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第四章 歪んだ愛の形

唯一の道筋

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「ア、アナスタシア様……?」

「信用できます? 貴殿のサルバディール皇国は……」

 毒物の出所から、暗殺者の所属まで。しかも、リックはサイファーを経験の浅い暗殺者だと言ったのです。

 たとえ本当にそういった報告が上がっていたとしても、私には嘘だと聞こえる。

 少なくとも疑念が増したとリックは考えることでしょう。

「サルバディール皇国は無関係です! 信じてください! サイファーの報告書も取り寄せますのでどうかお願いします!」

「信じられませんわ。ここは一つ契約を結んでくださいな。信用を示す覚悟があるのなら」

 呆然と頭を振るリックに私は続けます。

 好奇心で話を聞こうとしたことを後悔させてあげるわ。

「この契約書に署名と血判を――――」

 オリジナルの契約書をアイテムボックスから取り出す。

 これにサインしたが最後。貴方は天に還るまで私の味方となる。

「署名しないと?」

「聞くまでもないでしょう? まあでも、悪いようにはしません。私は根拠が欲しいだけ。怪しすぎるサルバディール皇国を信用するための……」

 戦争に発展しかねない事案です。契約を渋るとは考えられません。

 リックは私の言いなりとなる道しか選べないことでしょう。

「まあ、当然ですな……」

 言ってリックはサインをし、ナイフで小指の先を切った。

 何も語ることなく、言い付け通りに契約書へと血判を押す。

「よろしい。その契約術式は私のオリジナルですの。私に逆らう行動は如何なるものであろうと心臓が破裂します。また自害はできません。他者に自身の殺害を依頼することすらできない強力な呪いにも似た契約です。まあ、如何なる場合も貴方様の心臓が破裂したのなら、私は堂々とセントローゼス王の御前に赴くでしょう」

 恐らく裏切ることはないでしょう。私がサルバディール皇国に過剰な圧力をかけない限りは……。

 忠臣である彼は如何なる時もサルバディール皇国のために動くはずよ。

「恐ろしい人だ。貴方は……」

「それは褒め言葉でしてよ? 私は悪魔に魂を売ってでも守りたいものがあるのです。踏み込んだ悪の道を突き進むしかないのですから」

 もう逃がさないわ。残念だけど、青き薔薇には棘がある。

 貴方は茨に囚われた悲しきマリオネット。青き薔薇に操られるだけの人形に成り果てたのよ。

「私はどうすればいいのでしょう……?」

 怖々と聞くリックに私は笑みを浮かべています。

 貴方だけじゃなく、私は全てを巻き込むつもりよ。このくだらないゲームがエンディングに辿り着くまで……。

 だから私はリックに告げるだけ。私の心が傷つかぬ唯一の道筋を。

「私を皇国に亡命させなさい――」
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