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22. ピンクの独演会
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「お兄様、どう思う? あのラクアート様を見て」
「あのさ、あれ、どう見てもおかしいよ。ピンク頭の加護って『みず魔』じゃなくて『魅了』じゃないか。でないと、あの、のめり込み方はおかしいよ。いくら世間知らずの貴族の坊ちゃん、だとしても」
「お兄様、あのピンクの彼女をみて何か感じた?」
「いや、凄い髪だな、とアニメみたいな顔と声だなって」
「じゃぁ、会ったり話したりしたら惹きつけられるというわけではなさそうね。もし、お兄様がピンクの彼女に夢中になったら私、泣いちゃうかも」
「その時は遠慮なく、氷雨で覆ってくれていいよ。頭が冷めて目が覚めると思う。でも、多分レベルが低いせいで特定の条件とか人数の制限とかあるんじゃないか。それと転生者は皆、魔力量がかなり多いんだと思う」
「じゃぁ、お兄様はあまり話しかけないようにして私が主に話すわね」
という事で、翌週はフルール様が主催の『ご挨拶お茶会』があるので、その次の週の土曜日にピンクの彼女に招待状を出しておいた。
フルール様主催のお茶会は4年生の公爵令嬢が会を主導してくださって、良い雰囲気で過ごすことができた。軽食とお茶だけの会だったが、チョコレートケーキが皆の話題をさらった。
チョコレートは最近、王都でも富裕層にはやり始めたのだが、まだ手に入りにくい高価なものだった。フルール様の実家であるフォスキーア公爵家が輸入をしているので味見を兼ねて試作品が届くそうだ。
今年度のタウンハウスは穏やかな雰囲気の人たちばかりなので無難に過ごすことができそうだ。
フルール様も口数は少ないながらも先輩の方々と普通に会話をしていたので良かったと思う。お土産に持たされた一口チョコも嬉しかった。
「ねぇ、お兄様、私、チョコレートボンボンが好きだったの」
「奇遇だね。俺もとても好きだった。リーナ、お酒が出てくるのはまだまだ先かな~」
「チョコレートもお酒もまだ出てこないわね。でも、『液体』の加護で出てくるのは私の経験に基づいているみたいだから、お酒はどうなるかわからないわ。一応ワインは飲んでいたけど違いとか分からないし、ブランデーとかはお菓子に使う事はあったけど。あっ、良いシャンパンはホテルで飲んだことがあるわ」
「いいなぁ~。俺なんてお酒を飲まないままだから、どんなものか分からない。お屠蘇とビールは少し舐めたことがあるけど。あっ、ピンク頭にお酒を飲ませたら色々と白状するかな」
「お兄様ったら。まだ13歳の子にお酒なんて飲ませられないわ」
「この世界の成人は15歳だよ」
「そうなのよね~。あまり若い頃からお酒を飲むと良くないけど、梅酒とお酒いりのチョコは子供のときから食べていたし、いいのかしら」
「そうそう。早く洋酒の入ったチョコレートボンボンが食べたいな。でも、ピンク頭に食べさせるのはもったいない」
なんて話をしながら、私たちはどら焼きを食べていた。お汁粉がちょっと進化してドロッとした潰れたぜんざい風になってきたので煮詰めて餡子を作ったのだ。ホットケーキミックスがあるので色んなものができて楽しい。
さて、問題のピンクさん事、フレグランス・タチワルーイ嬢がやって来た土曜日。
お茶会というよりかピンクの彼女の独演会だった。彼女は人の話を聞かない人で、一人でしゃべって一人で答えて、とても煩かった。
「ここがタウンハウスね。すごいステキ。あたしもここに住みたいなぁ~。ねぇ、リーナ、あたしも何とかここにすめるようにできない? ほら、将来の公爵夫人だし。あたしね。12月生まれだから12の時に加護の儀を受けてホントは14歳の時に編入するはずだったんだ。ゲームだとね」
「ゲームですか?」
