封印を解かないから復活しないし、仲間を集めて再封印するのも今のところない! って言っていたから特に何もしなくても世界が滅亡したりは、ないみたいだから」
「そ、そうね。そこは安心して、良いのかしら? あのピンクの彼女のいう事が信用できるのなら」
「魔王の封印が緩んでなければ良いけれど、いったい何をしたら封印が解かれるんだ? ゲームではあのピンク頭が封印を解いて、仲間を集めてまた封印しに行くって言っていたけど」
「わからないわ。それとお兄様の事、また星の王子様って言っていたわ。攻略できないからあきらめたって。お兄様の攻略にはドラゴンが必要みたいだけど、何か心あたりある?」
「あるわけないよ! でも、パズルがどうとか言っていたな。俺、パズルは割と得意だ」
「じゃぁ、いざという時の為にドラゴンを仲間にするといいわね?」
「「どうやって!?」」
思わず声がそろってしまった。
とにかく、ピンクの彼女のインパクトが強すぎて唖然としているうちに時が過ぎてしまった、という敗北感のあるお茶会だった。
仕方がないので、また、ピンクの彼女を招いて今度こそ会話を誘導して情報を得るしか、誘導、誘導できるのかしら、あの只管自分の好きな事しか話さない自分本位のピンクから……。
後半はもうラクアート様からいかに自分が大切にされているか、どんなものを買ってもらったか、いずれ、何を買ってもらう予定なのかとか、学生会の皆さまの悪口とか愚痴とか、クラスで蔑ろにされているウップンとか聞かされているばかりだった。
ウオーター公爵家での行儀見習いはちっとも身についていないようだけど、ラクアート様はどう思っているのかしら。
疲れた私たちは揚げ焼きドーナッツに蜂蜜をつけて食べていた。それにサクランボのフレーバーティ。
甘いものが美味しい。
この世界でも油は結構お高いので、揚げ物をするほどの量は簡単に手に入らない。フライパンは魔道具を使うと焦げ付かないので普段のお料理ではそんなに使わないし、庶民の食べ物屋では主に獣油を使っているらしい。
植物油が手に入ったら唐揚げとかトンカツとか作りたい。コロッケも外せない。
「早く『液体』の加護で油が出てくれたらいいのにね」
「そうしたら、放火し放題。ピンクの丸焼きができる」
「お兄様ったら」
とりあえず、仕方ないのでピンクの彼女を時々お茶に招いて情報を得る事にした。今回はピンクのインパクトに衝撃をうけたが、次回は落ち着いて打ち返して見せよう、なんて。
打ち返せるといいなぁ。
まだゲームの始まりには時間がある事が分かっただけでも朗報かもしれない。ラクアート様はいらないから側妃なんて冗談じゃないけど婚約破棄は大歓迎。
と言った話をしていた翌々日、ラクアート様から呼び出された。ラクアート様はピンク、じゃないフレグランス嬢と一緒に管理棟のテラスで待っていた。
「ごきげんよう。ラクアート様。本日は何か御用でしょうか」
「ああ、フレーが学生会の面々を呼んでお茶会を開きたいというんだ。君の名前で学生会の皆に招待状を出してくれ」
「私の名前で、ですか?」
「ああ、タウンハウスでお茶会を開きたいそうだから」
「私、学生会の皆さまとは面識がないですし、学生会は男の方ばかりだったと記憶しております」
「私の知り合いという事で問題はない。今回は殿下を始め私たちの学年だけ招待するつもりだから、ごく内輪の集まりになるな」
「2学年の皆さまとフレグランス様をお呼びするということでしょうか」
「ああ、いや、それだとうーん。そうだなやはり、学生会全員を招待しよう」
「そうなりますと、学生会の皆さまで7名になりますし、トーリスト・ガーター様を入れますと8名になります。殿下の侍従も含めるとかなりの人数になりますが」
「大丈夫よ。いつもの学生会のメンバーだから。それにリーナが加わるだけだし。場所を変えれば殿下も少しは固さがとれて話しやすくなると思うの」
ピンクの彼女が楽しそうに口を挟んできた。ラクアート様がいると機関銃のようにしゃべらない。
落ちかけているけど一応は猫をかぶっているのかもしれない。
でも、面識のない王族をお茶会に招待、それも私の名前で。
ラクアート様の常識もどこかにいってしまったのかしら。ラクアート様、学生会ではないけれど学年代表として学生会に出入りしているので、その時にピンクの彼女を伴っているそうだ。
迷惑だと思う。
仕方ないので、宛名はなしにして招待状をつくり、出席の場合のみお名前を頂く事にした。
招待状はラクアート様が主体で並べて小さく私の名前を書いた。ピンクの彼女が自分も連名にしてほしいと言ってきたが、それは流石にラクアート様も「今回は名前を入れなくても皆、わかっているから」と諫めていた。
何をわかっているのだか……。
迷子になったラクアート様の常識はどこにいるのかしら。
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