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肥後ん女、おヒロやん(八十五話)
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深川のオラん長屋に、九州は肥後ん国から来とるアネサがおる。
名を、おヒロと言う。嫁ぎ先を、訳あって出て、今は一人暮らしや。齢んころは、三十路半ば、オラとは一回り位違うのう。肥後は火の国、阿蘇がもこもこと燃えとるんやろ、どげなとこかいや。男はもっこす、骨太の九州男児かいや、威勢がええんやろて。じゃ、女はどうじゃ、荒くれ男を立てるんがうまいんかいのう。
前々から、何か縁があればと思っとったら、とうとう御縁が出来もうした。色の白かお人で、市松人形見てえや。そんで器量良しで、品のある方や。
オラ口説き方知らねえすけ、成り行きに任せるしかねえのう。まずは、取っ掛かりや……
オラ 「こんちは、秋んなって来ると、肌寒くなりますのう。オラは長屋の奥にいっけど、よく見かけますて、アネサは肥後だの?」
おヒロ「あーた、まあ、良う知っとっと、ウチは肥後ばい」
オラ 「そりゃ、長屋ん出入り口で、気になってもうした。名は、おヒロさんやろ、オラ女に目がねえんだ。子供もおらんのう、ええ人おるんかい?」
おヒロ「あらまあ、こっちゃんこと、ようまあ。あーた、名は? 稼ぎはなんばしよっと?」
オラ 「名はてる吉、町飛脚とかやってやす。アネサ、男は?」
おヒロ「男んことは、あれや、出会いやけんどな。そいがの、よか男に会わんけんね、夜が寂しか。どぎゃんしたら、ええんかえ。若い男でんええけん」
オラ 「そんやで、若い男がええ。可愛がって、あっちん面倒見てやったら」
おヒロ「あっちん面倒って、男と女の睦ごとかえ?」
オラ 「そいは、よう言わん。わかってくらんしょ」
おヒロ「だいだいわかるけん、ばってん、ウチでよかと?」
オラ 「アネサは、肥後ん言葉で言えば、よかおなごばい、よかとよ」
おヒロ「あーた、肥後ん言葉知っとるの、じゃ、だこ汁知ってけ?」
オラ 「すまし汁んこつや。具だくさんなんやろ」
おヒロ「そんじゃ、こっぱ餅や、いきなりだご、辛子蓮根は?」
オラ 「こっぱ餅は、さつまいもと餅米を練り上げたんや。いきなりだごは、さつまいもと餡を包んで蒸す。辛子蓮根は、蓮根に辛子味噌を詰め込み揚げたんや」
おヒロ「みんな知っとるのう。知り合いがおるんやろうて。あーた、いくらなんでも、肥後ずいきは知らんやろ?」
オラ 「食いもんやろ、食ったことねえけんど、オラ食いてえ」
おヒロ「はははっ、いんねいんね、あっ、違うでよ。まあ、ええわ、知らん方がええばい。そいは食えんこともねえけんど、食うもんでもねえけん」
オラ 「いや、どうしても知りてえ、教えてくらんしょ」
おヒロ「じゃ、ウチん家に来るかえ? ここじゃ、よう言えんたい」
オラ 「お邪魔しますわい……」
肥後ずいきが元で、アネサん家に上がらせてもらう事になりもうした。女一人暮らしの所や、オラに気許してくれたんかいのう。こいから、どげな流れになんのかい、如意棒がのう……
おヒロ「よか、上がっとくれ、一人暮らしやけん、気楽にのう」
オラ 「さっきの、肥後ずいきとは、何でやす?」
おヒロ「男と女の睦ごとに使うんや、ぬるぬるしとるんやで。夜に使うばい、男も女もやる気が出るたい」
オラ 「それ、欲しか、試してみてえ、オラにくりょ」
おヒロ「実はの、江戸に出て来たとき、肥後から持って来よっと。ちょっと、待っててな、持ってくるけん……」
ほかほか、肥後ん国には、そげなええ薬あるかえ。ぬり薬やな、如意棒と、お壺にぬるんやな、よし、ぬったる。ええもん国から持って来たの、ええアネサや。
おヒロ「あーた、こいが肥後ずいきやで、こぎゃん輪っかになっとるやろ、わかるな?」
オラ 「ははっー、男用でんな、合点しやした。もらって帰りやす」
おヒロ「うんにゃ、待っとくれな、女用もあるたい、ウチにぬってんか。むらむらさせといて、帰らんといてな、あーたもはめなはれ」
オラ 「えんですかいの? 据え膳食わぬは男の恥言いますけんど」
おヒロ「ウチんボボめがけて、突進して来んかい、よかばい」
オラ 「ん? ボボって、何だずら?」
おヒロ「そいはのう、女の一番大事な所ばい、かつ男の一番好きな所やけん」
オラ 「あいわかり申した。お国の、肥後ずいき使わせてもらいやす。もったいねえすけ、ちょこっとでええのう」
おヒロ「まだ、たんとあるばい。だけん、たっぷりこん使ってたい」
オラ 「はいよ、ありがとうございやす」
妙薬口に苦しではなく、オラん如意棒は大悦び。おヒロさんは、よがり泣き、のち潮吹きとな。