「ゲームだと14歳の時から色々出会いイベントがあって、15になる前にあたしが聖女になって、それで魔王を封印しにいくんだけど、そんなのイヤだし。魔王は封印が解けなければ出てこないから封印を解いちゃうイベントはパスするから、魔王復活はないから闘わなくていいし」
「魔王?」
「バカみたいじゃない。自分で間違って魔王を復活させて、それから仲間を集めて戦って魔王を封印するなんて。じゃぁ、だいたい、封印に近づかないといいのよ。でも、聖女にはなりたいからイベントはこなしていくつもりだけど。まだゲームが始まってないせいか、殿下とかすごく冷たいんだよね。やんなっちゃう。でも元々、王妃なんて大変そうだからラクアートも凄い好みだし、まだちょっと子供っぽいけど段々カッコ良くなるはずだからラクアートでいいかなって。公爵夫人もお仕事はリーナにお願いすればいいし。私がラクアートを選んだらリーナは追い出されるか側妃か選べるから側妃にしてあげるね。悪役令嬢は恋のスパイスに必要だけど、14、過ぎないと邪魔してこないからまぁ、良いかなって思っているんだ」
「悪役令嬢?」
「あ、そうそう、ラクアートが学生会を誘うから適当に招待状を出してよ。殿下は来ないだろうけど、ガーヤとかリンドンはあたしが誘うと来ると思うよ。ラクアートの補佐であたしも学生会に出入りしてるから。リーナも星の王子様だけじゃ寂しいよね。星の王子様って攻略が難しいし、なんかドラゴン仲間にするのにパズルが複雑であたし、無理だったんだ。あたしは学生会の連中だけでいいから、星の王子様はリーナにあげるよ。といっても兄弟だから相手にならないか。それは残念だったね。アハハハ」
「でね。ラクアートたら」
といった感じで好きなだけおしゃべりしてお茶を飲んでお菓子を食べて帰って行った。
あれ? 色々聞きだす予定が何もできなかったけど、勝手に話してくれたおかげで分かった事は……
魔王に聖女、仲間を集めて封印!?
このゲームの世界、ちょっと怖いんですけど。
「あのさ、あれ、どう見てもおかしいよ。ピンク頭の加護って『みず魔』じゃなくて『魅了』じゃないか。でないと、あの、のめり込み方はおかしいよ。いくら世間知らずの貴族の坊ちゃん、だとしても」
「お兄様、あのピンクの彼女をみて何か感じた?」
「いや、凄い髪だな、とアニメみたいな顔と声だなって」
「じゃぁ、会ったり話したりしたら惹きつけられるというわけではなさそうね。もし、お兄様がピンクの彼女に夢中になったら私、泣いちゃうかも」
「その時は遠慮なく、氷雨で覆ってくれていいよ。頭が冷めて目が覚めると思う。でも、多分レベルが低いせいで特定の条件とか人数の制限とかあるんじゃないか。それと転生者は皆、魔力量がかなり多いんだと思う」
「じゃぁ、お兄様はあまり話しかけないようにして私が主に話すわね」
という事で、翌週はフルール様が主催の『ご挨拶お茶会』があるので、その次の週の土曜日にピンクの彼女に招待状を出しておいた。
フルール様主催のお茶会は4年生の公爵令嬢が会を主導してくださって、良い雰囲気で過ごすことができた。軽食とお茶だけの会だったが、チョコレートケーキが皆の話題をさらった。
チョコレートは最近、王都でも富裕層にはやり始めたのだが、まだ手に入りにくい高価なものだった。フルール様の実家であるフォスキーア公爵家が輸入をしているので味見を兼ねて試作品が届くそうだ。
今年度のタウンハウスは穏やかな雰囲気の人たちばかりなので無難に過ごすことができそうだ。
フルール様も口数は少ないながらも先輩の方々と普通に会話をしていたので良かったと思う。お土産に持たされた一口チョコも嬉しかった。
「ねぇ、お兄様、私、チョコレートボンボンが好きだったの」
「奇遇だね。俺もとても好きだった。リーナ、お酒が出てくるのはまだまだ先かな~」
