江戸情話 てる吉の女観音道

藤原 てるてる

文字の大きさ
上 下
52 / 101

土佐兄から、おかちめんこをあてがわれる(五十二話)

しおりを挟む
 土佐兄ん所で、女衒修行してんだども、連日、女をあてがって来るのう。こう言われちょる「毎日、女を抱け。極楽送りしたれ」っと。オラは前から、いつもは長屋んキクの壺に浸かり、漬物みてえだて。ああ、こいからも、さまざまん女をあてがって来るんやろ、こなさねばなんね。今度は、どげな女だろか、こいも修行やて。

 オラ 「ごめんやすって、今夜はどげな修行ですけの?」
 土佐兄「おお、そん前に昨日の琉球娘はどないやったや? オレら女衒に壊された女やきな。正気でねえな」
 オラ 「可哀想な女でしたの、オラはせめてもん慰めで話合わせましたて」
 土佐兄「うん、慈悲も大事やきな。泥棒にも何とやらや。女衒の怖さの一部、見たんなら、そんでええき。三日目の今夜はの、おかちめんこを抱かせたるきな。ええ面、ええ体した女だけ相手しとるんやない。女衒たる者、どげな女でも喰うんや。そんで必ず極楽送りすんやで」
 オラ 「オラは、なんでんござれで、選り好みしませんですて」
 土佐兄「ええか、女を先に昇天させんやで、そいが大元やき」
 オラ 「そいは、よう我慢しますで、ヘソん力入れましてのう」
 土佐兄「そうやそうや、男は我慢が大事じゃき。女に餓えとるようじゃだめやきな、いっつも玉袋、空っぽにしたれ。えかや、そん女はな、男に触られんのを嫌ごうておる。よって、女ん極楽を、未だによう知らんきな。おまんの、あれ、越後の牛突きとやらで、昇天させたれや、ええな」
 オラ 「連日ん渡る、極楽修行、痛み入りやんす。あん、町屋で待ってやす……」

 三日連続違う女やな。
 キクとの連夜に加えこいかや、刀ん錆びる暇がねえとは、真にこいやな。よしゃ、今夜はどげん女や。おかちめんこ? 相手に不足なしやで。女はあん悦び知ると、男んのが、お助け棒にかわるんやな。オラんので、極楽へ橋渡し、してやっから。任せんか……

 ツネ「ワラはツネだわ。あん土佐親分から、若い男にあっためてもらえ言うてな。そんで、こん町屋に向かわされたんや。えろう若いの、大丈夫け?」
 オラ「あんな、若いちゅうこつは、底なしちゅうこつやで。必ずや、ええ思いさせたるけん、任せてくらんしょ」
 ツネ「ワラはの、こげな面だし、あん欲も、あんまことねえてな。そいに、男に触られるんが好きでのうし、気持ち良くもねえ」
 オラ「おいおい、せっかく女に生まれて来たっちゅうんに、もったいねえのう。こん世に、女ほど、ええもんはねえで。宝ん持ち腐れやでな。じゃあ、こうすっか、オラは触らんすけ、オラんのを血祭りんしたらええ。女は男に血祭りんされ、極楽をさ迷うけんど、そん逆だてのう。あんたも、こんだは無我夢中んなって、男ん虜んなるわな」
 ツネ「そんでいこう、ワラのこつ触らんでけろ、あんた横んなってな。……どうすんのや? やっぱわからんわ。ワラはこんまま、極楽知らずかいな」
 オラ「じゃ、ほな、目閉じてな、オラん足ん先からふんどしまで、手伸ばせ。お地蔵さんみてえんのに当たったら、祈るんや。極楽連れてってけろ、連れてってけろとな、そんしたらわかる。お地蔵さんは大悦びで、法力を持って願いを叶えてくれる。男は女んやわらかさを求め、女は男ん固さをの、そやで、自然とわかるで」
 ツネ「あんた、ワラを別嬪にしてけろ。ええ女んしてけろ。たのむて……」
 オラ「まあ、その、一晩じゃ無理だて。おいおいの……」



 そんツネさんを、極楽送りには出来もうせんでしたわ。
 まだまだ、修行が足りませんですわな。女は男よりも、本当は遥かに欲が深いもんやで。
 極楽知れば、ええ面にもなりますて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

猿の内政官 ~天下統一のお助けのお助け~

橋本洋一
歴史・時代
この世が乱れ、国同士が戦う、戦国乱世。 記憶を失くした優しいだけの少年、雲之介(くものすけ)と元今川家の陪々臣(ばいばいしん)で浪人の木下藤吉郎が出会い、二人は尾張の大うつけ、織田信長の元へと足を運ぶ。織田家に仕官した雲之介はやがて内政の才を発揮し、二人の主君にとって無くてはならぬ存在へとなる。 これは、優しさを武器に二人の主君を天下人へと導いた少年の物語 ※架空戦記です。史実で死ぬはずの人物が生存したり、歴史が早く進む可能性があります

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅
歴史・時代
日本の歴史上最も有名な『本能寺の変』の当日から物語は足早に流れて行く展開です。 この作品は「もし」という概念で物語が進行していきます。 主人公【織田信長】が死んで、若返って蘇り再び活躍するという作品です。 ※この物語はフィクションです。

中国夜話 毛沢東異界漫遊記

藤原 てるてる
歴史・時代
……それは鄧小平の黒猫話から始まった。 「黒い猫でも白い猫でも、鼠を捕まえるのが良い猫だ」 「先に豊かになれる者から、豊かになればいい」 ……改革開放に舵を切った。市場経済こそが繁栄すると。 読みはあたった。先進資本主義を手本にし、今やまた世界の大国になった。 毛沢東は言った「あの小さいのが、国を率いるのです」 その読みもあたった。地方への下放と言う左遷、失脚を乗り越えて躍り出た。 今の中国は鄧小平が作った、その鄧小平は毛沢東が目を付け育てた。 つまり、良くも悪くも毛沢東が共産中国の母体である。 功罪あわせ持った毛沢東は、問題があった。反省を知らないかに見える。 私はせめて天界では反省してもらいたいと、今、小説を書いています。 「中国夜話 毛沢東異界漫遊記」では天界で様々な人に会う物語りです。 そこで心に変化が生まれ、人の自由とは何かに思い至るのです。 かの孫文は自由、そして民主とはを知っていた。だが、思いなかばで倒れた。 ある意味、孫文は台湾、香港、マカオを作ったと言えるのかも。 もはや香港、マカオには、自由と言う普遍の価値の行方はわからない。 私には、中国問題とは毛沢東問題だと思う。 この数百年に一人と言われる人物に、自由と民主について問いたい。 小説の中では、徐々に徐々にと目覚める筈ですが、どうなるやら。 中国悠久の歴史の、ある一過性かも、さて……

処理中です...