こいは、ええもん貰いやした、御縁が出来て、まっこつ良かったですて。
また、おヒロさんにたっぷりこんと、ぬってのう……
名を、おヒロと言う。嫁ぎ先を、訳あって出て、今は一人暮らしや。齢んころは、三十路半ば、オラとは一回り位違うのう。肥後は火の国、阿蘇がもこもこと燃えとるんやろ、どげなとこかいや。男はもっこす、骨太の九州男児かいや、威勢がええんやろて。じゃ、女はどうじゃ、荒くれ男を立てるんがうまいんかいのう。
前々から、何か縁があればと思っとったら、とうとう御縁が出来もうした。色の白かお人で、市松人形見てえや。そんで器量良しで、品のある方や。
オラ口説き方知らねえすけ、成り行きに任せるしかねえのう。まずは、取っ掛かりや……
オラ 「こんちは、秋んなって来ると、肌寒くなりますのう。オラは長屋の奥にいっけど、よく見かけますて、アネサは肥後だの?」
おヒロ「あーた、まあ、良う知っとっと、ウチは肥後ばい」
オラ 「そりゃ、長屋ん出入り口で、気になってもうした。名は、おヒロさんやろ、オラ女に目がねえんだ。子供もおらんのう、ええ人おるんかい?」
おヒロ「あらまあ、こっちゃんこと、ようまあ。あーた、名は? 稼ぎはなんばしよっと?」
オラ 「名はてる吉、町飛脚とかやってやす。アネサ、男は?」
おヒロ「男んことは、あれや、出会いやけんどな。そいがの、よか男に会わんけんね、夜が寂しか。どぎゃんしたら、ええんかえ。若い男でんええけん」
オラ 「そんやで、若い男がええ。可愛がって、あっちん面倒見てやったら」
おヒロ「あっちん面倒って、男と女の睦ごとかえ?」
オラ 「そいは、よう言わん。わかってくらんしょ」
おヒロ「だいだいわかるけん、ばってん、ウチでよかと?」
オラ 「アネサは、肥後ん言葉で言えば、よかおなごばい、よかとよ」
おヒロ「あーた、肥後ん言葉知っとるの、じゃ、だこ汁知ってけ?」
オラ 「すまし汁んこつや。具だくさんなんやろ」
おヒロ「そんじゃ、こっぱ餅や、いきなりだご、辛子蓮根は?」
オラ 「こっぱ餅は、さつまいもと餅米を練り上げたんや。いきなりだごは、さつまいもと餡を包んで蒸す。辛子蓮根は、蓮根に辛子味噌を詰め込み揚げたんや」
おヒロ「みんな知っとるのう。知り合いがおるんやろうて。あーた、いくらなんでも、肥後ずいきは知らんやろ?」
オラ 「食いもんやろ、食ったことねえけんど、オラ食いてえ」
おヒロ「はははっ、いんねいんね、あっ、違うでよ。まあ、ええわ、知らん方がええばい。そいは食えんこともねえけんど、食うもんでもねえけん」
オラ 「いや、どうしても知りてえ、教えてくらんしょ」
おヒロ「じゃ、ウチん家に来るかえ? ここじゃ、よう言えんたい」
オラ 「お邪魔しますわい……」
肥後ずいきが元で、アネサん家に上がらせてもらう事になりもうした。女一人暮らしの所や、オラに気許してくれたんかいのう。こいから、どげな流れになんのかい、如意棒がのう……
おヒロ「よか、上がっとくれ、一人暮らしやけん、気楽にのう」
オラ 「さっきの、肥後ずいきとは、何でやす?」
おヒロ「男と女の睦ごとに使うんや、ぬるぬるしとるんやで。夜に使うばい、男も女もやる気が出るたい」
オラ 「それ、欲しか、試してみてえ、オラにくりょ」
おヒロ「実はの、江戸に出て来たとき、肥後から持って来よっと。ちょっと、待っててな、持ってくるけん……」
ほかほか、肥後ん国には、そげなええ薬あるかえ。ぬり薬やな、如意棒と、お壺にぬるんやな、よし、ぬったる。ええもん国から持って来たの、ええアネサや。
おヒロ「あーた、こいが肥後ずいきやで、こぎゃん輪っかになっとるやろ、わかるな?」
オラ 「ははっー、男用でんな、合点しやした。もらって帰りやす」
おヒロ「うんにゃ、待っとくれな、女用もあるたい、ウチにぬってんか。むらむらさせといて、帰らんといてな、あーたもはめなはれ」
オラ 「えんですかいの? 据え膳食わぬは男の恥言いますけんど」
おヒロ「ウチんボボめがけて、突進して来んかい、よかばい」
オラ 「ん? ボボって、何だずら?」
おヒロ「そいはのう、女の一番大事な所ばい、かつ男の一番好きな所やけん」
オラ 「あいわかり申した。お国の、肥後ずいき使わせてもらいやす。もったいねえすけ、ちょこっとでええのう」
おヒロ「まだ、たんとあるばい。だけん、たっぷりこん使ってたい」
オラ 「はいよ、ありがとうございやす」
妙薬口に苦しではなく、オラん如意棒は大悦び。おヒロさんは、よがり泣き、のち潮吹きとな。
こいは、ええもん貰いやした、御縁が出来て、まっこつ良かったですて。
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