「チョコレートもお酒もまだ出てこないわね。でも、『液体』の加護で出てくるのは私の経験に基づいているみたいだから、お酒はどうなるかわからないわ。一応ワインは飲んでいたけど違いとか分からないし、ブランデーとかはお菓子に使う事はあったけど。あっ、良いシャンパンはホテルで飲んだことがあるわ」
「いいなぁ~。俺なんてお酒を飲まないままだから、どんなものか分からない。お屠蘇とビールは少し舐めたことがあるけど。あっ、ピンク頭にお酒を飲ませたら色々と白状するかな」
「お兄様ったら。まだ13歳の子にお酒なんて飲ませられないわ」
「この世界の成人は15歳だよ」
「そうなのよね~。あまり若い頃からお酒を飲むと良くないけど、梅酒とお酒いりのチョコは子供のときから食べていたし、いいのかしら」
「そうそう。早く洋酒の入ったチョコレートボンボンが食べたいな。でも、ピンク頭に食べさせるのはもったいない」
なんて話をしながら、私たちはどら焼きを食べていた。お汁粉がちょっと進化してドロッとした潰れたぜんざい風になってきたので煮詰めて餡子を作ったのだ。ホットケーキミックスがあるので色んなものができて楽しい。
さて、問題のピンクさん事、フレグランス・タチワルーイ嬢がやって来た土曜日。
お茶会というよりかピンクの彼女の独演会だった。彼女は人の話を聞かない人で、一人でしゃべって一人で答えて、とても煩かった。
「ここがタウンハウスね。すごいステキ。あたしもここに住みたいなぁ~。ねぇ、リーナ、あたしも何とかここにすめるようにできない? ほら、将来の公爵夫人だし。あたしね。12月生まれだから12の時に加護の儀を受けてホントは14歳の時に編入するはずだったんだ。ゲームだとね」
「ゲームですか?」
「ゲームだと14歳の時から色々出会いイベントがあって、15になる前にあたしが聖女になって、それで魔王を封印しにいくんだけど、そんなのイヤだし。魔王は封印が解けなければ出てこないから封印を解いちゃうイベントはパスするから、魔王復活はないから闘わなくていいし」
「魔王?」
「バカみたいじゃない。自分で間違って魔王を復活させて、それから仲間を集めて戦って魔王を封印するなんて。じゃぁ、だいたい、封印に近づかないといいのよ。でも、聖女にはなりたいからイベントはこなしていくつもりだけど。まだゲームが始まってないせいか、殿下とかすごく冷たいんだよね。やんなっちゃう。でも元々、王妃なんて大変そうだからラクアートも凄い好みだし、まだちょっと子供っぽいけど段々カッコ良くなるはずだからラクアートでいいかなって。公爵夫人もお仕事はリーナにお願いすればいいし。私がラクアートを選んだらリーナは追い出されるか側妃か選べるから側妃にしてあげるね。悪役令嬢は恋のスパイスに必要だけど、14、過ぎないと邪魔してこないからまぁ、良いかなって思っているんだ」
「悪役令嬢?」
「あ、そうそう、ラクアートが学生会を誘うから適当に招待状を出してよ。殿下は来ないだろうけど、ガーヤとかリンドンはあたしが誘うと来ると思うよ。ラクアートの補佐であたしも学生会に出入りしてるから。リーナも星の王子様だけじゃ寂しいよね。星の王子様って攻略が難しいし、なんかドラゴン仲間にするのにパズルが複雑であたし、無理だったんだ。あたしは学生会の連中だけでいいから、星の王子様はリーナにあげるよ。といっても兄弟だから相手にならないか。それは残念だったね。アハハハ」
「でね。ラクアートたら」
といった感じで好きなだけおしゃべりしてお茶を飲んでお菓子を食べて帰って行った。
あれ? 色々聞きだす予定が何もできなかったけど、勝手に話してくれたおかげで分かった事は……
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このゲームの世界、ちょっと怖いんですけど。
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