77 / 79
回復
安心
しおりを挟む
「その言葉を口にしている限り……君が悪い人間になることはない」
「……どうして、そんなにきっぱりと言い切れるの?」
悪い人間になりたくない。そんな思いはきっと誰もが持っていることである。この世界に、悪い人間になりたくてなった人間がどれほどいるのだろうか。
きっと、そんなに多くはないはずだ。
(……私だって、悪い女になりたくなんてない。だけど……)
だけども、この世界では「悪い女であるロメリア」が必要なのだ。
必要とされているのなら、いつか自分の意志とは関係なしにそうなってしまう可能性だって排除出来ない。
「……望んでいないのに、そうなってしまうことだってあるじゃない」
ロメリアは俯きながらも、己の手にそえられたガブリエルの手を強く握った。
彼にしてみれば、ロメリアの言うことは訳が分からないはずだ。
彼は今まで清廉潔白を貫いて、ただの一度も己を曲げたことのない人だ。そんな人間に「望まないのに、そうなってしまうかもしれない」と不安を抱える人間はどんな風に映るのか。
いらぬ心配をするものだと、呆れるのだろうか。
それとももっと屈強な意思を持てと言われるのか。
しかし、ガブリエルは予想外のことをロメリアに問いかける。
「君は悪い人間になりたいと思わないのだろう?」
「うん」
「それは、これからもそうか?」
これから先も悪い人間になりたいと思う日なんて絶対にこない。それは、確かなことだ。なぜそんなことを聞くのか。ガブリエルの考えは読めなかったが、ロメリアは確たる意思を持って頷く。
「うん」
はっきりと頷くと、ガブリエルの大きな手が、ロメリアの艶を失った髪の毛をゆっくりと撫でた。
「私は君が今日言った言葉をずっと覚えておく」
「……?」
なぜ? と首を傾げながら問う視線に、ガブリエルはふと笑みのようなものを浮かべて、口を開く。
「もし、君が悪い行いをしたとしても。君が今言ったことを覚えている限り、私は無条件に君を信じることが出来るからだ」
「……」
絶句してなにも言えないロメリアに、ガブリエルはなおも安心させるように優しく言葉を重ねる。
「言葉だけでは安心出来ないのなら、誓約書を書こう」
「……そ、そんなこと、しなくていいわ」
「だが、まだ君は安心できていないのではないか」
「……」
そんなことはない。もう十分だ。
ガブリエルの口から「無条件に君を信じることが出来る」と、そんな言葉を与えられただけで十分。その言葉以上に、安心させてくれるものなんてない。
「……ありがとう」
小さな声に、大きな感謝を込めて伝えると、ガブリエルは手を伸ばし、ロメリアの青白い頬を慈しむように撫でる。
「……どうして、そんなにきっぱりと言い切れるの?」
悪い人間になりたくない。そんな思いはきっと誰もが持っていることである。この世界に、悪い人間になりたくてなった人間がどれほどいるのだろうか。
きっと、そんなに多くはないはずだ。
(……私だって、悪い女になりたくなんてない。だけど……)
だけども、この世界では「悪い女であるロメリア」が必要なのだ。
必要とされているのなら、いつか自分の意志とは関係なしにそうなってしまう可能性だって排除出来ない。
「……望んでいないのに、そうなってしまうことだってあるじゃない」
ロメリアは俯きながらも、己の手にそえられたガブリエルの手を強く握った。
彼にしてみれば、ロメリアの言うことは訳が分からないはずだ。
彼は今まで清廉潔白を貫いて、ただの一度も己を曲げたことのない人だ。そんな人間に「望まないのに、そうなってしまうかもしれない」と不安を抱える人間はどんな風に映るのか。
いらぬ心配をするものだと、呆れるのだろうか。
それとももっと屈強な意思を持てと言われるのか。
しかし、ガブリエルは予想外のことをロメリアに問いかける。
「君は悪い人間になりたいと思わないのだろう?」
「うん」
「それは、これからもそうか?」
これから先も悪い人間になりたいと思う日なんて絶対にこない。それは、確かなことだ。なぜそんなことを聞くのか。ガブリエルの考えは読めなかったが、ロメリアは確たる意思を持って頷く。
「うん」
はっきりと頷くと、ガブリエルの大きな手が、ロメリアの艶を失った髪の毛をゆっくりと撫でた。
「私は君が今日言った言葉をずっと覚えておく」
「……?」
