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土佐兄からの褒美、琉球娘(五十一話)

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 きのうは、土佐兄があてがって来た女を、ガン突きで極楽送りしたわいな。
 こいで女衒修行ん始まりやな。いろいろと教わらんとの。あらためて土佐兄んとこ  に、お伺いや。

 オラ 「土佐兄、きのうのコマは、無事に極楽へ行ってもうたです。ほな約束通り  に、オラを弟子にしてくだせい」
 土佐兄「ああ、わかっちゅう。おまんの腰技は、ええらしいのう。コマから聞い  ちょるが、越後の牛突き喰らわしたって。怒涛のようやったて」
 オラ 「はい、こいで弟子んなれると思うと、よけい力入りましたて。あん女に、襖 まで届く、お潮吹かせてやりましたがな」
 土佐兄「うん、そいも聞いたわ。てる吉や、今度は天井まで届く潮吹かせたれや。オレがこいから、日の本中の、さまざまん女抱かせるきな、女もっと知るんやで。銭払って女喰うんじゃのうて、ただで喰うんや。これは味が違うきな。そんうち今度は、女が貢いでくるぜよ。またまた、味が違う。一人の女の味も、三度変わる。女ってえ生き物は、こうも変わるきな。今夜は女衒に買われ転がされ、江戸へと流れついた琉球娘を抱かせたるき。こん女はな、琉球は首里の置屋ん生まれや、遊女の生んだ子や。遊女の子は遊女や。そこで男相手を初め、薩摩の女衒に買われ鹿児島や。さんざん九州男に喰らい続け、今度は大阪に売られたんや。大阪は堺で、エロ商人達に可愛がられ、すけべ人形みてえになった女ぜよ。でまた、江戸だと物珍しくて売れるというんで、とうとうここや。もう、心はのうなってるきな。抱かれるだけの女やで。女衒の怖さ、あん女見ればわかる。学ばせてやるき。てる吉、こん女は置屋にはおらん。闇ん中にいる。そいを、おまんに抱かせたるき、ありがたく思えな。また、きのうの町屋で待っとれ。ええか、毎日、刀磨くんやで」
 オラ 「はあ、こいからは毎日んようではなく、必ず毎日、極楽に浸かりやす」
 土佐兄「手前だけ極楽味わうんでのうて、毎日、女を極楽送りにするんや。こいは、女衒稼業の修行やきな。もっともっと女を知るんや、ええな」
 オラ 「はぁ、わかりましたが……」

 晩飯はたらふくやった。毎日、女を極楽送るんが、こと初めや。琉球ん女かいな、こいはなかなか抱けんぞい。商売名利に尽きるとはいえ、何やら闇ん女かいな。心がのうなっとる言うたな。恐る恐るいかんとのう。
 こいから酒、とは、いかんな。おおっ、来たわい、さて……

 琉球娘「はいたい、めんそーれ、あんた、うちなーんちゅやな。ようこそ、はるば る琉球へ来ましたの。気持ちようしましょうねー。こげな、アザだらけの体なんさー。あんたも、好きにしてな」
 オラ 「おいおい、ここは江戸じゃて、大丈夫かえ?」
 琉球娘「ああ、そいやったわ、ワンは買われたんでごわした。ここは薩摩やったわ。おはんも薩摩剣法のように、一刀だにしてたもんせ。ちぇすとーちぇすとーで、ワンを斬ってくんやんせ、ええさー」
 オラ 「いやいや、薩摩でのうて、江戸やで」
 琉球娘「あかん、ああ間違えてもうたわ。ここは難波や、商人さんの布団の中や。たんと可愛がってな、ワンは極楽の夢見たいんさー」
 オラ 「ああ、そやで、ここは堺でんな。オラ、馴染みん堀町んぼんくやら。また来たでな。アネゴ、えろう極楽へ頼むわな。そんアザ治ってねえな。まだ腫れとるんやんけ、銭出したる、薬付けたれや」
 琉球娘「なんくるないさー、ワンの稼ぎが悪いんや、だからさー。男はんの好きにさせとるけんど、ワンから動かんからやで。そんでの、客には叩かれる、お上さんにはピンタ、女衒には蹴られるんや」
 オラ 「そいは叶わんのう。せめてオラん布団の中ではの、安心しなはれ。そんまんま、じっとしててええで、オラがいつもんように果てるさかいな」
 琉球娘「あんた、何言うてまんねん。いっつも、アテを滅茶苦茶にするやんか。ええんやで、何度もな。さあ、一緒にいこうな、怒るでー」
 オラ 「わかってまー、ほな、いっつもんように、同時に極楽や。難波昇天道や。喰らったれ……」
 琉球娘「……あんた、ちゅらさん……かなさん……」



 あん女は壊れていましたがね、女衒が悪いんやの。
 オラは、女衒になんのが目的でのうて、ええ置屋を作るんが夢や。
 そいには、女だけでのうて、女衒も知らねばなんね。女衒は本当に、よう女を知っとるんや、そんためやで。
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