なぜ? と首を傾げながら問う視線に、ガブリエルはふと笑みのようなものを浮かべて、口を開く。
「もし、君が悪い行いをしたとしても。君が今言ったことを覚えている限り、私は無条件に君を信じることが出来るからだ」
「……」
絶句してなにも言えないロメリアに、ガブリエルはなおも安心させるように優しく言葉を重ねる。
「言葉だけでは安心出来ないのなら、誓約書を書こう」
「……そ、そんなこと、しなくていいわ」
「だが、まだ君は安心できていないのではないか」
「……」
そんなことはない。もう十分だ。
ガブリエルの口から「無条件に君を信じることが出来る」と、そんな言葉を与えられただけで十分。その言葉以上に、安心させてくれるものなんてない。
「……ありがとう」
小さな声に、大きな感謝を込めて伝えると、ガブリエルは手を伸ばし、ロメリアの青白い頬を慈しむように撫でる。
337
あなたにおすすめの小説
もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません~死に戻った嫌われ令嬢は幸せになりたい~
桜百合
恋愛
旧題:もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません〜死に戻りの人生は別の誰かと〜
★第18回恋愛小説大賞で大賞を受賞しました。応援・投票してくださり、本当にありがとうございました!
10/24にレジーナブックス様より書籍が発売されました。
現在コミカライズも進行中です。
「もしも人生をやり直せるのなら……もう二度と、あなたの妻にはなりたくありません」
コルドー公爵夫妻であるフローラとエドガーは、大恋愛の末に結ばれた相思相愛の二人であった。
しかしナターシャという子爵令嬢が現れた途端にエドガーは彼女を愛人として迎え、フローラの方には見向きもしなくなってしまう。
愛を失った人生を悲観したフローラは、ナターシャに毒を飲ませようとするが、逆に自分が毒を盛られて命を落とすことに。
だが死んだはずのフローラが目を覚ますとそこは実家の侯爵家。
どうやらエドガーと知り合う前に死に戻ったらしい。
もう二度とあのような辛い思いはしたくないフローラは、一度目の人生の失敗を生かしてエドガーとの結婚を避けようとする。
※完結したので感想欄を開けてます(お返事はゆっくりになるかもです…!)
独自の世界観ですので、設定など大目に見ていただけると助かります。
※誤字脱字報告もありがとうございます!
こちらでまとめてのお礼とさせていただきます。
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
この度改編した(ストーリーは変わらず)をなろうさんに投稿しました。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
好きでした、さようなら
豆狸
恋愛
「……すまない」
初夜の床で、彼は言いました。
「君ではない。私が欲しかった辺境伯令嬢のアンリエット殿は君ではなかったんだ」
悲しげに俯く姿を見て、私の心は二度目の死を迎えたのです。
なろう様でも公開中です。
私のことを愛していなかった貴方へ
矢野りと
恋愛
婚約者の心には愛する女性がいた。
でも貴族の婚姻とは家と家を繋ぐのが目的だからそれも仕方がないことだと承知して婚姻を結んだ。私だって彼を愛して婚姻を結んだ訳ではないのだから。
でも穏やかな結婚生活が私と彼の間に愛を芽生えさせ、いつしか永遠の愛を誓うようになる。
だがそんな幸せな生活は突然終わりを告げてしまう。
夫のかつての想い人が現れてから私は彼の本心を知ってしまい…。
*設定はゆるいです。
陛下を捨てた理由
甘糖むい
恋愛
美しく才能あふれる侯爵令嬢ジェニエルは、幼い頃から王子セオドールの婚約者として約束され、完璧な王妃教育を受けてきた。20歳で結婚した二人だったが、3年経っても子供に恵まれず、彼女には「問題がある」という噂が広がりはじめる始末。
そんな中、セオドールが「オリヴィア」という女性を王宮に連れてきたことで、夫婦の関係は一変し始める。
※改定、追加や修正を予告なくする場合がございます。ご了承ください。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる